「月と雷」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|角田光代

「月と雷」

【ネタバレ有り】月と雷 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:角田光代 2012年7月に中央公論新社から出版

月と雷の主要登場人物

東原智(ひがしばらさとる)
主人公。フリーター。

辻井泰子(つじいやすこ)
ヒロイン。スーパーマーケットのパート店員。

東原直子(ひがしばらなおこ)
智の母。

山信太郎(やましなたろう)
泰子の婚約者。食品加工会社の社員。

田中一代(たなかかずよ)
泰子の母。旧姓辻井一代。

月と雷 の簡単なあらすじ

東原智は不特定多数の女性とお付きあいを繰り返しながら、自由気ままに生きています。智の母親・直子も数多くの男性たちの間を渡り歩いて、普通の生活を送ることも安定した家庭を築き上げることもありません。そんな親子に幼い頃振り回された辻井泰子は、戸惑いながらも久しぶりに再会したふたりを受け入れていくのでした。

月と雷 の起承転結

【起】月と雷 のあらすじ①

根なし草のような母と息子

幼い頃から異性にはもてた東原智でしたが、いずれの相手とも長続きせずに結婚には至りません。ふとした気まぐれから智が思い出したのは、小学生に上がったばかりの頃に一緒に暮らしていた辻井泰子の存在です。

母親の直子が当時交際していた辻井の娘で、智とは同い年になります。60歳を過ぎた今でも行きずりの男性と同棲をしている直子に電話をかけて、泰子の実家があるひたちなか市の住所を教えてもらいました。智が現在住んでいる東京のアパートからは、特急列車に乗って1時間程度の距離です。勤め先のスーパーアキダイから帰る途中で久しぶりの再会を果たした泰子は、婚約者という山信太郎がいながらも智を家に招き入れて一線を越えてしましました。母親の一代が幼い泰子を置いて家を出ていってしまったのは、ある日突然に智を連れた直子が辻井家に乗り込んできたことが原因です。父親が脳溢血で亡くなって以来この家で独り暮らしをしてきた泰子は、智に一代の捜索を依頼します。

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【承】月と雷 のあらすじ②

母との対面と変わり果てた直子の姿

茨城の直子の家から一旦都内に戻った智が思い付いたのは、人探しを請け負うテレビ番組に応募することです。

テレビ局の審査をパスして打ち合わせを行った後、かつての辻井一代で現在は田中一代となった泰子の母は発見されます。

現在はフードコーディネーターとして有名な一代は、再婚した後に娘を授かり中目黒の豪邸で優雅に暮らしています。

収録後に泰子は一代とメールアドレスを交換しますが、お互いに連絡を取り合うこともありません。

実の母との対面を果たしながらも何ひとつ変わることのない毎日を送っていた泰子は、智から直子が失踪したという電話を受けました。

5歳年上の宗田という男の家に厄介になっていた直子は、ある日突然にふらりと家を出た後に埼玉県の国道沿いに石像を並べて売っている石屋のもとに転がり込んでいます。

自らの人生ばかりではなく父や一代の運命まで変えた直子の現在の姿を一目見るために、泰子は智と待ち合わせて石屋を訪ねました。

そこで目の当たりにしたのは、記憶の中で美しかった直子ではなくごく普通の初老の女性です。

【転】月と雷 のあらすじ③

妊婦と放浪親子の共同生活

石屋と一緒になった直子でしたが、間もなく都内で独り暮らしを送っている智のアパートにやって来ました。

1日中酒を飲みながらテレビを見ているだけの直子は、石屋のところにも宗田の家にも帰ろうとはしません。

更には泰子から智の子供を身籠って婚約破棄に至ったことを打ち明けられた智は、自宅を逃げるように飛び出して茨城へと向かいます。

生まれてくる子供をふたりで育てて、今度こそは真っ当な人生を送るつもりです。

次第に臨月を迎えた泰子の家に直子が押しかけてきて、なし崩し的に3人暮らしが始まってしまいました。

智は買い物から皿洗いまで甲斐甲斐しく働いてくれましたが、相変わらずの直子は家事の一切に手を付けません。

やがては泰子の前からも姿を消した直子は、若い頃に働いていた水戸市のスナックの常連客の家に泊めてもらっているようです。

泰子はお腹の赤ちゃんの父親である智も、いつかは直子のように居なくなってしまう不吉な予感を感じています。

【結】月と雷 のあらすじ④

母となった泰子の決意

生まれてきた子供には智が明日花という名前を付けて入院中の直子に初孫の顔を見せに行きますが、間もなく不摂生が身体に祟って彼女は息を引き取ります。

直子の葬儀は水戸市内にある斎場で行われ、参列したのは泰子たちの他には水戸のスナックのママと常連客だけです。

智が家に帰らなくなった晩には、巨大な月が夜空に浮かんでいました。

縁側で明日花に母乳を飲ませていた泰子は、遠くに走る稲妻を見た瞬間に智が帰ってこないことを実感します。

乳飲み子を抱えた泰子が向かった先はハローワークで、1ヵ月かけてようやく見つけた仕事は託児所のあるスポーツクラブです。

出て行ってから半年後、泰子は携帯電話の履歴に智の名前を見つけました。

東京で友達とお店を始めてまとまったお金を送金するという智の話を、泰子は余り当てにしていません。

寧ろ直子が言い残した「どんなふうにしたって切り抜けられるものなんだよ」という言葉に縋って、母と娘だけの毎日を凌いでいくのでした。

月と雷 を読んだ読書感想

やたらと女性たちに好かれながらも真っ当な暮らしを送ることが出来ない、主人公・東原智の生きざまが印象深かったです。

幼い頃に親同士の恋愛によって振り回されたヒロインの辻井泰子が、大人になってからの智との再会によって平穏無事な暮らしがかき乱されていく様子にも引き込まれていきました。

身の回りの物を古ぼけたボストンバッグに詰め込んで、声をかけてくる男たちの下に転がり込んでしまう東原直子の根無し草のような姿も儚げです。

世間一般の常識からはじき出されてしまったかのような3人が、田舎町の一軒家のつかの間の共同生活が心に残ります。

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