【ネタバレ有り】響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:武田綾乃 2015年4月に(株)宝島社から出版
響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機の主要登場人物
黄前久美子(おうまえ くみこ)
1年生 ユーフォニアム担当 物語の主人公 穏和な性格で色々なことに口を突っ込むが、最後で引いてしまう。
中川夏紀(なかがわ なつき)
2年生 ユーフォニアム担当 高校から楽器を初めた。コンクールメンバーから外れている。口は悪いが優しい。
田中あすか(たなか あすか)
3年生 副部長 ユーフォニアム担当 容姿端麗、成績優秀、演奏技術ピカイチ。何でもできるので「特別な人」と言われている。
黄前麻美子 大前久美子の姉 東京に下宿し大学に通っている。小学校では金管バンド部で活躍していた。久美子が小さいときはあこがれの姉だった。
響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 の簡単なあらすじ
関西吹奏楽コンクールを勝ち抜き全国大会出場を決めた北宇治高校吹奏楽部。練習に熱が入っているとき、副部長の田中あすかの退部の危機が迫ってきました。部員は必死に食い止めようとしますが、そんな簡単ではありません。そんなとき久美子は自分の思いをあすかにぶつけました。どうにかあすかは復帰することができ、全員で全国大会に出場しました。
響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 の起承転結
【起】響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 のあらすじ①
全国大会出場を決めた北宇治高校吹奏楽部は、4月頃に比べものにならないほど音楽への意識が高まり、貪欲に練習に明け暮れていました。
そんな中九月末に開かれる駅ビルコンサートに出場することになりました。
このコンサートはコンクールに出ていないBの子達も参加するのでみんなわくわくしていました。
ある日、台風襲来の予報が出ている夕方、家に東京で大学に行っているはずである黄前久美子の姉の麻美子がびしょ濡れになって帰ってきました。
姉は「大学を辞めたい。」
と言います。
久美子がユーフォニアムを始めたきっかけは、大好きな姉が小学生の金管バンドで楽器を演奏している姿に憧れたからからです。
しかし、姉は中学受験のためバンドを辞め勉強漬けの毎日を過ごしましたが、自分のやりたい事ではない親の希望によって決めた第一志望の大学に合格することはできませんでした。
部活じゃ大学に行けないと言う姉と一緒に居る時間は久美子にとって快適とは言い難いものでした。
台風が通り過ぎまた通常の日が始まりました。
その日久美子が職員室にノートを届けに行ったときです。
職員室で悲鳴じみた叫び声が聞こえました。
それは、吹奏楽部の副部長である田中あすかの母親の怒鳴り声です。
隣にはあすかもいます。
母親は大学受験の勉強のためにあすかを部活から辞めさせるよう顧問の滝と教頭に訴えているのです。
あすかはそれを諫めています。
そしてあすかが部活を辞めたくないと言い終える前に母親は頬を打ちました。
あすかがは興奮している母を諫め、一緒に帰ることにしました。
【承】響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 のあらすじ②
あすか先輩が辞めるかもしれないという噂は瞬く間に部活内に広がり、練習に身が入らないほど部員を動揺させました。
その翌日もあすかは部活に来ませんでした。
そんな部員に今まで気の弱かった部長の小笠原晴香は「今まであすかに頼りすぎていた。
同級生やけどうちらと違う特別なヤツやって思ってた。
でもあすかは特別なんかやなかった。
うちらが勝手に特別してたんや。
今度はうちらがあすかを支えなあかん。
いつ戻ってきても良いようにしてかなあかん。
うちらについてきて。」
と訴えた。
その言葉に「うちらのこと、あんま舐めんとってください。」
応えたのが吉川優子でした。
その言葉で吹奏楽部はまた活力を取り戻しました。
それ以降あすかはたまに部活に顔を出しみんなに迷惑はかけないとは言うが、休みの日の方が多くなっていました。
駅ビルコンサートの日はあっという間にやってきました。
あすかは母親に内緒で参加し、終わったらすぐに帰ることになっていました。
人前に出ることをあまり好まない晴香部長はバリトンサックスのソロをやることになっていました。
久美子は自信なさげな部長を見て心配していましたが、あすかは大丈夫の一言でした。
本番での演奏は普段の部長からは想像できない、ノリノリでアドリブを交えたファンキーなもので久美子は驚きました。
あすかには晴香の事が分かっていたのでした。
駅ビルコンサートも終わり、あすかが練習に来ているとき、久美子はあすかから勉強教えてあげるから家に来ないかと誘われました。
あすかに誘われて断れる久美子ではありませんでした。
【転】響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 のあらすじ③
あすか先輩と滝先生からは、もしあすかが出られなかった時は夏紀出るように指示が出ていた。
夏紀はもしもの時のために必死に練習をしていました。
しかし夏紀はコンクールにはあすか先輩が出るべきだと考えていました。
久美子があすかの家に勉強しに行くことになってから、部員みんなからあすかのお母さんを説得してあすかを部活に戻すように頼むようにと無理難題を突きつけられました。
みんなあすかに部活に戻って欲しいのです。
久美子が家に帰ると姉の麻美子が父親と言い争っていました。
麻美子は大学を中退して美容師の専門学校に行きたいと言いだし父も母もそれに反対しているのです。
姉は「転校だって、受験だって本当は全部嫌だった。
私だって久美子みたいに部活を続けたかった。
トロンボーンだって辞めたくなかった。」
と言うのです。
久美子は本気だと思いました。
ついにあすかとの勉強会の日がやってきました。
あすかの家でひとしきり勉強した後、あすかは自分のことについて語り始めました。
あすかの父親は進藤正和というプロのユーフォニアム奏者であるが小さい時に母親と離婚したこと、今吹いているユーフォニアムはその父親から送られたものであること、母親と良い成績を取り続ける事を条件に吹奏楽を続けていること、父親が今年の全国大会の審査員であること、どうしても全国大会に行って自分のユーフォニアムを聴いてもらいたかったこと、あすかが一人の時吹いていた曲は父が作曲したものでユーフォニアムと一緒に送られてきたノートに書かれていたものであること、等多くを語ったのです。
しかし、母親は不在で戻して欲しいという話はできませんでした。
そして、二人は堤防に行き、あすかは父親の作った曲で久美子の大好きな曲を演奏するのでした。
【結】響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 のあらすじ④
久美子は東京から帰ってきた姉と久しぶりに話をしました。
姉は自分で決める事を避け親の言いなりになってきたこと、今まで大人のふりしてやりたいことを呑み込んできたこと、そして高校の時親に反対されても自分で決めるべきだったこと、など今までの自分の事を話しました。
そして「あんたも、後悔しないようにね。」
の言葉を後に部屋を出て行きました。
その話を聞いた久美子はあすかと話すことにしました。
しかし「コンクールに出て欲しい」と頼みますが頑なに断りました。
みんながあすかを待っていると伝えると、久美子にみんなが本音を言う訳がないと突っぱねました。
久美子は痛いところを突かれ、尻込みしてしまいました。
そこで、晴香や姉の言葉を思い起こし、必死に言葉を吐き出しました。
私は先輩と本番に出たい!先輩はお父さんに演奏を見てもらいたいのにどうして我慢するの!どうして大人ぶるの!後悔する選択肢を選ばないで!最後まで諦めないで!先輩のユーフォが聞きたい!あすかは鬼気迫る久美子に涙を流し、嬉しかったと伝えました。
それでも練習に来なかったあすかはある日突然現れました。
全国模試で三十位以内に入った事を盾に母親を説得したのです。
夏紀に謝ろうとしたあすかを「ずっと先輩の事待っていたんですから。
謝まられるとか、そんなん嫌です。」
と夏紀は遮りました。
そして、全国大会を迎え、結果は銅賞。
でも全力を出し尽くした部員達は爽やかでした。
大会後、顧問が審査員の進藤正和(あすかの元父)から頼まれた言葉をあすかと久美子に伝えました。
「よくここまで続けてきたね、美しい音色だったよ」卒業式の日、あすかは久美子に父が作曲した曲の楽譜が書かれたノートを手渡しました。
それは、あすかが一人になったときに吹いていた、久美子も大好きな曲でした。
ノートを見て初めてその曲の題名を知りました。
「響け!ユーフォニアム」
響け!ユーフォニアム3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機 を読んだ読書感想
高校生は子どもとも大人ともつかない過渡期に当たります。
別の言い方をすれば、都合の良いときは大人の振る舞いをして、都合が悪くなると子どもになるという一面を持つ一方、大人になりたいという欲望も併せ持っているのではないでしょうか。
部員達はあすかを特別だと思っていました。
それは自分たちはまだ子どもなのにあすかは大人であると思っていたのだと思います。
久美子の姉麻美子は親の希望に従えば間違いないだろうという依存の心に従った事を今になって悔やんでいます。
そしてそれではいけないと親に逆らって自分の進路を自ら決めようとしました。
あすかは、親の希望で吹奏楽部を辞めようとしますが、それは依存心ではなく服従心でした。
どれが正しいのか、決めることはできないだろうと思います。
ただ言えるのは、久美子があすかに言った、後悔する選択をしないことではないでしょうか。
この本はさらっと読んでみると高校生の青春物語ですが、何度か読み返していると、人の何種類もある本性が描き出されているような気がします。
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