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監視カメラの映像チェックで分かった事
あれから一週間、アツシはカフェでブラックコーヒーを注文します。防犯カメラの映像チェックで寝る暇が無く、眠気覚ましの為に朝の日課となっていました。
映像を確認し続けて見えてきた事は、サクラがキョウコだけでなく様々な人への憑依を駆使してアツシの部屋に出入りしていたという事でした。
現時点では警察の捜査が簡単に自分の元へ届きはしないだろうと、アツシは感じていました。ただ、サクラが起こす『挽回』の為の行動次第では、状況が一変しかねません。また、サクラが関与しない第四の事件の真犯人は、サクラの事件に便乗してアツシを陥れる可能性があります。この二つの問題に対し対策を立てていこうと、アツシは黙考します。
コーヒーのお代わりを勧めに、女性スタッフがアツシに声を掛けました。アツシはコーヒーを断った代わりに、気が利いて可愛い店員さんだと彼女を褒めます。お世辞ですかと彼女は照れ隠しし、頭上の数値は49から58へ上がりました。
女性スタッフが去った後、アツシはマインド-アイで他人の心を知れると改めて実感します。困難はこの能力で容易く乗り越えると、自らを奮い立たせました。
一週間ぶりに大学へ
テーブルに置いていたスマホが鳴り、アツシは画面を見ないで電話に出ました。一週間大学に来ないアツシを心配した、エミからの電話でした。アツシは課題に手間取ってしまったと誤魔化し、もう終わりそうなので今日こそ授業に出ると伝えます。エミはその課題に他の学生は3日もかけていなかったと言い、明らかにアツシの嘘に気付いている様子でした。体調が悪くないなら来た方が良いとだけアツシに忠告して、エミは電話を切ります。アツシはエミが怒っていると分かり、その後すぐ大学へと向かいました。
アツシがキャンパスの中へ走って入る所を、一人の男が大きな門扉の影から写真に捉え笑みを浮かべます。港区3億円事件捜査チームの一員でした。
エミの不機嫌
エミは大学に来たアツシを見て、休みの間何をしていたのかと不機嫌そうに聞きます。頭上の数値は90ちょうどで、80代に下がりかねません。会う頻度が低いと高い数値の維持は難しい上に、エミは大学をサボる事が許せない性格でした。アツシは内心非常に焦り、今日で挽回すると決意します。
アツシがエミの質問に答えない内に、エミは教室に向かって歩きだしてしまいました。アツシは後を追って休みの理由を聞かなくていいのかと、後ろから声を掛けます。エミはラインの返信すら無かった事を納得できる理由なのかと、質問で返して来ました。
アツシはこの一週間、徹夜の防犯カメラチェックに加えて、マンション内の映像を貰う為るるなに指示を出したりしていて他の連絡が疎かでした。アツシは連絡を怠った事は完全に失敗だったと思いながら、課題以外にも理由があったと話し始めます。
エミはアツシの話しを遮り、クマに効くツボだといいアツシの目の上を押さえます。エミはクマを見れば忙しかった事が分かるから気にしていないと答え、先を歩き始めました。
深まるエミとの溝
それは全く嘘でした。エミの頭上の数値が元の97に戻る様子はありません。教室に入りいつも通りエミの隣に座ります。アツシは挽回を図りますが、以前アツシに告白して来た事のある女友達が現れました。会っていなかった割に数値70から下がっていないその女は、アツシが休みの間まるで連絡が取れていた様に振る舞ってエミに対抗します。
女が立ち去った後アツシはエミに、あの女からは一方的な連絡が入っていただけで返してないと弁解します。エミは全然気にしていないからと言いますが、目に涙を浮かべ拗ねた表情が顔に出ていました。頭上の数値もついに90を下回り89になってしまいます。アツシはエミから席を離されノートも見せて貰えず、ろくに会話しないまま授業を終えました。
アツシは昼休みの食堂で、いつもならエミが奢ってくれるが流石に今日は奢って貰えないだろうと思い食券機の前に立ちます。慣れない操作に迷いながら、ラーメンを購入し席を探しました。
すると前から2人前のラーメンを持ったエミが歩いて来ます。アツシはもしかして自分の分も買ってくれたのかと、エミに尋ねようとしました。けれどエミはアツシが自分の分を購入している事に気が付き、切なそうな表情を浮かべます。もともと二人分を一人で食べるつもりだったと言いながら、離れたテーブルに座ってしまいました。アツシはこのままではいけないと思い立ち、授業後のエミを強引に連れ出しました。
夜の観覧車デート
目的地に向かう電車の中で、アツシはエミに話しかけます。座れてよかった、移動で疲れるの嫌だと、アツシはエミに共感を求めますが、エミは相変わらず冷たい反応を示します。アツシが授業をサボった事を、エミはまだ怒っていました。
青梅駅に到着し電車の窓から外を見ると、大きな観覧車が見えました。エミはここが来たかった場所なのかと確認します。アツシは肯定し、一緒に来てみたかったと答えました。
二人が電車から降りようとすると、エミが近くの男性にぶつかってしまいます。アツシはその時のエミの反応を見て、人混みを連れて歩くなら気遣ってやらなければいけないと意識します。
エミに残る男性恐怖の傾向
アツシがエミと初めて会った時、アツシを見たエミの頭上の数値は-34、悪意を示していました。最初からアツシに好意を抱かない女性も一定数存在します。ただしエミはアツシに対して悪意があったというよりも、男という存在に悪意を抱いている様子でした。
アツシはたまたまエミの近くで授業を受けている時、男が怖いのかと疑問をぶつけてみました。事実を言い当てられたエミは、露骨に動揺します。当時エミは男から付き纏われていました。人の眼に怯えて生きるエミの姿と悪意に怯える過去の自分を重ねて、アツシはエミに親近感を抱きます。
電車から見えた大きな観覧車乗り場へ到着すると、お客はほとんどいません。平日だから人混みが苦手でも安心して利用できました。
エミの拭えない恐怖心
ゆっくりと高度を上げる観覧車の中で、アツシは改めてエミに向き合いました。授業に出なかった事はもちろん、午前の授業でエミに突っかかる女友達を止められなかった事について謝罪します。
エミが沈黙を守るのでアツシは『怒ってるよな、本当に…』と続けると、エミは小さく否定しました。エミは確かに怒っていたが、怒っている以上に怖かったと目に涙を浮かべます。
エミを付け回していた男は、同じ大学の学生でした。彼らはボランティアサークルと偽って女子学生を誘い込み、度数の高い酒で酩酊状態にして意のままにしていました。
アツシが彼らの実態を暴き、犯人は警察に捕まります。メディアに取り上げられ、大学でも悪質と取り沙汰されました。警察に逮捕される直前に彼らが撮ったと思われる動画が、インスタから出回ります。その動画の中で犯人はエミへの執着を見せ、出てきたら殺すとメッセージを残していました。
エミは動画に残された犯人の男の笑い声が忘れられませんでした。ポルノ画像が拡散された時も、男の顔がエミの脳裏をよぎりました。噂が収束しエミが復学した直後に、アツシとの連絡が途絶えます。エミは授業に出ない事怒らなければいけないと思う反面、それ以上に嫌な考えが頭を支配して怖かったのでした。
元通りになったエミの機嫌と数値
エミが本当の気持ちを伝え終えると、アツシはエミを強く抱き寄せます。アツシはエミの目を見ながら、『そんな所が大好きだ。』と伝えました。
その瞬間、エミの頭上の数値が上昇し97へと戻りました。アツシはずるいと言って、エミは顔を真っ赤にしながら照れ隠しをします。
アツシはエミに執着する男はまだ刑務所の中だから心配ないとエミを諭します。もし仮に出てきたとしても、自分たちに手出しはさせないと断言しました。その力強い眼差しに、エミは心から安心するのでした。
観覧車を降りた後、機嫌も数値も元通りになったエミの誘いで、夜景の綺麗な道に二人は移動します。エミが大学を休んでいた理由を深く追求してこなかった事に、アツシは事件に巻き込まないで済むと安堵していました。
アツシに辿り着いた捜査の手
けれどアツシは二人の後ろを歩く人物に引っかかりを覚えます。エミをその場で待たせて、付けて来る-15の悪意を持つ男に声をかけました。
男は右手にカメラを持ったまま、胸ポケットから身分証を取り出しアツシに見せます。即座に警視庁の人間だと分かり、アツシは身の毛もよだつ思いでした。
警視庁捜査一課 山之内ゴロウは、港区3億円事件の捜査担当だと自己紹介します。両国アツシである事を確認すると、捜査協力を求めました。アツシは平静を装い、警察の捜査がどの程度進んでいるのか探ってやるつもりでした。
『”白いワンピースの少女”とどういう関係なんです…?』そう聞かれたアツシは、言葉を失いました。第8話へ続きます。
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