前話のあらすじはこちら
臨時コンシェルジュの津吹キョウコ
依頼した部屋の乾燥と清掃作業が完了し、アツシは業者の人から明細票を手渡されます。領収書の宛名がユメノである事を確認してサインしました。
アツシが業者のトラックを見送った後、マンションオーナーの妻、津吹レミがアツシに謝罪します。昨夜、アツシが浸水の相談にマンションの受付へ駆け込むと、コンシェルジュである娘の津吹キョウコ(19歳)が警察に通報しようとしたからでした。
キョウコは『コイツ、女犯しそうって思ったから』等と言い、全く悪びれる様子がありません。レミはキョウコを叱りつけ、正コンシェルジュが産休の間に臨時で付けてるだけなのだと釈明します。レミが嫌がるキョウコの頭を無理やり下げると、キョウコの頭上の数値が-58を示しました。その様子を見てアツシは内心、あの母親いつか殴られるなと思うのでした。
あくまでも日常を装う
いつも通りきれいに片付いた部屋で、アツシはソファに腰を下ろします。曰く付きの金があるこの部屋に、本来は信頼できる女しか入れたくありませんでした。けれど、業者に依頼してこそ『日常』だと考え、壁の落書きだけ自分で消した後、敢えて業者を利用しました。
今回出入りした業者の人間がぱっと見何もなかったと証言してくれれば儲け物だと考えながら、クローゼットの中に仕舞い込んだ強奪金に目をやります。下手に動かして監視カメラに映す事の方が、リスクがあると考えていました。
サクラにこう何度も部屋を汚されては、今度こそあの反抗的なキョウコに通報されかねない。次こそサクラを捕まえなければ。サクラはどうやって部屋に入ったのか。そのような考えに耽っていると、コンシェルジュという存在に何か引っかかりました。ところが、るるなからスマホに着信があり集中力が途切れます。
るるなのグラビア撮影にて
アツシが電話に出ると、るるなは耳に響くほど大きな声で会いたいと叫んで来ます。どうしたのか聞いてあげると、るるなのマネージャーである米村ユキにアツシとるるなの関係が知られたかもしれないと言うのでした。アツシはそんな事かと拍子抜けしますが、るるなは構わず事の次第を話し始めます。
昨日、るるなは雑誌のグラビア撮影をしていました。撮影終了後、るるなは購入したクッキーを手作りと偽って、おもねるように編集長に手渡します。その行為はるるなの思惑通り、次の仕事に繋がるのでした。
その様子を見ていたマネージャーは楽屋に戻ってから、どこでそんなやり方を覚えたのかと訝しがります。こうした方が人の好意が稼げると聞いたと、るるなはつい口を滑らせました。感の鋭いマネージャーはるるなが隠していたアツシの存在を感じ取り、何処の誰なのかをきつく追求します。二人が押し問答を繰り広げていると、楽屋のテレビから『アーツシくん♪アーツシくん♬』と変わった鼻歌が流れました。単純なるるなはアツシという単語に、あからさまに動揺してしまいます。
記録されたサクラの”鼻歌”
昨日の一連の出来事をアツシに説明したるるなは、二人の関係が感づかれたと嘆きます。しかしアツシはるるなとの関係を心配するよりも、自分の名前がテレビから流れてきたという話に狼狽します。るるなにどういうことか聞くと、港区で起こった事件のニュースだったと言います。
るるなの電話を放置しアツシは自分の部屋のテレビをつけます。4日間で三件の被害があった3億円事件と同一犯と見られる四件目の事件について。四件目はお金が盗まれただけではなく、荷台から女性の遺体が見つかった事。これ以上の事件拡大を防ぐ為に公開された、三件で共通する”鼻歌”が記録されたドライブレコーダーの映像。これらがお昼のニュース番組で取り上げられていました。電話が繋がったままのスマートフォンから、るるなが心配して声を掛けますがアツシには届きません。
『アーツシくん♪アーツシくん♬ じゅーにかいーのーいちごがすーきー しーりほーくろー♪』この鼻歌を聞きながら、アツシは自分の築いた楽園が壊されていく事に強い憤りを覚えました。
『死ねば良かったのに』そう言われた過去を顧みて、アツシは苦笑します。戻ってたまるかと自分を鼓舞して、ピンチをチャンスに変えようと思い立ちました。
四件目の事件が起こったなら、サクラはまたアツシの元へ金を運び入れに来る。そのタイミングで捉えようと考えたのです。すぐさま、アツシはサクラの侵入ルートのカギとなる人物、津吹キョウコの元へ向かいました。第6話(前編)へと続きます。
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