【ネタバレ有り】スナックちどり のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:よしもとばなな 2016年5月に文藝春秋から出版
スナックちどりの主要登場人物
さっちゃん
40を前にして離婚をして、会社もやめた。まっさらな状態でいとこのちどりと旅に出る。
ちどり
さっちゃんのいとこ。祖父母に育てられた。
スナックちどり の簡単なあらすじ
さっちゃんは、40歳を手前に10年連れ添った相手との離婚が決定し、しょぼくれていました。そんな時、いとこのちどりとひょんなことからロンドンで落ち合い、イギリスのペンザンスという町にしばらく滞在することになりました。いとこのちどりは、育ての親であり仕事仲間でもあった祖父母を失って、さっちゃんと同じようにしょぼくれていたのです。ふたりでいざペンザンスに降り立つと、そこは不思議な空気で寂しげな町でした。ふたりはその場所の孤独にからめとられ、4泊もしてしまいます。
スナックちどり の起承転結
【起】スナックちどり のあらすじ①
さっちゃんといとこのちどりは、40歳を手前に、一緒にイギリス西端のペンザンスという街に滞在することになりました。
さっちゃんは10年ほど結婚生活を送った相手と離婚したばかりで、ちどりは育ての親であり仕事仲間でもあった祖父母を立て続けに亡くして、ふたりともしょぼくれていたのでした。
ちどりは祖父母と共に営んでいた「スナックちどり」を改装してバーにすることになり、それまでの空いた期間にパリの友達のところに滞在していました。
また、さっちゃんは、結婚していた相手が同じ会社で信頼を得ている役割を担っていたために自分の方が辞めざるを得なくなり、退職後の期間でイギリスに1ヶ月ほど滞在することにしたのでした。
たまたま2人のタイミングがうまく一致し、ちどりの「ペンザンスに行ってみたい」という提案にさっちゃんも乗り、この旅が実現したのでした。
いざペンザンスに降り立つと、思ったよりもかなりさびれた町で、あたりには何もなく、孤独な雰囲気が漂っていました。
ふたりはそこの孤独な雰囲気にからめとられ、そこに4泊もすることになります。
【承】スナックちどり のあらすじ②
2人はペンザンスにある、こじんまりとした可愛いB&Bに宿泊します。
ふたりはほろ酔いでホテルに帰り、様々なことを語り始めました。
さっちゃんが離婚した相手のこと、ふたりの祖父母のこと、祖母の名前にちなんでやっていたスナックみどりのこと。
離婚したことに迷いを持っていたさっちゃんは、ちどりと話すことで気持ちを落ち着けることができました。
さっちゃんの元旦那さんは不思議なオーラに包まれた底抜けに明るい人で、とても素敵な人でしたが、どうしてもどこかに「逃げ」が見え隠れしていたのです。
さっちゃんはそこに気付くまでに時間がかかりましたが、ちどりは早くもそこを見抜いていたようでした。
そして、夜には近くのバーへ出かけました。
バーはなんだか全体的に薄い感じで、生きている気がしませんでした。
その中で、ちどりだけが色を持って生きているように見えていました。
バーでは地元のおじさんたちが2人をちやほやしましたが、ちどりはスナックのチーママらしくさらりとかわします。
そして、ホテルに帰ってふたりで語り合う中で、さっちゃんは様々なことを思い返します。
元夫との出会い、結婚生活、そして、ちどりや祖父母のことも。
【転】スナックちどり のあらすじ③
ふたりは、セントマイケルズマウントという島に向かいました。
そこは、それまでの場所とは雰囲気が違い、なんだか明るさがありました。
ふたりは名物のクリームティーを味わい、ホテルに帰ります。
そこでさっちゃんは熱を出しました。
なんだかさみしい気持ちで涙まで出てきてしまい、ちどりがビールとポテトを持ってきてくれました。
ふたりで飲んで食べ、その後に眠ると、ある夢を見ました。
セントマイケルズマウントの小さな教会に立っていて、誰かに恋をしていました。
そして、なぜだかわかりませんが、「もう安心だ、大丈夫だ」と感じているのです。
目が覚めると朝のはずなのにとても暗く、さみしくなりました。
元夫と暮らした部屋に戻りたい、そう思いながら二度寝し、再び目覚めると明るくなっていました。
その日の夜、先にちどりが寝つき、さっちゃんも寝ようとしていたところ、ちどりが「さみしいからそっちに言ってもいい?」と言い出します。
しばらくふたりでくっつきあった後、ちどりは「キスをしたい」と言い出します。
いとこであり女性同士であるふたりでしたが、ふたりはその夜一線を越えました。
恥ずかしさよりも、お互いを大切に想う気持ちが勝っていて、それは性的なものではなく、人間としてのものでした。
【結】スナックちどり のあらすじ④
最終日、ふたりはセントマイケルズマウントにもう一度行き、クリームティーを楽しみます。
昨夜の出来事がなかったかのような、ますます仲良くなったかのような、不思議な感覚でした。
さっちゃんは、ちどりのことが大好きだと感じました。
ただ、どうこうしたいわけではなくて、一緒に居られる今が幸せだったのです。
そして、元夫の複雑な子供時代に想いを馳せます。
彼は、「人を楽しませる」ことに自分の価値を見出し、そうせざるを得なかったのです。
さっちゃんはそれを愛しきれなかったということでした。
一度だけ、いつも明るい彼から静けさを引き出せたことがありました。
その瞬間はとても穏やかで、なかなか得ることのできないものでした。
そういうものを育てることが大切だったのかもしれない、さっちゃんはそう思いました。
ふたりはクリームティーのお店でクリームティーの作り方について語り合います。
すると、おばあちゃんが近づいてきて、少しの間語り合いました。
ちどりは育ててくれた祖母を思い出して涙を流しました。
おばあちゃんは、それを優しく包み込んでくれました。
2人はいつも通りホテルに帰り、いつも通りに寝る支度をし、いつも通りに朝を迎えました。
さっちゃんは、これからの未来を考えながら、自分はこの5日間「スナックちどり」にいりびたらせてもらったのかもしれない、と考えていました。
スナックちどり を読んだ読書感想
「スナック」というものに行ったことはありませんが、この本を読んだあとはやたらとスナックが目につくようになり、どこの街にも必ずあることに気付きました。
そして、スナックで育った子は野蛮だ、教養がない、そんなイメージが世の中にはあります。
「あの子はスナックの子だから…」そういう台詞を聞いたこともありました。
けれど、そのスナックで育った子がちどりのような子だと思うと、なんだか優しい気持ちになるのです。
様々な人を見て育ってきたからこそ生まれる感性や、優しさが、きっとあるのだと思います。
相手が今求めているものがなんなのか、相手はどんな人なのか、それを瞬時にとらえてくれる人がいるからこそ、私たちはスナックやバーに行くのかもしれません。
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