著者:原田マハ 2018年3月にポプラ社から出版
スイート・ホームの主要登場人物
香田陽一(こうだよういち)
主人公。宝塚のホテルでパティシエをした後で洋菓子店「スイート・ホーム」を開く。
香田陽皆(こうだひな)
陽一の長女。梅田地下街のテナントで契約社員として働く。
園田未来(そのだみき)
スイート・ホームの常連。料理教室の講師。
池田郁子(いけだいくこ)
陽一の義理の妹。
由芽(ゆめ)
スイート・ホームの常連。 予備校に通う。
スイート・ホーム の簡単なあらすじ
香田陽一はパティシエとして勤務していたホテルを退職した後に、自宅を改装して小さな洋菓子店「スイート・ホーム」をオープンします。
結婚後もお店を手伝いに来てくれる長女の陽皆や、妻の妹・池田郁子の助けもあって売れ行きは好調です。
常連客の中でも特に気にかけていた由芽の大学合格を祝って、陽一は取って置きの新商品を完成させるのでした。
スイート・ホーム の起承転結
【起】スイート・ホーム のあらすじ①
大阪・梅田から山手を走る電車と駅前のバスを乗り継ぐと、香田陽皆の父親・陽一が自宅を改装して開いた小さな洋菓子店「スイート・ホーム」が見えてきます。
大学を卒業した陽皆は西宮の小さな会社の総務部に就職しましたが、引っ込み思案な性格が災いしてかOL生活になじめません。
梅田の地下街にある雑貨店に契約社員として勤めていた陽皆は、毎週金曜日の午後6時に店に立ち寄り何かひとつ「プレゼントにしてください」と言って買っていく男性のことが気になっています。
クリスマス前の金曜日に陽皆は手作りのケーキを作って渡そうとしましたが、その日に限って閉店になっても彼は来店しません。
久しぶりに彼と再会したのは、年が明けてバレンタインデーの閉店間際のことです。
名前は山下昇、重い病気で入院していた母親を励ます何かを求めて雑貨店に立ち寄ったこと、丁寧に見送ってくれる女性の店員に出会ったこと、「そんな人をお嫁さんにもらわなあかんよ」との母の遺言。
ギフトを贈る相手はいなくとも、昇は陽皆に会いに来ることを約束しました。
【承】スイート・ホーム のあらすじ②
園田未来は大阪府と兵庫県内に数カ所チェーン展開する料理教室、「オアシスキッチン」で講師をしていました。
より多くの生徒たちに喜んでもらえるようなレシピを考えるために、未来はしばしば「スイート・ホーム」のイートインスペースに立ち寄ります。
結婚後もしばしばお店を手伝いに来ている山下陽菜から紹介されたのは、常連客でウェブデザイナーをしている辰野始です。
仕事のかたわら関西各地のスイーツを食べ歩きしているという辰野は、まともな食事は1日1食しか食べません。
カロリー摂取量や栄養バランスを心配した陽皆のアドバイスを受けて、辰野はオアシスキッチン初の男性メンバーとなりました。
スイート・ホームのウェブデザインを手掛けていた辰野は、お礼として未来の料理教室のホームページのレイアウトも考えてくれます。
ホワイトデーの特別企画として男性のためのスイーツ教室も開催されて、陽皆の夫・昇やスイート・ホームの店主・陽一も参加して大評判です。
未来の側には取って置きのアイデアを提供してくれるスイーツ男子がいるから、もう明日のレシピに悩むことはありません。
【転】スイート・ホーム のあらすじ③
香田陽皆の母親のひとつ年下の妹・池田郁子は函館に住んでいましたが、夫が急病で亡くなってからは姉夫婦と同居していました。
スイート・ホームの店番をしたり月に1度はオアシスキッチンで料理を習ったりと、新天地でもアクティブに活動しています。
郁子が友人と九州地方に旅行に出かけた先で転倒して左膝を複雑骨折してしまったのは、陽皆の妹・晴日の結婚が決まった日です。
けがをして帰ってきてからは郁子はすっかり塞ぎ込んでしまい、家族や町内の人を避けるように部屋の外へ出ようともしません。
晴日が婚約者の明野真と一緒に郁子のお見舞にやって来たのは、紫陽花の花が咲き出した6月の週末のことです。
陽皆と同じくキンモクセイが咲く4カ月後に結婚式を挙げると聞いた途端に、郁子ははりきってリハビリに取り組みます。
10月初めの土曜日は大安吉日に当たり、晴日のエスコート役を買って出た郁子は自分の足でバージンロードを歩けるようになっていました。
【結】スイート・ホーム のあらすじ④
第1志望の大学を目指して一浪中の由芽にとっては、勉強の合間にスイート・ホームへ出かけるのが何よりもの息抜きです。
店内のカフェスペースに座ってボンヤリしていると子育て真っ最中の香田陽皆や、今ではウォーキングにはまっている池田郁子が声をかけてくれました。
永遠に春が来ないような気分になって落ち込んでいた由芽に、店主の陽一はマジパンの桜の花びらを載っけたケーキを特別に作ってくれます。
陽一たちの前で思いっきり泣いた由芽は、笑顔で自宅に帰ってひたすら試験勉強に励む毎日です。
合格発表当日はインターネットではなく、わざわざ大学の掲示板まで足を運んで結果を確認しに行きました。
掲示板の前で自分の番号を見つけた由芽は近くにいた知らない受験生と喜びを分かち合って、「春が来ました!」と母親にメールを送ります。
由芽の母から合格の一報を聞いた香田一家はお祝いのスイーツパーティーを開いてくれることになり、陽一は由芽のためにプリマヴェーラ(春の女神)と名付けたケーキの製造に取りかかるのでした。
スイート・ホーム を読んだ読書感想
キンモクセイに囲まれた駅前のバス通りを抜けた先にひっそりと店を構えている、赤い屋根とチョコレート色のドアが目印の「スイート・ホーム」を訪れてみたくなりました。
定番のいちごのショートケーキから焼き立てのマドレーヌ、お店のオリジナル商品のスイート・ホーム・ロールケーキまで。
店主の香田陽一が腕によりをかけて作った、ショーケースに並ぶ洋菓子が宝石のようで実においしそうです。
陽一の家族やお店にやって来るお客さんも、悩み事や複雑な事情を抱えていて物語に引き込まれていきます。
飛びっきりのスイーツでエネルギーをもらった人たちが、それぞれの道を歩んでいく姿が感動的です。
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