「ハードボイルド・エッグ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|荻原浩

「ハードボイルド・エッグ」

【ネタバレ有り】ハードボイルド・エッグ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:荻原浩 1999年10月に双葉社から出版

ハードボイルド・エッグの主要登場人物

最上俊平(もがみしゅんぺい)
主人公。脱サラして探偵事務所を開業する。

片桐綾(かたぎりあや)
最上の助手。

柴原克之(しばはらかつゆき)
妻の翔子と「柴原アニマルホーム」を運営する。

相沢清一(あいざわせいいち)
克之の義理の父。マンションや駐車場の家賃収入で暮らす。

沢木(さわき)
高齢者向け支援センターの職員。

ハードボイルド・エッグ の簡単なあらすじ

中学生の頃からレイモンド・チャンドラーに憧れていた最上俊平は、上京して平凡なサラリーマンになった後も探偵を諦めることができません。ようやく事務所を開業しますが持ち込まれてくるのは犬猫に関する以来ばかりで、助手は80歳を過ぎているであろう高齢の女性です。いつものようにペット探しを頼まれた最上でしたが、思わぬ事件に遭遇するのでした。

ハードボイルド・エッグ の起承転結

【起】ハードボイルド・エッグ のあらすじ①

ハードボイルドへの道は遠く

海辺の田舎町で生まれ育った最上俊平は、中学生の時に地元の図書館でレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説を読む機会がありました。

すっかり夢中になり、いつか探偵になることに憧れます。

学校を卒業した後に英会話教材のセールスマンになりましたが、仕事には一向にロマンを見い出せません。

30歳を目前にして退職した最上が通いはじめたのは、市ヶ谷にある探偵学校です。

夜間講座を受けて、閉店したイタリアンレストランの跡地に住居兼オフィスを構えました。

事務所に電話を引いてタウンページにも広告を出しましたが、たまに頼まれるのは迷い猫や犬の捜索しかありません。

孤独に耐え兼ねた最上は、求人広告で秘書を募集することにします。

応募してきたのは履歴書に水着姿のポートレートを貼り付けた、片桐綾という女性です。

66年生まれと記入されていますので、間もなく30歳になるのでしょう。

早速面接の約束を取り付けましたが現れたのは西暦ではなく明治66年生まれの老女で、水着の写真は息子の妻のを借りたと悪びれません。

仕方がないので仮採用という形で、しばらくの間雇うことにしました。

【承】ハードボイルド・エッグ のあらすじ②

かませ犬を引き受ける探偵

行方不明になっていた犬を捕まえた最上は飼い主に返そうとしましたが、既に夜逃げした後でした。

遺棄されたペットを保護する活動を個人で続けている、柴原克之と妻の翔子に引き取ってもらいます。

翔子の父・相沢清一が犬に噛まれて亡くなったのは、それから間もなくのことです。

先日最上が預けたハスキー犬に襲われたと警察は考えているようで、地元の消防団が行方を犬の行方を追っていました。

清一はかなりの資産家で、この地域に広大な土地を所有しています。

以前から地元の不動産屋に立ちのきを迫られていましたが、陰で糸を引いているのは悪質な地上げ屋であり中塚組という反社会的勢力です。

中塚組長がブルドッグを飼っていることを掴んだ最上は、ハスキー犬の無実を証明するために組の事務所に忍び込みました。

ブルドッグにドッグ・トイを噛ませて、柴原夫妻の家で落ち合います。

入手した歯型を警察に提出しようとした際に、最上が気づいたのは克之たちと中塚組との思わぬつながりです。

【転】ハードボイルド・エッグ のあらすじ③

探偵助手としての才能を開花

克之と翔子が悪事に加担するようになったきっかけは、中塚組長からブルドッグのトレーニングを頼まれたことです。

相沢清一はお金に目がくらんで、あっさりと土地を売却しようとしていました。

克之たちが運営している施設がなくなると、保護している動物たちの行き場はありません。

土地を相続するために、夫婦で犬を清一にけしかけて殺害した次第です。

警察に自首するというふたりの言葉を信じた最上と綾でしたが、不意打ちを食らって監禁されてしまいました。

戦前に上海の雑技団に所属していたという綾にとっては、縛られたロープから脱出するのは容易いことです。

監禁場所からの脱出に成功した最上たちは車で逃走しますが、ガードレールを突き破って川に転落してしまいます。

近隣住民からの通報を受けて駆け付けた警察によって、柴原夫妻は逮捕されて最上と綾は無事に保護されました。

搬送された病院に1日入院するだけで最上は退院できましたが、綾はしばらくの間は安静が必要でしょう。

【結】ハードボイルド・エッグ のあらすじ④

安らかに眠りについた相棒

事件が解決してから2カ月ほど後の6月初めの雨の日に、市から委託されて高齢者の生活サポートをする相談員の沢木から電話がかかってきました。

片桐綾が亡くなり自宅には最上への手紙が残されていたために、直接受け取りに行くことにしました。

綾の家の前で待っていた女性は、いつか写真で見た水着美女です。

沢木は綾の義理の娘ではなく、そもそも彼女の息子は終戦間際に死んでいて他に身寄りはいません。

家の中の文机の上に置いてあったのは、体調が良くないためにしばらく探偵事務所を休ませて欲しいという休職届でした。

沢木から綾が埋葬された場所を聞いた最上は、その足で私鉄に乗り込んで寂れた駅で降ります。

綾の墓は海の見える高台にひっそりとたたずんでいて、今の季節には雨露に輝く紫陽花も咲いていて景色は悪くありません。

その日以来ひと月に1度か2度くらいはお墓参りに行くようになり、綾の墓前に固ゆでの卵(ハードボイルド・エッグ)をそなえるのでした。

ハードボイルド・エッグ を読んだ読書感想

頭の中ではハードボイルドな探偵になりきりがらも、現実の世界では迷子のペットを追いかけている最上俊平が何とも情けない主人公です。

水着の悩殺ショットにつられて助手を採用しながらも、明治生まれの80代と一緒に仕事に駆け回る姿には笑わされました。

マイペースなパートナーの片桐綾との間に、いつしか生まれていく信頼関係が微笑ましく映ります。

「本の真似なんかしなくたって、だいじょうぶだよ。」

という彼女のセリフが特に良かったです。

平凡な犬探しから殺人事件へと巻き込まれていくなど、本格的な推理小説としてもしっかりと成立していました。

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