【ネタバレ有り】門 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:夏目漱石 1951年2月に角川書店から出版
門の主要登場人物
野中宗助(のなかそうすけ)
主人公。 大学を中退した後は公務員として働く。
野中御米(のなかおよね)
宗助の妻。 旧姓は安井御米。
安井(やすい)
御米の元夫。 現在の消息は不明。
野中小六(のなかころく)
宗助の弟。 高等学校の学生。
佐伯(さえき)
宗助の父の弟。 事業家。
門 の簡単なあらすじ
京都で大学生活を送っていた野中宗助が恋に落ちてしまったのは、親友・安井の妻である御米です。ふたりは京都を飛び出して全国各地を放浪を続けていきますが、 やがては東京で夫婦として暮らし始めます。ある時に家の近所で空き巣騒ぎが起こり坂井という資産家と知り合いになった宗助は、安井についての思わぬ消息を知るのでした。
門 の起承転結
【起】門 のあらすじ①
野中宗助と小六との間にはふたりの兄弟がいましたが、いずれも病弱なために早くに亡くなっていました。
小六が10歳をこえた頃に、宗助は京都の大学へ進学します。
学生時代の宗助は社交的な性格のために友人にも恵まれていて、安井もそのうちの1人です。
夏休み前は下宿にいた安井は、学期が始まった途端に学校の近くに一戸建てを借りました。
宗助がこの家を訪ねてみると、影のように静かな女性・御米が迎えてくれます。
安井は御米を「妹」として紹介しますが、実際にはふたりは夫婦です。
安井が悪性のインフルエンザに患った知ると、宗助は彼が療養先にまで押しかけていきました。
宗助と御米が道ならぬ関係へと発展していくのに、それほど時間はかかりません。
親兄弟を捨て、親類を捨て、友人を捨て、学業を捨て。
何もかもを無くしたふたりは夫婦として、ふたりだけで生きていくことを決意します。
京都から去らなければならず、東京の実家にも戻れない宗助が向かった先は広島です。
【承】門 のあらすじ②
半年ほど広島で暮らしていた夫婦のもとに、宗助の父親の死を知らせる便りが舞い込んできました。
母親は既に6年前に亡くなっているために、実家に残されたのは父の愛人と小六のふたりだけです。
電報を受け取った宗助が久しぶりに帰郷した宗助は、お葬式を済ませた後に家屋敷や土地を片付けを始めます。
お金の勘定に不慣れな宗助の相談に乗ってくれたのが、父の兄に当たる佐伯でした。
愛人にはかなりの額の手切れ金を手渡して、16歳になったばかりの小六については当分の間は佐伯の家に預けて面倒を見てもらうことにします。
財産の整理を佐伯に任せた宗助はその後も地方を転々する日々でしたが、事態が好転したのは大学時代の元同級生で現在は官庁に勤めている杉原との再会です。
社会的な成功者の杉原は、失敗者である宗助に対しても見下したり横柄な態度を取ったりすることはありません。
宗助が御米と一緒に東京へ帰ることができるように手筈を整えてくれた上に、役所での仕事まで紹介してくれました。
【転】門 のあらすじ③
宗助夫婦の新しい住まいは、駅から離れた先の崖の下にある貸家です。
ここらへん一帯の土地は、坂井という地主が所有していました。
ある日の真夜中過ぎに坂井の屋敷に泥棒が入って、盗まれた文庫が宗助たちの敷地内で発見されます。
この空き巣事件を境にして宗助は坂井の家に招かれるようになり、今では食事をごちそうになるほどの仲です。
突如として佐伯が病死して小六の学費が払えなくなった時も、 坂井が書生として雇ってくれました。
小六の行く末を心配している宗助に対して、坂井は自身の破天荒な弟について打ち明けます。
坂井の弟は大学を卒業した後に大手の銀行に勤め始めましたが、 日露戦争が勃発した途端に満州へと渡ってしまったそうです。
今現在は大陸を放浪し続けている坂井の弟には、向こうで意気投合した日本人がいました。
その相棒こそが安井で、かつての御米の夫であり宗助の裏切りに遭った張本人です。
近々安井が日本に帰国すると聞いて、宗助の顔はみるみるうちに青ざめていきます。
【結】門 のあらすじ④
坂井から偶然にも安井の消息を聞かされてからというもの、宗助は御米から話かけられても上の空で仕事中も一向に集中できません。
宗助が京都で暮らしていた頃、旧友に相国寺へ行って座禅体験をしている級友がいました。
今の職場にも鎌倉の禅寺に通っている同僚がいるために、紹介状を書いてもらい10日ばかり休暇を取得します。
宗助が世の中と寺の中との明らかな違いを感じたのは、山門をくぐり抜けた時です。
見よう見まねで禅問答や写経に没頭してみましたが、悟りが開けてくることもなく弱々しい自分を救うこともできません。
寺の老師とあいさつを交わして丁寧なお礼を述べた後は、10日前と同じあの門をくぐって日常に帰るだけです。
宗助が鎌倉に行っている間に坂井の弟と安井は2〜3日だけ滞在して、 すぐに大陸へ渡ったことを人伝に知ります。 家の近所ではウグイスの声が鳴り響き御米は春の訪れに喜んでいましたが、宗助の心の中だけはいつまでも冬のままなのでした。
門 を読んだ読書感想
親友の妻に心を奪われてしまうというお約束の展開には、著者の代表作である「それから」や「心」に通じるものがありました。
愛する御米と一緒になれたはずの主人公・野中宗助からは、不思議と喜びや情熱といった感情は伝わってきません。
全てを自然の流れに委ねながら、世の中の慌ただしさや人々の欲望から超越したかのような潔さを感じます。
もともと悟りの境地に達していた宗助が、物語の終盤に禅寺に行っても何も変化が現れないのは当然でしょう。
例え変わり果てた安井と再会を果たしても、何事もなかったかのように世間話に興じるはずです。
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