【ネタバレ有り】ハーレムワールド のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山田詠美 1987年2月に講談社から出版
ハーレムワールドの主要登場人物
サユリ(さゆり)
ヒロイン。外国人の父と日本人の母との間に生まれる。
ティエン(てぃえん)
大学で経済学を専攻する留学生。
シンイチ(しんいち)
会社員。青森県出身。
スタン(すたん)
航空母艦の乗組員。
クラウス(くらうす)
外交官。
ハーレムワールド の簡単なあらすじ
社会的な地位のある外交官から外国人留学生に脱走中の船員、ごく普通の日本人のサラリーマンまで。アフリカ系の父親を持つサユリは、数多くの男性たちの間を渡り歩いてつかの間の関係を築き上げていきます。彼女に心奪われていく4人の男たちの間にも、次第に友情やライバルを越えた奇妙な繋がりが芽生え始めていくのでした。
ハーレムワールド の起承転結
【起】ハーレムワールド のあらすじ①
留学生として昼間は東京都内の大学に通って夜はインドネシア料理のお店でアルバイトをするティエンは、このところ自分の人生に物足りなさを感じていました。
そんな彼のもとには、度々サユリが転がり込んできては一夜を共にしています。
サユリとの逢瀬だけが心の拠り所となっていきますが、彼女に夢中になっているのはティエンばかりではありません。
青森県の田舎町から上京してきた純朴な青年、シンイチもその中のひとりです。
いつものようにシンイチがサユリとの1時間後の麻布でのデートに備えていると、自宅アパートのインターフォンが鳴り響きました。
玄関のドアを開けてみると、サユリと見知らぬアフリカ系の若い男性・スタンが立っています。
事情があって追われているというスタンを匿ってほしいという、一方的なお願いはいつものことです。
戸惑いながらも強引なサユリに押し切られる形で、シンイチとスタンはひとつ屋根の下で暮らし始めることになりました。
【承】ハーレムワールド のあらすじ②
クラウスはずいぶんと前からサユリと付き合いがある、中年の外交官です。
多忙な職務の合間を縫ってサユリを呼び出しては、海の見える伊豆の別荘で密会を楽しんでいました。
本来であればここは大使館のお客さんを招いての文化交流やパーティーに使われるはずでしたが、今やクラウスはすっかり私物化しています。
母国に家族を残して赴任してきましたが、今はサユリのことで頭が一杯です。
家庭的で良妻賢母といった昔気質の妻、わんぱくで育ち盛りの息子、世界各国を飛び回って築き上げてきた今の仕事と地位。
何ひとつ不自由のないはずだったクラウスの日常生活は、自分の子供ほど年齢の離れた愛人によって壊されつつありました。
そんなクラウスの複雑な気持ちも我関せず、サユリが別荘からコッソリと電話をかけた相手はティエンです。
大学での退屈な抗議も安い時給のバイトも放り出して、赤の他人の別荘に忍び込んだティエンはサユリとのつかの間のひと時を過ごします。
【転】ハーレムワールド のあらすじ③
シンイチはある日突然に自分の部屋に転がり込んできた、異国の青年との生活にすっかり困惑していました。
会社務めのシンイチと比べるとスタンは昼夜逆転の生活で、一向に出ていく気配を見せません。
シンイチにとって唯一の収穫と言えるのは、彼が故郷の手作り料理を振る舞ってくれることと自然と気が付いたら英会話が上達していたことくらいでしょう。
遂にシンイチが我慢の限界に達したのは、乏しい給料を貯金して購入した1000ドルのジャケットを勝手に持ち出した時です。
アフリカ系のスタンに対して、シンイチは咄嗟に人種差別的な言葉をぶつけてしまいました。
基地の中に停泊する航空母艦の船員として働いていたこと、船の中で窃盗事件を起こしたこと、謹慎処分中にサユリに会いたくなったために脱走してきたこと。
自らの身の上話を打ち明けたスタンは最後に、サユリの父親が外国人であり彼女の身体の中にもアフリカ系の血が流れていることをシンイチに告げます。
【結】ハーレムワールド のあらすじ④
シンイチは一緒に暮らし始めた当初とは違って、スタンのことを憎いとは思っていません。
自分自身も彼の影響を受けて変わってきたある日、スタンは警察に逮捕されて連れて行かれてしまいました。
残されたシンイチはサユリとの間に大きな空白を感じるようになってしまい、彼女に別れを告げます。
クラウスが自国に帰されることになったのは、数々のパーティーをすっぽかしたことや大使館の重要な任務を疎かにしたことが原因です。
最後にサユリと会った場所は目黒のとんかつ屋で、クラウスの髪の毛はすっかり真っ白で以前の恋に燃えていた紳士の面影はありません。
次第に違法な薬物に溺れて禁断症状に苦しむようになったサユリが向かった先は、ティエンのもとです。
皆が次々とサユリの側を離れていく中でも、ティエンは最後まで彼女を見捨てないことを誓います。
夜明けを迎え始めたティエンの部屋の中で、サユリは彼の手を握りしめながら静かに眠りにつくのでした。
ハーレムワールド を読んだ読書感想
数多くの男性を虜にして振り回していく、ヒロインのサユリの自由奔放な振る舞いは不思議と憎むことが出来ません。
一見するとお気楽な毎日を謳歌しているように思えながらも、次第に明かされていく彼女の孤独な生い立ちとアフリカ系日本人としてのマイノリティーの苦悩も伝わってきました。
社会的な地位や名誉を放り出してサユリに夢中になってしまうクラウスや、お互いへの嫌悪感を隠しつつ同棲生活を送るシンイチとスタンの不甲斐なさには笑わされます。
男たちが去った嵐の後のような静けさの中でも、ふたりで寄り添うサユリとティエンの姿が切ないです。
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