「ベッドタイムアイズ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|山田詠美

「ベッドタイムアイズ」

【ネタバレ有り】ベッドタイムアイズ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:山田詠美 1985年11月に河出書房新社から出版

ベッドタイムアイズの主要登場人物

キム(きむ)
ヒロイン。 場末のクラブやアメリカ軍基地で歌手として働く。

ジョゼフ・ジョンソン(じょぜふ・じょんそん)
ニューヨークのハーレム出身のアメリカ軍兵士。愛称「スプーン」。

マリア(まりあ)
キムの先輩歌手。

ベッドタイムアイズ の簡単なあらすじ

横須賀の基地を脱走した「スプーン」ことジョゼフ・ジョンソンが助けを求めた相手は、売れない歌手のキムです。キムのアパートに転がり込んできたスプーンは、ヒモ同然の自堕落な生活を送り始めます。彼が後生大事にしている怪しげな封筒と美しき女性歌手の存在によって、キムは思わぬ事件へと巻き込まれてしまうのでした。

ベッドタイムアイズ の起承転結

【起】ベッドタイムアイズ のあらすじ①

転がり込んできたGIと幸運の匙

初めてキムが横須賀のアメリカ軍基地でジョゼフ・ジョンソンを見た時に、 彼は黒いネクタイを締めてタキシードで正装していました。

他の兵士たちが海軍の作業衣やジーンズをだらしなく身に纏っている中でも、その姿は一際目立ちます。

いつも銀の匙を幸運のお守り代わりにポケットに入れている彼が、仲間たちから付けられたニックネームは「スプーン」です。

ある日突然に基地を脱走したスプーンは、 身の回りの物を全て詰め込んだトランクを両手に提げてキムの部屋のインターホンを鳴らしました。

深く考え込まない性格のキムはあっさりとスプーンを中へ招き入れて、 そのままなし崩し的に同棲へと突入します。

昼夜を問わずにお互いの身体を求めあったり、お酒を飲み過ぎて仕事をすっぽかしたり、違法な薬物に溺れたり。 自由気ままな生活を続けていくキムにとってただひとつ気になっていることは、スプーンが肌身離さずに大切そうに抱え込んでいる分厚い書類の入った封筒です。

【承】ベッドタイムアイズ のあらすじ②

先輩からのアドバイスと募る不安

いつものように自分の出番が終わった後に、ステージ裏で同僚の歌手・マリアと待ち合わせてカフェに向かいました。

彼女だけにはこっそりと、スプーンのことを打ち明けています。

彼が軍隊を逃げ出してきたこと、やがて連れ戻されて留置場に入り本国に強制送還されるであろうこと。

彼女が言うには、大した罪にはならずに除隊処分だけで済む場合もあるようです。

マリアの言葉を聞いて少しは気分が楽になったキムは、店を出て独りになると男友達の家を訪ねました。

以前から馴れ合いの関係にある彼とはそのままベッドを共にして、 翌朝何食わぬ顔でスプーンの待っている自分の部屋へと帰ります。

マリアとスプーンが鉢合わせをした日はそれから数日後で、場所は公園前のバス停です。

簡単な自己紹介を交わしたマリアは、タクシーに乗り込んで去っていきました。

美しい女性を見ると決まって口笛を吹いて卑猥な言葉をかけるスプーンが、その時ばかりは無言だったためにキムは不安に襲われます。

【転】ベッドタイムアイズ のあらすじ③

的中したキムの胸騒ぎ

スプーンは例の大事に抱えた封筒の中身に目を通しながら、どこかの国の大使館の職員と電話で長話をしていました。

「金もうけのもと」だと言う書類をキムが覗こうとした途端に、スプーンは血相を変えて出ていってしまいます。

他に行く当てがなく自暴自棄になったスプーンが事件を起こさないように、キムは彼が向かいそうな場所を隈無く探さなければなりません。

ふたりで遊びに行ったディスコやバー、 お気に入りのレコードショップ、スプーンがドラッグを売り捌いていた悪友たちのたまり場になっているアパート。

しらみ潰しに心当たりを回っていたキムが最後に足を運んだのは、自由が丘にあるマリアのワンルームマンションです。

チャイムを鳴らしても応答はありませんでしたが、宿無しの不良少女だった頃にキムはこの部屋の合い鍵を預かっていました。

ロフトのような造りの室内でキムが目の当たりにしたのは、裸のままでシーツにくるまっているマリアとスプーンの姿です。

【結】ベッドタイムアイズ のあらすじ④

逃げ続けた不運な男

マリアとの浮気の現場を目撃されながらも、スプーンは悪びれた様子もなくミキのもとへ戻ってきました。

自らを軍隊用語でU・A中(脱走中)と揶揄するスプーンのその言葉には、いつか必ずやって来る別れを意味しています。

残り僅かとなった時間を一緒に過ごしていたふたりを悩ませていたのは、警視庁の捜査員を名乗ってかかってくる不審な電話です。

遂にはドアのチャイムが鳴り響いて、部屋の中に5人ほどのスーツ姿の男女が踏み込んできてスプーンの両腕を掴んだまま連行していきます。

翌日のアメリカ軍極東放送を聞いていたミキが知ったのは、スプーンが軍の機密情報を某国の大使館に売り飛ばそうとした容疑で逮捕されたというニュースです。

数日の間仕事にも行かずに明かりの消えたアパートで座り込んでいたミキは、スプーンとの思い出の品がないか探してみます。

彼がお守りにしていた幸運の匙を見つけたミキは、ようやく人間らしい感情を取り戻して泣き叫ぶのでした。

ベッドタイムアイズ を読んだ読書感想

1985年にはまだ無名の新人作家でしかなかった山田詠美が、文藝賞を獲得した作品です。

駐留米軍相手に惰性で歌手を続けているヒロインのキムと、アフリカ系アメリカ人の脱走兵・スプーンとの同棲生活には一風変わった味わいがありました。

行き当たりばったりに生きているように思えていたスプーンが、クライマックス近くで大使館に軍事機密を売り渡そうとするシーンには驚かされます。

自らが生まれ育ったアメリカにも駐屯先である日本にも居場所を見いだすことが出来なかった、マイノリティーとしての彼なりの反逆の心が伝わってきました。

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