「フリーク・ショウ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|山田詠美

「フリーク・ショウ」

【ネタバレ有り】フリーク・ショウ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:山田詠美 1989年5月に角川書店から出版

フリーク・ショウの主要登場人物

サオリ(さおり)
大学卒業後に事務員として働く。

マーク(まーく)
横須賀に駐留中の海軍兵士。

クッキー(くっきー)
大阪出身。 上京後に「エンバシィ」のバーテンになる。

ナルオ(なるお)
大学生。

アイリーン(あいりーん)
ナルオの恋人。 女子高生。

フリーク・ショウ の簡単なあらすじ

赤坂のクラブ「ムゲン」や六本木にあるバー「エンバシィ」には、夜毎に人種を越えたお客さんが詰めかけてきます。平凡な日常に物足りなさを感じているOLから、 地元を飛び出してきた訳ありな彼女まで。お互いの違いを乗り越えて「ブラザー」「シスター」と呼び合っているうちに、彼ら彼女らは不思議な絆で結ばれていくのでした。

フリーク・ショウ の起承転結

【起】フリーク・ショウ のあらすじ①

週末の私は別の顔

サオリは普段から化粧気のない地味なコピー取りの事務員でしたが、金曜日の夕方が過ぎると慌ただしく制服から着替えて会社を後にします。

彼女が向かう先は赤坂にあるクラブ「ムゲン」で、ここ3ヶ月は週末になると通い詰めです。

紫色の身体にピッタリとフィットしたドレスに、深いスリットの入ったスカート。

ムゲンの階段を降りる時のサオリの服装からは、退屈なただの事務員の女の子の面影はありません。

いつものように「ブラザー」と呼び合うアフリカ系アメリカ人が演奏する音楽のリズムに身を任せて、マティーニやラム・イン・コークなどのカクテルグラスを手にしていると自分が特別な人間になったような自身が湧いてきました。

その夜も意気投合したアメリカ人の女性と焼肉屋へ繰り出して、酔いつぶれた挙句に狸穴にある彼女のアパートへ転がり込みます。

翌朝になって目覚めたサオリが見たものは、彼女の顔を覗き込んでいる見ず知らずのブラザー・マークの顔です。

【承】フリーク・ショウ のあらすじ②

海を超えて理想の女性像を探す

マークは内気な性格のためか、気性の激しいアメリカ人女性たちに対していまいち苦手意識があります。

海軍に入隊して乗り組んだ船が横須賀港に入港した時には、おしとやかな日本人女性に期待を寄せてしまいました。

どぶ板通り商店街で目にしたのは兵隊さんのあしらいに慣れたバーのママたちで、アメリカ本国の彼女たちと変わりはありません。

横須賀中央駅の周辺でお喋りに夢中になっている年若い女の子たちこそが、マークがイメージした大和撫子です。

マークは給料日になると、更なる出会いを求めて東京へと足を運びました。

赤坂のムゲンだけでは物足りないため、六本木のはずれにあるディスコ「エンバシィ」を紹介してもらいます。

この店で理想的な日本人・リサと恋に落ちますが、軍の任務があるために3ヶ月間日本を離れなければなりません。

エンバシィでの再会を誓い合いますが、再び舞い戻った時にはリサの姿はなくカウンター席で働くクッキーという渾名の店員がいるだけです。

【転】フリーク・ショウ のあらすじ③

浪速の繁華街であれ六本木のクラブであれ

クッキーは18歳の頃から、大阪市浪速区の繁華街で働いていました。

反社会的勢力の構成員とトラブルを起こして大阪を逃げ出した彼女は、縁もゆかりもない東京の地で住むところを確保しなければなりません。

従業員用アパートの鍵と1ヵ月分の給料を前渡ししてくれたのが、エンバシィの店長です。

エンバシィに集まる多種多様な人たちに驚きつつも、1年もするとすっかり慣れてきます。

音楽に熱中する者、違法な薬物に溺れる者、男と女の泣き笑い。

大阪の盛り場で嫌というほど見てきた人間模様と、何ら変わりはありません。

退屈な毎日の中で唯一の慰めは、横浜の小さな基地で開かれたハウスパーティーでレジーというブラザーと仲良くなったことです。

レジーは2週間後には出国しなければならないために、クッキーは入れ込み過ぎない程度に逢瀬を重ねて見苦しくないように別れました。

恋の思い出に浸っているクッキーの隣で、アイリーンが日本では売っていないニューポートを口にくわえて火を点けています。

【結】フリーク・ショウ のあらすじ④

愛を貫くふたり

アイリーンが微笑みながらタバコに火を点けるのを見ていたナルオは、初めて彼女と知り合いになった独立記念日で開放されていたアメリカ軍基地の中を思い出していました。

友人たちは外国産のビールや屋台で売っているバーベキューチキンをぱくついていましたが、ナルオは心から楽しむ気にはなれません。

ロープが張り巡らされた先にある芝生で、独り寝っ転がっていたナルオに声をかけてきたのがアイリーンです。

幼少期にハワイで暮らしたことがあるナルオは、彼女とも英語で直ぐに打ち解けていきます。

アイリーンはナルオが独り暮らしをしている代々木の家までやってきて、そのままふたりは深い仲になりました。

突如として外国人女性とのお付き合いを始めたナルオに対して、周りの人たちは余りいい顔をしません。

遂にはバーでアイリーンに対して人種差別的な発言をした知人と、乱闘騒ぎまで起こしてしまう始末です。

アイリーンは喧嘩は時間の無駄とナルオを諫めて、どんな汚い言葉も恋人たちにとっては愛の遊びに変わることを教えるのでした。

フリーク・ショウ を読んだ読書感想

物語の舞台に設定されている赤坂のバーや、六本木のクラブの賑わいが味わい深かったです。

騒々しく飛び交う英語のスラングに、ジャズやブルースの喧騒も伝わってきました。

昼間はごく普通の会社勤めや学生生活を静かに送りながらも、夕暮れ時と共に装いを新たに夜の街へと繰り出していく女性たちの姿が幻想的です。

海を渡ってやってきたアフリカ系アメリカ人たちと繰り広げられる、それぞれの恋愛模様も儚げでした。

束の間の情熱的なひと時が終わった途端に、女性は日常へ男たちは自分の生まれ育った国へと帰っていく後ろ姿が哀愁たっぷりです。

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