【ネタバレ有り】クレオパトラの夢 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:恩田陸 2003年10月に双葉社から出版
クレオパトラの夢の主要登場人物
神原恵弥(かんばらめぐみ)
主人公。製薬会社の研究員。
神原和見(かんばらかずみ)
恵弥の双子の妹。弁護士。
若槻慧(わかつきさとし)
大学助教授。
若槻慶子(わかつきけいこ)
慧の妻。
多田直樹(ただなおき)
慶子の従兄弟。国立感染研究所の研究員。
クレオパトラの夢 の簡単なあらすじ
海外の製薬会社で日夜激務に追われている神原恵弥が日本に帰国した目的は、不倫を続けている双子の妹の和見を説得するためです。北国のH市で久しぶりの再会を果たした兄と妹でしたが、不倫相手の大学助教授の突然の事故死を知ります。助教授がとり憑かれていたという「クレオパトラ」について調査を続けていくふたりは、恐るべき事実を知るのでした。
クレオパトラの夢 の起承転結
【起】クレオパトラの夢 のあらすじ①
神原恵弥は双子の妹・和見を東京へ連れ戻すために、北国の町・H市にやって来ました。和見は学生時代からの恋人との婚約を破棄して、妻子のある大学の助教授・若槻慧を追いかけてH市で暮らしています。久しぶりに再会した妹から恵弥が頼まれたのは、自分の代わりにある人の告別式に参列することです。一昨日に慧が亡くなってしまいましたが、故人の不倫相手である和見が参列する訳にはいきません。弔問客に紛れ込んだ恵弥は、慧に関する情報を集めることに成功しました。慧が妻と別居して札幌市内の一軒家で独り暮らしをしていたこと、12月21日の朝に部屋の中で転倒して亡くなったこと、「クレオパトラ」という名前の研究に夢中になっていたこと。H市の和見のマンションで1泊した次の日に恵弥と和見は合い鍵を使って札幌の郊外に慧が借りていた一軒家に忍び込み、慧にプレゼントした鼠志野の湯飲みと彼の書き込みがあったH市内の地図を持ち去りました。
【承】クレオパトラの夢 のあらすじ②
H市に戻った次の日の朝に、和見は部屋の鍵と置き手紙を残してマンションから失踪してしまいました。恵弥は慧の地図に×印が付けてあった、3つのポイントを回って手掛かりを捜索してきます。H市内を巡るためにレンタカーを借りてきてくれたのは、慧の葬式で知り合った多田直樹です。1番目の×印は明治時代から続いていて牛を飼っている個人医院、2番目は製氷業の草分けの地として有名なG稜郭、3番目は若槻慧の妻・慶子の実家である辰川畜産院。海外の製薬会社で研究員として働いている恵弥は、一見すると無関係な3つの場所に共通する意外なキーワードに気が付きました。全てが天然痘に関係している施設であり、慧が密かにクレオパトラというコードネームを付けてワクチンの開発を行っていた可能性が浮上してきます。ドライブの後に地元で人気の寿司屋に入った恵弥は、多田のプライベートについて知ります。
彼は慶子の従兄弟に当たり、妻とは交通事故で死別しているようです。
【転】クレオパトラの夢 のあらすじ③
その日の夜遅くに多田直樹と別れた恵弥は、次の日の朝に札幌市内のマンションに住む若槻慶子を訪ねます。
慶子の話によると、亡くなった夫は無精子症のために子供を授かることが出来ません。
そんな時に慶子が浮気相手の子供を身籠ってしまい、以後は生まれてきた赤ちゃんを夫婦の息子として育てているようです。
慧が離婚しなかった理由は慶子の実家が裕福なためで、自らの研究を続けるためでした。
更には和見との不倫を続けていたのも、彼女を愛していたからではなく優秀な弁護士として利用するためです。
今となってはクレオパトラが何を意味するものなのか分からず、全ては夢物語と慶子は一笑に付します。
これといった収穫の得られないままH市の和見のマンションに戻った恵弥は、待ち受けていた侵入者から不意討ちを喰らいました。
海外を転々としていた恵弥は護身術を習得していたために、襲撃者を取り押さえることは造作もありません。
彼らの正体は防衛庁の職員で、この部屋に隠されている何かを探していたようです。
【結】クレオパトラの夢 のあらすじ④
再び札幌に到着した恵弥は、駅前の家電量販店のテレビから流されているニュース映像に釘付けになりました。
この日の朝まで滞在していた和見のマンションが、火事で焼け落ちたことが報じられています。
野次馬の中から恵弥に近づいてきたのは、これまで身の危険を感じて若槻慧が独り暮らしをしていた一軒家の地下に隠れていた和見です。
クレオパトラの正体はワクチンではなく、天然痘を生物化学兵器として散布するためのウイルスでした。
胃がんに侵されていて余命幾ばくも無かった若槻慧が最期に残した研究の成果は、恋人の和見の部屋の中の冷凍庫に保管されていましたが全ては燃え尽きて決着が付きます。
事件解決の後にH市郊外の山の上を走るケーブルカーに集まったのは、恵弥と和見に若槻慶子と多田直樹です。
従兄弟同士というよりも恋人に見える慶子と多田を見て、恵弥は若槻夫妻が育てている息子の本当の父親に気が付きます。
夜行列車で東京へ戻る双子を、慶子と多田はプラットフォームの向こう側から見送るのでした。
クレオパトラの夢 を読んだ読書感想
髪の毛を刈り上げて精悍な表情をした兄の恵弥が、女言葉を使う設定がユーモアたっぷりです。
ロングヘアーにすらりとした佇まいの妹・和見が、男言葉で受け答えする会話のシーンも違和感なく読み進めることが出来ました。
無意識のうちに「男らしさ」や「女らしさ」を押し付けてしまう、社会全体に潜んでいる傲慢さへの鋭い批判が込められています。「クレオパトラ」を巡って海外の製薬会社から防衛庁まで、様々な機関の思惑が入り乱れていく展開がスリリングです。
全てが夢のように消えていく、クライマックス近くでの火事の場面が圧巻でした。
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