「光の帝国 常野物語」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|恩田陸

光の帝国 常野物語(恩田陸)

【ネタバレ有り】光の帝国 常野物語 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:恩田陸 1997年10月に集英社から出版

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光の帝国 常野物語の主要登場人物

春田光紀(はるたみつのり)
小学4年生。能力は書物を丸暗記する「しまう。」

美那子(みなこ)
飲食店の従業員。能力は未来を予知する「遠目」。

拝島暎子(はいじまえいこ)
会社員。能力は「裏返し」。

遠山一郎(とおやまいちろう)
「ツル先生」の愛称で親しまれる校長先生。能力は長生き。

光の帝国 常野物語 の簡単なあらすじ

東北地方の奥深く「常野」で生まれ育った人たちには、普通の人には持ちえない不思議なパワーが備わっています。彼らはその巨大な力を、権力や富を始めとする自らの欲望のためには決して使うことはありません。現代社会の中に溶け込んでごく普通に静かに暮らすことを望んでいましたが、次第にトラブルに巻き込まれていくのでした。

光の帝国 常野物語 の起承転結

【起】光の帝国 常野物語 のあらすじ①

記憶する少年と先生との束の間の交流

小学4年生の春田光紀にはありとあらゆる書物を暗記する能力「しまう」がありましたが、周りの人たちからは固く口止めされていました。

父親は紀行作家で全国各地を巡りながら執筆活動を続けているために、光紀も転校を繰り返しています。

そんな光紀のことを気にかけて何かとコミュニケーションを取ろうとしているのは、転校先の担任の先生・今枝です。

季節の変わり目になると光紀の両親は身体を休めるために、1週間から10日間ほど眠り続ける「虫干し」に入らなければなりません。

タイミングが悪く今枝先生が家庭訪問にやって来たために、光紀の姉・記実子が応対して何とか誤魔化します。

父と母の虫干しも無事に終わって光紀もようやく新しい学校に慣れ始めた頃に舞い込んだのは、常野からの1通の手紙です。

この手紙の指示に従って、次の場所へと引っ越しをしなければなりません。

大好きな今枝先生との仄かな思い出を胸に、光紀は家族とともに旅を続けていくのでした。

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【承】光の帝国 常野物語 のあらすじ②

全てを見通す女性と彼女に惹かれていくサラリーマン

三宅篤は取引先の部長・高島に誘われて、人形町の居酒屋に飲みに行きました。

ノスタルジックな店構えの暖簾を潜り抜けた先でふたりを出迎えてくれたのは、白のセーターにジーンズの化粧っ気のない若い女性店員・美那子です。

篤が美那子からお茶を受け取ろうとした途端に、湯呑みが割れてしまいます。

高島の話では彼女には初対面の客の未来を見る能力があるらしくて、篤の将来は大いに期待できるそうです。

半信半疑のままでその日は食事とお酒をご馳走になった篤でしたが、2週間ほど経つと高島から人形町のお店が閉店することを聞きました。

篤が主人に事情を聞きに行くと、突如として美那子を貰って欲しいと切り出されます。

主人と美那子は血が繋がっていないこと、美那子の本当の父親は「常野に帰る」と言い残して娘を置いたまま出ていってしまったこと。

篤は新しい世界に足を踏み入れていくことに戸惑いを覚えながらも、彼女と共に歩んでいくことを決意するのでした。

【転】光の帝国 常野物語 のあらすじ③

裏返すか裏返されるか

拝島暎子は6年前に大学教授だった夫が突如として失踪して以来、高校生の娘・時子とマンションでふたり暮らしです。

いつものように仕事が終わってエレベーターで外に出ようとしていた暎子の前に、宅配便の配達業者に化けた怪物が現れました。暎子は常野一族に代々伝わる力を使って相手を「裏返す」と、敵の姿は何事もなかったかのように元の人間に戻ります。

暎子を遥かに上回るほどの力に恵まれていた夫が、何者かに「裏返された」ことは今でもまだ信じることは出来ません。

次の日のお昼休みにオフィスを抜け出して牛乳を買いに行った暎子は、販売員に紛れ込んでいた怪物に不意を突かれて「裏返され」そうになります。

寸前の所で暎子の危機を救ったのは、妙な胸騒ぎを察知したために学校を早退して母親の勤め先へと駆け付けた時子です。立派に成長した娘の姿を嬉しく思う一方で、暎子は終わりの見えない戦いへと彼女を巻き込んでしまったことに罪悪感を覚えるのでした。

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【結】光の帝国 常野物語 のあらすじ④

子供たちを待ち続けるツル先生

時代の流れが戦争へと向かっていく中でも遠山一朗は、常野の親たちに頼まれて東北の1番北に位置する県の山奥に小さな学校を作りました。天性の特殊な能力故に精神的なバランスを崩すもの、異端者として地元から排除されたもの、家族の愛を知らずに育ったもの。

行き場のない子供たちを引き取って共に時給自足の生活を送っているうちに、何時しか遠山は「ツル先生」と呼ばれ彼らから信頼を寄せられていきます。

子供の秘めたる力を実験に利用しようと目を付けたのは、殺人兵器の開発を進めていた軍部の特殊部隊です。学校を包囲した軍人たちと立て籠りを続けていく子供たちの間で、壮絶な闘いが幕を開けました。

追い詰められた子供たちは自らの力を暴走させて自爆してしまい、焼け跡には辛うじて生き延びたツル先生の他には誰もいません。

ツル先生は爆発の瞬間に生徒たちが残した「必ず戻ってくる」というその言葉を信じて、今でも学校のあった丘の上で再会を待ち続けているのでした。

光の帝国 常野物語 を読んだ読書感想

宮沢賢治の小説や柳田国男の民話を彷彿とさせるような、常野のノスタルジックな世界観と人々の素朴な暮らしぶりが神秘的です。

超能力を持ちながらも私利私欲のために乱用することなく、自分たちの静かな生活と愛する家族を守り抜く時だけに解放するところにも共感出来ました。

生まれ育った土地を追われた常野一族が移り住んだ先でも迫害を受けている様子には、ユダヤ人などのマイノリティとしての苦悩の歴史にも繋がるものがあります。

今現在でも群衆の中に紛れ込んで、ひっそりと戦いを続けている常野の人たちの姿が思い浮かんできました。

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