「ロミオとロミオは永遠に」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|恩田陸

ロミオとロミオは永遠に

著者:恩田陸 2002年10月に早川書房から出版

ロミオとロミオは永遠にの主要登場人物

カナザワアキラ(かなざわあきら)
主人公。中部・北陸地区出身。早くに両親と死別。年老いた祖父母を気づかう。

アカシシゲル(あかししげる)
北海道地区出身。 勉強もスポーツも得意。実家は貧しく姉のマユミが経済的な支え。

アカシオサム(あかしおさむ)
アキラの兄。現在の消息は不明。

シマバラシロウ(しまばらしろう)
大東京学園の要注意生徒。コンピューター機器に精通する。

タダノ(ただの)
大東京学園の教師。 生徒に徹底した生活指導と自身の理想を押し付ける。

ロミオとロミオは永遠に の簡単なあらすじ

世界各国に見捨てられた21世紀の地球で成功するためには、大東京学園をトップで卒業するしかありません。

カナザワアキラは入学して早々に、行方不明となった兄・オサムがこの学園を脱走したことを知ります。

シゲルとシロウのふたりの仲間と力を合わせ20世紀にたどり着いたアキラは、この時代から未来を変えることを決意するのでした。

ロミオとロミオは永遠に の起承転結

【起】ロミオとロミオは永遠に のあらすじ①

廃虚の国に残された最後の希望

20世紀の終わり頃から21世紀の始めにかけて、世界各国によって有害な科学物質や産業廃棄物が垂れ流しにされてきました。

国連は「新地球移民法」を制定して次々と先進国は宇宙へと旅立っていきますが、議決によって日本は旧地球への居残りを余儀なくされます。

日本人が居住できるスペースから生活のレベルまでが厳しく制限されていて、仕事と言えば核廃棄物の後片付けくらいしかありません。

唯一未来を約束された人間になるための狭き門は、2031年に創立された大東京学園の卒業総代に選ばれることです。

小さい頃に両親を亡くしたカナザワアキラは、育ててくれた祖父母に恩返しをするために地元の中部・北陸地区予選を突破しました。

優秀な成績を収めた者だけが入ることを許される港クラス、学内の規律を乱したものが矯正のために入れられる新宿クラス。

入学生は厳正なる審査を受けて全23段階コースに振り分けられて、アキラは下から3番目の葛飾クラスからスタートします。

【承】ロミオとロミオは永遠に のあらすじ②

消えた兄貴の背中を追う弟

同じクラスの中でアキラが親しくなったのは、過酷な北海道地区からエントリーしてきたアカシシゲルという少年です。

卒業総代になるという表向きの目標とは別の、もうひとつの大切な目的をアキラはシゲルに打ち明けました。

アキラにはオサムという名前の7歳離れた兄がいて、家族の期待を一身に背負って大東京学園に入学しています。

反抗的な態度からオサムは新宿クラスに落とされてしまいましたが、わずか3カ月足らずで脱走してその後の行方は学園側もつかめていません。

兄の手掛かりを探し始めていたアキラに、こっそりと接触してきたのがいま現在の新宿クラスをまとめているシマバラシロウです。

オサムの脱走手段をアキラとシロウは協力して突き止めようとしていた矢先に、ふたりの秘密の交信が生活指導のタダノにばれてしまいました。

生徒たちの教育に自らの人生の全てを注ぎ込んできたタダノは、この学園の汚点とも言えるオサムを今でもまだ許していません。

【転】ロミオとロミオは永遠に のあらすじ③

秘密のトンネルと学園の権威高揚のための祭典

タダノの独断によって新宿クラスへの編入が決まったアキラでしたが、今まで以上に脱走への執念を燃やすようになりました。

大東京学園のホストコンピューター「ブリタニカ」への侵入に成功したシロウは、カナザワオサムが脱走直前に20世紀の東京の地下鉄の路線図にアクセスしていたことをに注目します。

学園を建設する際に都内の地下鉄は全ての駅が埋め立てられましたが、ただひとつだけ見過ごされたのが新橋駅です。

新宿クラスの学生寮の地下から旧山手線に沿ってに掘り進めていき、新橋から「外れの森」と呼ばれる立ち入り禁止地区へのトンネルを開通させました。

10月10日に全校生徒が競技に参加する「大東京オリンピック」というスポーツのイベントが開催される予定で、学園の警備も手薄になりこの日を逃してはしばらくチャンスはありません。

大東京オリンピックの当日にスタジアムの控室でそっとアキラの手を握ったのは、1年生の中でもトップの江東クラスで優秀な成績を収めていたシゲルです。

【結】ロミオとロミオは永遠に のあらすじ④

未来を変えるための過去からの挑戦

アキラが「問題児」と見なされて新宿クラスに入れられてからは言葉を交わす機会を奪われていましたが、ふたりの友情に揺るぎはありません。

シゲルが大東京学園に入学したのは借金の返済に明け暮れていた姉のマユミを救うためでしたが、つい最近になって彼女が失意のうちに亡くなったことを知ります。

マユミがいなくなった今となってはこの学園にいる意味もなく、卒業総代にも未練はありません。

大東京オリンピックのフィナーレを飾る大玉転がしを利用してスタジアムを突破したアキラとシゲルは、外れの森でシロウとの合流に成功しました。

森を抜けた先には明るく輝く滝が待ち構えていて、3人は外の世界を目指して水しぶきの中に飛び込みます。

気がつくとアキラとシゲルは大根畑の中に倒れていて、付近を通りかかった農家の男性に声をかけてみるとこの場所は東京都練馬区で今は1964年との返事です。

この時代に到着したであろう兄とシロウを見つけた後に、アキラは来るべき最悪の21世紀を自分たちの手で変えることを誓うのでした。

ロミオとロミオは永遠に を読んだ読書感想

環境破壊と放射能汚染によって荒廃した近未来の地球にそびえ立つ、大東京学園からは不気味なムードが漂っています。

がんじがらめのブラック校則と徹底した23段階のスクールカーストにも屈することもなく、知能と体力を振り絞って立ち向かっていく主人公・カナザワアキラを応援したくなりました。

ハッキングから地下トンネルまでを駆使して練り上げていく脱走計画は、スパイ小説のようなスリルもあり戦争映画の迫力にも負けてはいません。

勝ち抜けを目指して繰り広げられていく数多くのレースの中でも、前世紀の遺産と国家権力を利用した「大東京オリンピック」が圧巻です。

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