ねむり(村上春樹)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ねむり(村上春樹)

【ネタバレ有り】ねむり のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:村上春樹 2010年11月に新潮社から出版

ねむりの主要登場人物

私(わたし)
物語の語り手。大学の英文科を卒業した後に結婚して主婦になる。

夫(おっと)
歯科医。大学の頃の友人と5年前に診療所をオープンする。

息子(むすこ)
私と夫の長男。小学2年生。

ねむり の簡単なあらすじ

主婦として歯科医の夫と小学生の息子と平凡ながらも幸せに暮らしていた「私」は、ある日の夜に見た悪夢が原因となって眠ることが出来なくなってしまいます。読書をしてもスポーツに励んでも、お酒を飲んでも私の意識は冴え続けていくばかりです。遂には夜中に抜け出して当て所なく彷徨うようになった私に、思わぬ災難が降りかかるのでした。

ねむり の起承転結

【起】ねむり のあらすじ①

眠ることを忘れた主婦

私が一睡も出来なくなってから、そろそろ17日が経とうとしていました。

きっかけになったのは最初の夜に見たグロテスクな悪夢と、目覚めた時に水差しを持って足元に立っていた見ず知らずの老人です。

次の瞬間には老人の姿は消え失せていて、隣りのベッドでは夫が何事もなかったかのようにぐっすりと眠っています。

シャワーを浴びてパジャマに着替えた後にリビングのソファーに横になってみますが、一向に眠気が訪れることはありません。

夫はアルコールを1滴も受け付けない体質のために私も普段はお酒を飲みませんが、試しに戸棚にあった贈り物のレミー・マルタンを開けてみました。

更には高校時代の愛読書「アンナ・カレーニナ」を、寝室の本棚から引っ張り出して手に取ってみます。

小学生の頃から図書館に通い詰めて大学では英文科に進学した私でしたが、結婚後は読書に費やす時間は減っていく一方です。

みるみるうちに物語に引き込まれていき、気が付くと朝になっていました。

【承】ねむり のあらすじ②

いつもと同じような朝に

私は小説の続きが気になりましたが、窓の外が明るくなると本を置いてコーヒーを沸かして飲みました。

突然やって来た激しい空腹感を癒すために、有り合わせの材料でサンドイッチを作って流し台の前に立ったまま食べます。

ようやく夫が起きてきましたが、あの嫌な夢と老人についても一晩中眠ることが出来なかったことについても打ち明けることはありません。

歯科医の夫は私たちの住むマンションから車で10分程度離れたところにある診療所へ、小学2年生になる息子は診療所へ向かう道筋にある学校へ。

いつもの朝と同じように午前8時15分に、ふたりは愛車のブルーバードに乗り込んで駐車場を出ていきました。

夕食が苦手な夫は、12時過ぎには一旦昼食を取りに自宅に帰ってくる予定です。

普段であれば午前中に買い物を済ませる予定でしたが、冷蔵庫の中には食料品がたっぷりあって明日の午後までは心配ありません。

再び私はソファーに座って、アンナ・カレーニナの続きを読み始めます。

【転】ねむり のあらすじ③

繰り返される日常

夫が午後の仕事に出掛けてしまうと、私はバッグに水着を入れてスポーツクラブへと向かいました。

日課にしている30分程度の運動では物足りないためにみっちり1時間は泳ぎましたが、身体にはまだまだ力が満ち溢れています。

銀行によって用事を済ませた後は、帰宅した息子におやつをあげて夕飯の支度をするだけです。

午後10時になると私は夫と一緒にベッドに入りますが、相変わらず眠くなりません。

枕元の電灯のスイッチを消すと同時に眠りに落ちる夫を眺めながら、そっとベッドを抜け出して居間に行きます。

フロアスタンドの灯りを点けてブランデーを舐めるように飲みながら、夜が明けるまでただひたすらに本を読みます。

義務として買い物に行き献立を考えて、ルーティンワークの如く夫と息子の相手をする。

毎日が同じように流れていくうちに、知り合いに会ってもほとんど話をすることはありません。

次第に私は、他の誰かと関わり合いになるのが嫌になっていきます。

【結】ねむり のあらすじ④

危険な夜のドライブ

この頃では夫と息子が寝静まった後に本を読んでいると、酷く気持ちが高ぶることがあります。

そんな時には私は家をコッソリと抜け出して、ドライブに出かけるようになりました。

夫の野球帽の中に髪の毛をたくし込みTシャツの上からヨットパーカーを羽織っているので、遠目からは男の子のようにしか見えません。

終夜営業のチェーン・レストランに入ってコーヒーを飲んだり、港まで車を走らせて船を眺めたりするだけです。

眠れなくなってから17日目の夜、私は車を公園の白線で区切られた広いパーキングに停めてぼんやりとしていました。

気が付くとふたりの男が両側にたって、車を揺さぶり続けています。

私が思い出したのは、以前に1度だけ警察官から職務質問を受けた時のことです。

1か月くらい前にカップルが若者グループに襲われたこと、男性の方は殺害されて女性の方は暴行を受けたこと。

私は全てを諦めたまま、揺れる車内の中でシートにもたれたまま涙を流し続けているのでした。

ねむり を読んだ読書感想

不眠症に陥った主婦の日常生活が、決して感情的になることなく淡々したタッチで描かれていました。

眠れない夜を切り抜けるために、学生時代に大好きだった思い出の1冊を読み返すシーンには共感出来ました。

一睡もしていないはずのヒロインが、水泳に励むことによってかえって肉体的な若さを取り戻していく様子も印象深かったです。

夫や息子との間に微妙な隔たりが生まれていき、自分だけの世界へと誘われていくような幻想的なイメージがあります。

夜の車の中で襲撃者に囲まれる破滅的なクライマックスの中にも、不思議な静謐さが漂っていました。

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