【ネタバレ有り】鉄の骨 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:池井戸潤 2009年10月に講談社から出版
鉄の骨の主要登場人物
富島平太(とみしまへいた)
マンション建設現場から突然業務課に移動することになった。
尾形総司(おがたそうじ)
一松組のやり手常務。業務課の直属の部下。
三橋萬造(みはしまんぞう)
大手ゼネコン山崎組の顧問。大型受注案件の調整役を務める。
城山和彦(しろやまかずひこ)
道路族民政党議員。三橋の義兄。
野村萌(のむらもえ)
平太の大学の同級生で銀行員。一松組と取引がある白水銀行で働いている。
鉄の骨 の簡単なあらすじ
一松組に務める平太は、突然畑違いの移動を命じられ、業務課に配属されます。談合課とも呼ばれるその課で、納得できないものの必要悪と先輩に言われながら公共事業入札の調整のための仕事を覚えていきます。そんななかで大物フィクサー三橋と親しくなり、地下鉄工事受注に奔走します。一方、談合を追う東京地検特捜部は、大型案件である地下鉄工事の入札で動きがあると考えていました。果たして一松組は大型案件地下鉄工事を受注することができるのでしょうか。
鉄の骨 の起承転結
【起】鉄の骨 のあらすじ①
中堅の一松組のマンション建設現場で働く富島平太は、突然業務課に異動することになります。
現場の永山は平太を可愛がっており、平太の異動を惜しんでくれました。
平太を強く望んで業務課に呼んでくれた尾形は、一松組でも発言権の強いやり手常務です。
右も左も分からない平太は先輩西田について仕事を覚えていきます。
しかし平太は、脱談合を掲げているはずなのに根強く残る業界の姿に疑問を感じます。
必要悪だと言う西田に平太は反論できません。
道路工事入札は調整で一松組にと決まったはずなのに、一社同意しない会社がありました。
トキワ土建です。
おかしなものを感じ、大学の同級生で一松組と取引がある銀行に務める萌に財務状況を調べて欲しいと平太は頼みます。
しかしそのことから口論になり二人の間はギクシャクするのでした。
萌は会社の先輩で社内のエリートでもある園田から口説かれていたのもあったのです。
結局、談合を拒否したトキワ土建が仕事を勝ち取ります。
そうなると次の地下鉄工事は絶対にとりたいところです。
そんな大きな公共事業は一体誰が仕切るのか、と平太は疑問を持ちます。
大きな事業は闇のフィクサー、天皇と呼ばれる人間が仕切りをすると説明を受けます。
談合を摘発しようと考えている東京地検特捜部は、道路工事入札の結果を見て談合破りが起こったのかと思います。
証拠をよほど固めないと摘発が難しい談合。
地下鉄工事という大きな入札を控え、東京地検特捜部は業界の膿を出すべく調査を進めていました。
狙うは小物ではなく大物が噛んだ談合です。
【承】鉄の骨 のあらすじ②
地下鉄工事は一松組単独入札を考えている尾形。
中堅ではあるものの地下鉄工事には実績もあり、得意分野でもあります。
しかし大きな工事であるため、よそはグループを組んで参戦してくることが予想されます。
それでも勝算があると踏んでいるのでしょう。
平太はそんな頃尾形に誘われ、競馬場で三橋という老人と引き合わせられます。
持ち馬が出走しているという三橋は堅気ではない雰囲気を漂わせていましたが、話してみれば平太の母の知り合いで同郷でした。
平太は三橋に可愛がられるようになります。
しかしその三橋こそ闇のフィクサーだったのです。
道路族議員城山の妹を妻に持つ三橋。
西田はおそらく三橋が中心となり、談合がはじまるだろうと予測します。
一方社のプロジェクトは進み、入札で勝つためコストカットを検討しますがなかなかうまくいきません。
すばやい判断力と取捨選択で仕事をこなす西田と、使いっ走りのような平太。
平太は業務課に自分が必要とされていないように思うのでした。
その上、転勤が決まった園田についてきてほしいと言われている萌に距離を置かれてしまいます。
そんな中、平太の母が倒れ、平太は母の元へ向かいます。
意識が朦朧とした母は三橋のことを話し、りんごの苗木を三橋に渡すように言うのでした。
東京へ戻った平太は三橋にりんごの苗木を渡します。
平太に心を許しているらしい三橋は、業界と談合についての考えを教えてくれます悪い人ではないと感じる平太は、三橋に触発され仕事に真面目に取り組むのでした。
しかしプロジェクトは難航。
西田は次の手を打つのでした。
【転】鉄の骨 のあらすじ③
営業で提案されたコストカット案を実行できていない業務課は、会議で突き上げられます。
しかし西田はコストダウンを前提とされる人件費や部材調達費を切り詰めるのではなく、新しい技術を使用し予定価格3割カットを見込んだ提案をします。
大幅なコスト削減で入札は取れると踏んでいましたが、三橋から地下鉄工事を大手真野建設に譲るよう話が来ます。
真野建設は経営が苦しく破綻すれば多大な失業者を生む懸念があると言われるのでした。
代わりに一年後、城山の筋であろう瀬戸内海の橋梁建設事業を約束するというのです。
三橋の言う通りにしろという社長に対し、尾形はプロジェクト続行を命令します。
再度三橋からアプローチがあり、橋梁の公共事業を別会社と分け合うよう言われます。
さすがに社長もその提案を飲めず、尾形に一任されることになりました。
尾形は関係者の誰とも会わず、呼ばれても平太を使いに出し条件を飲まない意思表示し続けていました。
西田は尾形が談合潰しを計画しているのではと考えます。
しかしだまし討ちのような形で尾形は三橋と会うことになり、条件を飲む形になりました。
一方地検は城山が談合に噛んでいるという確たる証拠を抑えるため、各銀行の入出金を調べたりしていますがこれと言うものに出会えません。
そんな中、関連していそうな会社たちがみな馬主になっていることに気がつきます。
価値のはっきりしない馬を通じて、マネーロンダリングをしていることがわかりました。
萌はニューヨークへいく園田についていくことにしていました。
それでも少し迷いを感じていた萌は、園田の母親と話し、自分の考えを改めることにしました。
平太の母親は狭心症で手術することが決まりました。
そして平太は三橋から、真野建設に受注を取らせるために調整された一松組の入札金額を聞きにいきます。
【結】鉄の骨 のあらすじ④
入札の日、会場では各社の入札が終わり、入札額が読み上げられていました。
しかし、一松組の入札額は三橋の言っていたものではありません。
当初予定していた一松組の入札額でした。
受注は一松組に決まります。
ざわつく中、突然東京地検特捜部がやってきて入札に来ていた人間たちは任意同行を求められます。
城山、三橋が談合で逮捕されたのです。
次々と関係者や同業他社の人間が逮捕され始める中、尾形は無罪放免、一松組は談合なしという結果が出されます。
入札結果も覆ることはなく、地下鉄の受注が決まったのです。
平太は検察に解放された後、待っていてくれたのは萌でした。
そして母の手術は成功したと伝えられました。
一松組にとってはハッピーエンド、そう思えましたが、西田はこれが全て尾形の作戦だったと言います。
どうしても地下鉄工事の入札をとりたかった尾形は、ありとあらゆる手段を講じました。
今回に限り尾形は談合の席には付かず、一社単独入札を行い、そして検察に内部告発を行なっていたと推理します。
西田の言葉を全てを知っていたであろう課長の兼松は否定しません。
平太は自分がそんな尾形の手駒として、三橋の懐に入るためだけにここへ来たことに気がつくのでした。
西田はフォローしますが、誰も平太を納得させるような言葉はありませんでした。
平太は永山から呼ばれて現場に戻りました。
駒としてでなく、平太自身を必要としてくれたのは永山です。
平太にはここが自分の居場所だと思えるのでした。
鉄の骨 を読んだ読書感想
ゼネコンの入札と談合をテーマにした経済ミステリーです。
入札の仕組みと、どうして談合が発生してしまうのかがわかりやすく描かれています。
作者得意の金の流れも多分に盛り込まれており、土木についての知識がなくても何がどうしてそうなるのかがきちんと理解できます。
一番の謎である尾形の考えが明かされると、主人公目線で考えるとスッキリはしないものの、業界の厳しさが伝わってきます。
作品を読めば、談合はゼネコンだけの問題ではないということも理解できるかと思います。
この物語に出てくるのは善人たちではありません。
登場人物の一人である西田は、自分たちを会社のために死ぬサラリーマンと揶揄しますが、全員が仕事に尽力しています。
会社に尽くし結果を出そうと努力しています。
それゆえに化かし合いになってしまう物悲しさが描かれています。
主人公平太は巻き込まれてしまったとも言えますが、同じ会社内でも全く違う仕事を経験できたことは今後現場でも役に立つでしょう。
仕事のやりがいについて今一度考えるきっかけになったとも言えます。
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