「銀行仕置人」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|池井戸潤

「銀行仕置人」

【ネタバレ有り】銀行仕置人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:池井戸潤 2008年1月に双葉社から出版

銀行仕置人の主要登場人物

黒部一石(くろべかずし)
関東シティ銀行の本店営業第三部の次長でエリートだったが、不良債権の責任を負わされ人事部付へ異動させられる。

立花鉄生(たちばなてつお)
関東シティ銀行常務取締役。阿木と結託して背任行為を行う。

阿木武光(あぎたけみつ)
東京デジタル通信社長。立花に協力し常務から社長へと昇進する。

英悦夫(はなぶさえつお)
関東シティ銀行人事部長。黒部と一緒に立花の不正を暴く。

北原有理(きたはらゆり)
関東シティ銀行渋谷支店の行員。後に黒部の部下として一緒に支店を回る。

銀行仕置人 の簡単なあらすじ

黒部一石は関東シティ銀行のエリートが集まる営業第三部の次長です。メガバンクである関東シティ銀行の次長といえば力が強く、中でも黒部は将来を有望視される若手実力派でした。しかし、出る杭は打たれるという諺のとおり当時企画部長であった立花から、巨額不良債権の責任を全て押し付けられ黒部は左遷させられてしまいます。その左遷先である人事部で冴えない毎日を送っていた黒部でしたが、ある日、人事部長から呼び出され立花の不正を暴くように命じられるのです。立花の不正に絡む関東シティ銀行の支店を訪れ、仕置人としてバッサバッサと悪者を切っていきます。

銀行仕置人 の起承転結

【起】銀行仕置人 のあらすじ①

仕置人誕生

関東シティ銀行営業第三部次長の黒部一石は、東京デジタル通信常務取締役の阿木武光から五百億円の融資を頼まれます。

阿木が申し入れたのは子会社として独立させる投資部門への直接融資でした。

黒部は東京通信の将来に明るさを見いだせず、さらに投資子会社への直接融資ということで難色を示します。

しかし、企画部長の立花に押し切られる形で、黒部は支援を明記した稟議書を作成しました。

結果として、関東シティ銀行は新設会社の東京デジタル投資に五百億円を支援、親会社から四百八十億円の返済を受け入れるということが決定します。

東京デジタル通信の阿木常務が社長へ、関東シティ銀行の立花が常取締役に昇進という人事異動があったころ、黒部は「横浜ワイヤレスが自己破産申請」という新聞記事を目にして驚愕します。

横浜ワイヤレスとは東京デジタル通信が三百億円も出資していた会社だったからです。

すぐに向かった東京デジタル投資では埒が明かず、黒部は親会社である東京デジタル通信の財務部長へ会いに行きます。

しかし、財務部長の林本から「私どもの責任ではなく、あなたの与信判断ミスが招いたこと」と言われてしまいます。

結局、巨額不良債権の責任を全て背負わされ人事部へと異動させられた黒部。

そんな黒部は、阿木が横浜ワイヤレスの破綻を知っていて、その焦げ付きを立花常務と結託して関東シティ銀行へ押し付けたという噂を耳にします。

阿木の元へ直談判に訪れる黒部でしたが警備員につまみ出されてしまいます。

次の日反省文を書いている黒部を、人事部長の英悦夫が呼び出しある命令を下します。

それは立花常務の不正を暴いてほしいというものでした。

「銀行仕置人」の誕生です。

【承】銀行仕置人 のあらすじ②

デジタルの魚

黒部は立花常務が貸金庫を借りている五反田支店へ、臨店指導という名目で向かいます。

面談を重ねるうち、黒部は小村という行員から柏田薬品への一億円の融資の回収を命じられているという相談を受けます。

業績の悪くない柏田薬品からの回収を命じ、逆に借金体質で安全性の高くないタカモト薬品に積極的に支援を行っている中北支店長に黒部は疑惑の目を向けます。

黒部は色々調べていくうちに、中北がタカモト薬品から三千万円の借金があることを暴いたのでした。

その日の夜、黒部と小村は金庫室内にいます。

小村がマスターキーで開けた立花常務の貸金庫の中には、デジタルフィッシュという未上場の会社の株券が入っていたのです。

次に黒部が向かったのは、デジタルフィッシュと取引のある渋谷支店でした。

デジタルフィッシュの融資担当者である北原有理と面談をしていると、株式会社創造の諸角という社長が怒鳴り込んできます。

元本割れしないと聞いた投資信託を、三千万円で購入したのに解約しようとしたら元本割れしている。

担当の大下に詰め寄ると「元本割れしないとは言っていない」と返答され怒っていたのです。

初めはシラをきった大下でしたが、元本割れをしないと虚偽の説明をしたのは橋爪支店長の指示であったと黒部に打ち明けます。

この話を聞いた諸角社長は橋爪支店長の万引き現場を押さえ、橋爪社長を破滅へと追い込みます。

そしてある夜、黒部は北原有理と食事を楽しんだ帰り道、人気のない道で二人組の男に襲われてしまうのでした。

【転】銀行仕置人 のあらすじ③

偽造株券

赤坂にあるレストランで立花と阿木は、黒部の入院の話をしています。

そこで阿木は山本金融研究所という経営コンサル会社の取引を立花に依頼しました。

まだ痛む体で黒部が向かったのは、立花から山本金融研究所が紹介された青山支店です。

驚くことに、黒部の部下として北原有理も同行しています。

稟議書をあげなければいけない川嶋から相談を受け、黒部と有理は山本金融研究所の決算書を見ていきます。

社員5人で年商は二十億。

しかし三社ある取引先のうち二社は倒産しており、倒産した一社は高原工業とう関東シティ銀行大森支店の取引先で、一億五千万円もの焦げ付きをだしています。

川嶋は山本金融研究所の実体が裏金融だとうことを調べあげ融資見送りの稟議書を書きますが、立花からも山本からも催促を受け焦った鷲尾支店長は他の行員に稟議書を書き直させます。

しかし、黒部の機転により融資部に回された稟議書は川嶋のものにすり替わっていたのです。

山本金融研究所への融資が否認され、怒り心頭の立花・阿木・山本。

その山本を訪ねた黒部は、ビルから出てきた二人を見て、自分を襲った二人組だと気づきます。

ある日、黒部は英からデジタルフィッシュの社長に横浜ワイヤレスの元専務の大沢が就任したと聞かされます。

そしてデジタルフィッシュ関連のクレームが入ったので難波支店へ向かってほしいとの命も受けました。

黒部達はクレームを入れてきた新田社長と会い、そこでデジタルフィッシュの偽造株券が出回っているという噂を聞きます。

偽造株券の話を知った阿木も、追加融資を条件に山本に調査を依頼するのですが、大沢から偽造株券は山本の仕業かもしれないという報告を受けるのでした。

【結】銀行仕置人 のあらすじ④

暴かれた癒着

今回、黒部と有理は新横浜支店で融資課長と株式会社カトウの稟議書を見ています。

デジタルフィッシュの偽造株券の出所は中平技研という会社で、このカトウという倒産した会社から受け取った株券だというのです。

売却が決まっているカトウの本社屋へ行った黒部達は、この不動産を仲介したのが山本であること・手数料として一億円を取っていることを知ります。

加藤社長は山本が裏で手を引く闇金からお金を借り、返せなくなったところNPO法人を名乗る諸井という人物に助けてもらいました。

しかし、実は山本と諸井はグルだったのです。

新横浜支店の応接室で不動産業者に成りすました山本が狭山に担保書類を渡すよう迫ったその時、黒部が現れ山本の悪事が明るみに出て不動産売買の取引は不成立に終わりました。

有理は山本の報復を心配しますが、黒部は先手を打ち自分を襲った山本の手下二人を傷害罪で逮捕させていました。

そして逃げていた山本は赤坂のシティホテルで諸井に殺されてしまいます。

そんなころ立花と阿木の元に一枚の告発状が届きます。

この告発をしたのは、デジタルフィッシュの社長の座を追われた大沢でした。

大沢は阿木によって殺されてしまいますが、大沢の妻が黒部に証拠となる株式譲渡書類を渡していたのです。

立花は黒部に条件を出し証拠を奪い返そうとしますが、黒部はその申し出を断ります。

そしてついに立花と阿木の癒着は暴かれ、警察の追及を受けることになったのです。

数日たったある日、黒部は頭取から「審査部次長」を命じられ、みごと現場復帰を果たしたのでした。

銀行仕置人 を読んだ読書感想

関東シティ銀行の座敷牢と呼ばれる部屋で、もくもくと名簿の修正をしている黒部が色々な支店へ出向き、悪い奴らを懲らしめていく勧善懲悪物語。

最終的にどうなるか大体予想がついていても、悪事を暴いていく爽快感から次々ページを読み進んでしまいました。

いくつものストーリーが絡み合っていて、最後まで面白く読めたと思います。

この作品を読んで感じたことは、「企業の歯車になるということは、なんて大変なことだろ」という事でした。

仕事が出来すぎては妬まれ、理不尽だと感じる扱いを受けても辞めるわけにもいきません。

主人公の黒部は行動力もあり正義感の強い好人物ですが、「銀行を腐らせるな」とい言う英も、なかなか魅力的な登場人物でした。

また、黒部と有理との恋愛関係までは至らないけれど、お互いに好意を持っている感じも好印象でした。

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