【ネタバレ有り】有頂天家族 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:森見登美彦 2010年8月に幻冬舎から出版
有頂天家族の主要登場人物
下鴨矢三郎
本作の主人公。下鴨総一郎の三男。狸。
赤玉先生
<如意ヶ岳薬師坊>の名を持つ大天狗。
弁天
赤玉先生の弟子で、人間の女性。
有頂天家族 の簡単なあらすじ
人間は街に暮らし、狸は地を這い、天狗は天空を翔る。「面白きことは良きことなり」矢三郎は父の残した言葉通りに楽しいことを求めて、京都の地を這う。京都を舞台に狸と天狗、そして人間が巻き起こす世紀の大騒動。
有頂天家族 の起承転結
【起】有頂天家族 のあらすじ①
下鴨総一郎の三男・矢三郎は女子高生の姿に化け、商店街で買った赤玉ポートワインなどを片手に、アパート「コーポ枡形」を訪れた。
四畳半のほどの部屋に住むのは大天狗のご老人・赤玉先生。
下鴨家一族に生まれた狸は、総じて赤玉先生の教えを乞うことになっています。
ほとんど家から出ない先生は、弟子の弁天が訪れないことに寂しそうにしていた。
「金曜倶楽部へ出かけてるにちがいない」金曜倶楽部と聞いて矢三郎は毛が逆立つ思いしぷるぷると体を振るわせました。
下鴨家にとって金曜倶楽部は嫌な縁のある倶楽部でした。
赤玉先生はあれやこれやと理由を付けて、弟子の弁天を引っ張て来るように言います。
金曜倶楽部などに出向きたくない矢三郎は、「耳掃除をしてさっさと寝てしまえ」と口汚く断ります。
「しばし待て。
今、手紙を書くとしよう」赤玉先生は「弁天弁天」と呟きながら想いを手紙に書きます。
今夜中に届けよと手紙を押し付けられた矢三郎は、弁天を探して京都の街を這いずり回ります。
【承】有頂天家族 のあらすじ②
五山送り火が行われる八月、狸は空飛ぶ納涼船にて夜の京都上空で騒ぐ。
山々に点る火を眺めながらのどんちゃん騒ぎが恒例となっていた。
送り火が迫っているというのに、矢三郎たち下鴨一族には、浮かべる納涼船がなかった。
前年の送り火の宵に繰り広げられた夷川家との不毛な合戦によって惜しくも失われてしまった。
矢三郎は送り火の納涼船の代わりに、赤玉先生の所有する『奥座敷』を借り受けようと考えた。
しかし、大天狗・<如意ヶ岳薬師坊>たる赤玉先生は、現を抜かす弟子の弁手にやってしまったと悪気もなく言う。
「喜ぶ顔が見たいからだ!」赤玉先生は愚か者めと矢三郎に叫ぶ。
矢三郎は人の子・弁天に『蔵屋敷』を借りるために時計台へと泣き虫な弟とやってきた。
鯨を待っているという弁天に『蔵屋敷』を貸してほしいと懇願すると、弁天は扇のように壊されては困ると返す。
「そうだわ!」何かを思いついた弁天は楽し気に手を打った。
「蔵屋敷を壊したなら、金曜倶楽部で座敷藝をやってもらうことにしましょう」
【転】有頂天家族 のあらすじ③
盆の五山送り火にて弁天を怒らせてしまった矢三郎は、京都の地を離れ大阪へと出稼ぎに行っていた。
ほとぼりが冷めるまでに三か月ほど要し、久しぶりに京都の地へと帰ってきたときには暦は十二月に差し掛かっていた。
朱硝子のストーブで暖をとっていた矢三郎の下に小柄な男の子がやってきた。
「兄ちゃん、助けておくれよ」弟の矢四郎は赤玉先生のお世話に手を焼いていた。
赤玉先生を煽てて銭湯へ連れいき、そろそろ上がろうかというときだった。
矢三郎たち兄弟の前に、従兄弟の夷川兄弟が率いる『夷川親衛隊』が現れた。
どうして下鴨総一郎は金曜倶楽部に掴まったのだろうと兄の金閣は下鴨兄弟に尋ねる。
下鴨総一郎が狸鍋にされた本当の真実を知っていると金閣は笑う。
「金曜倶楽部に捕まった日、夜更けまで誰かと一緒にお酒を呑んでいたらしい」誰だという矢一郎に、金閣はケラケラと声を上げて笑う。
「あんたの役立たずな弟さ。
珍皇寺の井戸にいる矢二郎だよ」
【結】有頂天家族 のあらすじ④
下鴨兄弟の母親が捕まったころ、兄弟それぞれも夷川親衛隊の陰謀によって囚われていました。
長男の矢一郎は母親とともに金曜倶楽部に、矢三郎は銀閣の化けた偽蕎麦屋の檻の中に、矢四郎は偽電気ブラン工場の倉庫に閉じ込められていた。
外で雷鳴が轟く度に、兄弟は母のことを想い、すぐ傍に駆けていけないことにもどかしさを感じていた。
暗い倉庫の中ですすり泣く矢四郎のことを、「矢四郎君、矢四郎君」と呼ぶ声があった。
僅かに開いた鉄扉の隙間から懐中電灯の光が矢四郎の顔を照らした。
「海星姉ちゃん」矢四郎は従姉で金閣・銀閣の妹、海星に助けを求めた。
海星は鍵が掛かっていて扉を開けることはできないと断られる。
しかし、隠し扉があるから探しなさいと海星は倉庫のどこかにある隠し扉の存在を教える。
海星に嗾けられるままに走った矢四郎は、珍皇寺の井戸に来ていた。
兄ちゃんと叫ぶ矢四郎に、蛙の姿の兄は何故母上の傍にいてあげないと叱る。
矢四郎はみんが捕まった事を話して、蛙に向かって偽電気ブランを垂らす。
「捲土重来!」朗らかな次兄の声が井戸の底から響いた。
有頂天家族 を読んだ読書感想
狸と天狗、そして人間が巻き起こす愉快な物語。
鬼にもちょっかいを出す矢三郎は、きっと生きているのが楽しくて仕方ないと思う。
赤玉先生の救いようがないほどの弁天への心酔と、我が儘は傍にいれば面倒だと思う。
もしも知り合いになるのなら、矢三郎がいい。
きっと見ているだけでも面白いと思う。
クズな金閣と銀閣の夷川兄弟に対して、妹の海星は実にいい子だ。
下鴨家の失脚しか考えていない夷川家の中で唯一の常識人だ。
次々と巻き起こるイベントに、読み進めていて飽きない。
個性豊かな登場人物が繰り広げる壮大で、感動的な物語。
早く次の物語が読みたくなる作品でした。
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