【ネタバレ有り】ホサナ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:町田康 2017年5月に講談社から出版
ホサナの主要登場人物
私(わたし)
物語の語り手。舵木親子と関わるうちに次々とトラブルに巻き込まれる。
舵木草子(かじきくさこ)
美しすぎるドッグトレーナーとして話題になる。
舵木祷子(かじきとうこ)
草子の母親。娘のマネージャーを務めるようになる。
日本平三平(にほんだいらさんぺい)
やり手の経営者。35歳。
ホサナ の簡単なあらすじ
交友関係の狭い「私」は、飼っている犬を遊ばせる場所をなかなか見つけることが出来ません。ある時に偶然にも知り合いになった女性に導かれて辿り着いたドッグランから、不条理な世界へと迷い込んでしまうのでした。
ホサナ の起承転結
【起】ホサナ のあらすじ①
私が飼っている犬はやたらと図体が大きく見境なしに飛びかかるために、他の愛犬家たちから疎まれていました。
そんな私と犬をドッグランに招待してくれたのは、舵木祷子という名前の不思議な女性です。
ドッグランに併設されているアウトドア施設ではバーベキューパーティーが開かれていて、彼女の取り巻きたちが多数詰めかけています。
元来の人見知りな性格のために会場の隅っこで所在無げにしている私に馴れ馴れしく話しかけてきたのは、日本平三平と名乗る男性です。
リサイクルショップからレストランにカフェまでを立ち上げて成功させている、35年間の自らの人生を得意げに語り出しました。
日本平から職業を聞かれた私でしたが、これと言って自慢出来ることはありません。
更に私がバーベキューの肉を日本平が連れている犬に与えようとすると、俄かに怒り出してしまいます。
その場のムードが険悪になっていく中でも、日本平はある相談事を打ち明けるのでした。
【承】ホサナ のあらすじ②
日本平は年間10万頭以上の犬が殺処分になっている現状に、常々胸を痛めていました。
無責任な飼い主やブリーダーたちから小さな命を守るために、ドッグシェルターを開設する自らの計画をひけらかします。
挙句の果てには知り合って間もない私に向かって、400万円もの寄付金を要求する始末です。
お酒が入っていることもあり乱闘騒ぎに発展すると、突如として私の犬が日本平に飛びかかってしまいました。
重傷を負った日本平は救急車で運ばれた先の病院で亡くなってしまい、このままだと私の犬は殺処分は免れません。
そんな窮地に陥った私に救いの手を差し伸べてきたのが、祷子とその娘である草子です。
彼女たちの証言次第で犬の運命が決まるために、私は言われるままに50万円を8回分割で振り込んで犬の保護活動に携わるようになります。
草子は犬たちと会話を出来たり意のままに操る力を秘めていて、行動を共にするうちに私自身も犬の心が分かるようになっていくのでした。
【転】ホサナ のあらすじ③
瞬く間に草子はカリスマドッグトレーナーとしてメディアに引っ張りだこになり、私は付き人に任命されてあちこちに同行していました。
祷子は次から次へと捨て犬を見つけて連れてくるために、私は自宅を売却して収用施設を兼ねた「日ノミココ事務所」を開設します。
貰い手がなかった犬たちも、草子の威光を借りれば引き取り先を見つけるのは訳ありません。
事務所は莫大な収益を生み続けていて私自身も毎月多額の報酬を受けとっているために、自腹を切った400万はすぐに元を取り返せそうです。
定期的に犬の譲渡会を行っていた日ノミココ事務所の次の目論みは、都心の野外アリーナと音楽堂を備える公園で犬1000頭のパレードを敢行することでした。
私に課せられた次なる役割は、当日のイベントのひとつである犬芝居の台本を書くことになります。
草子ほどではありませんが多少犬と意志疎通が出来る私は、舞台上で自由気ままに振る舞う犬たちを何とか手懐け本番を迎えます。
詰めかけた観客たちの前で幕が上がったその時に、会場全体が白い光に包まれました。
【結】ホサナ のあらすじ④
観客たちが次々と巨大な光の柱に呑み込まれていく中で、私は関係者専用の地下駐車場を経由して何とか会場を脱出しました。
柱は多くの生き物を一瞬にして消し去りましたが、道路や建物にはまるで被害を与えていません。
生き残った富裕層は地下に建設された都市優雅な日々を送り、その他大勢は地上でぼそぼそと暮らすようになります。
逃げる途中で離れ離れになってしまった犬を追って私がたどり着いたのは、「奥森」と呼ばれている不気味な虫と犬が生息しているエリアです。
虫の正体は娘の草子を守り抜くために自らの意志で変身した祷子で、犬たちのリーダーある領導犬こそが懐かしい私の犬でした。
草子と犬との再会を喜ぶ暇もなく、私は究極の二者択一を迫られます。
滅びゆくこの地を見捨てて犬と出帆するか、草子とここに残り死を待つか。私が選んだのは草子を射殺し苦しみから解放して、自らが犬になることです。
犬に変身した私は「私たちを救ってください」と記されたゴムボートに乗り込んで、海を漂って対岸を目指していくのでした。
ホサナ を読んだ読書感想
親から受け継いだ財産をチビチビと消費しながら、死んだように毎日を生きる主人公には呆れてしまいます。
バーベキューに招かれたことがきっかけになり、止まっていた人生が動き始めていく瞬間を感じました。
美しくも怪しげなドッグトレーナーとの出逢いによって、意外なほどのマネジメントや脚本執筆の才能を発揮していく様子がユーモアたっぷりです。
荒唐無稽なストーリー展開の中にも、人間の身勝手さに振り回されていく動物たちの怒りが込められていて考えさせられます。
全てを放り出したような不条理なラストには、自然との共生を目指す強いメッセージが伝わってきました。
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