【ネタバレ有り】Nのために のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:湊かなえ 2010年1月に東京創元社から出版
Nのためにの主要登場人物
杉下希美(すぎしたのぞみ)
K大学4年生(22歳)。学生時代「野バラ荘」というアパートに住んでおり、清掃会社でアルバイトをしている。
成瀬信司(なるせしんじ)
T大学4年生(22歳)。希美の高校の同級生。フレンチレストラン「シャルティエ・広田」でアルバイトをしている。
安藤望(あんどうのぞみ)
M商事営業部勤務(23歳)。学生時代、希美と同じアパートに住んでいた。希美に思いを寄せている。
西崎真人(にしざきまさと)
M大学4年生(24歳)。自称、作家。奈央子に思いを寄せる。
野口奈央子(のぐちなおこ)
安藤の上司の野口貴弘(42歳)の妻(29歳)。夫からDVを受け、それを真人に相談する。
Nのために の簡単なあらすじ
ある事件に居合わせた4人は警察から事情聴取を受けるが、裏付けも取れており、何も疑うところがなかった。しかし、それは全ては自分の大事な人の為に口裏を合わせて供述したのだ。この事件の真相は、そして、4人は誰の為に嘘をついたのか。
Nのために の起承転結
【起】Nのために のあらすじ①
望の上司である野口の妻、奈央子は流産してしまい、心と身体を病んでいた。
励まそうと野口と希美と望は、野口宅でパーティーを開いた。
事件はそこで起こったのである。
早めについた希美はいつものように野口の部屋で将棋の戦略を練っていた。
そこに花屋のふりをした西崎が奈央子を連れ去ろうと野口宅に乗り込んだ。
異変に気が付いた野口は部屋から出て、西崎に激昂した。
そして、止めに入った奈央子を誤って刺殺する。
次に西崎へと向かった野口は、反撃しようとした西崎に殺されてしまった。
望が遅れて野口宅についた頃には、野口と奈央子は既に死んでいた。
そして、警察が到着しその場に居合わせた希美と、西崎、遅れてきた望、そしてパーティーの食事を運んできたフレンチレストランのスタッフの成瀬に事情徴収をとった。
全員の供述に嘘はなく、真実の者だが、真相は全く異なるものだった。
ここにいた全員が自分の大切な「N」の為に嘘の証言をしていたのだ。
【承】Nのために のあらすじ②
1999年、瀬戸内海に浮かぶ小さな青景島の大きな白い家で希美は育った。
希美がいつものように帰宅すると、部屋の荷物が全て外に出されていた。
父親は余生を楽しむため、愛人とこの家で暮らすと言い、希美と弟の洋介、母親の由紀を山の中にある小さな家へと追い出した。
父親は毎月生活費として10万円振り込んでくれるが、このお金で1か月3人が暮らすのは厳しかった。
しかし、由紀は自分の置かれた立場が分からず、今までのように化粧品やバッグを買ってしまう。
由紀は未だに現実を受け止められずにいた。
弟の洋介が高校受験で本土の高校に行くことになった。
学費を父親に頼みに行くと、すんなり了承してもらえたが、希美には「女が大学に行っても遊ぶだけだ」と言って工面してもらえなかった。
新学期になり、希美は3年生になった、そこで、成瀬慎司と席が前後になる。
将棋が好きな2人はすぐに打ち解け、互いに相談をしながら支えあっていた。
成瀬の家は料亭を営んでいたが、経営が難しく閉店してしまう。
また、それを機に親は離婚してしまった。
そんな日、成瀬の料亭が放火された。
その火災を見ていた成瀬を希美が見つけ、疑いをかけられそうになった成瀬を希美は「ずっと一緒にいた」と、嘘をついたのであった。
それを機に希美と成瀬は距離を置き、2人で会うことはなかった。
その後も希美は新聞配達のアルバイトをして自分で大学の費用を貯めたのであった。
【転】Nのために のあらすじ③
上京した希美は「野バラ荘」というアパートに部屋を借りた。
そこで、1つ上の望と、2つ上の西崎と出会う。
ある日の台風がきっかけで3人は交流をもち、仲良くなる。
また、将棋をしたことがなっかた望は希美から将棋を教わった。
そんな日、希美たちが住むアパートは、一帯にマンション計画が持ち上がっており、大家の野原は土地の売却を迫られていた。
それを知った希美と西崎はアパートを守るため、資産家の野口喜一郎について調べた。
すると、野口喜一郎には息子がいた。
それが野口貴弘だ。
野口はボランティアで石垣島に訪れるという情報を得た希美は、望と共に野口とボランティアに参加した。
そこで、希美は野口と交流を持つことに成功したのだ。
また、アパートを売却せずに済んだ。
翌年、望は野口の会社に就職し、野口の部下となった。
将棋が好きな野口は、良く望と将棋の勝負をしていたが中々勝てず、希美に戦略を練ってもらっていた。
ある日、希美を訪ねてアパートに行った奈央子は西崎と出会う。
そこで惹かれあった2人は不倫関係になる。
奈央子は野口から日常的にDVを受けていることを相談する。
また、西崎も幼少期、母親からDVを受けていた。
野口に不倫関係がバレた奈央子は家に監禁されてしまう。
愛する奈央子を救いたいと思った西崎は、ある提案を希美にするのであった。
【結】Nのために のあらすじ④
希美は同窓会に参加するため、青景島へと戻った。
そこで、成瀬は現在、フレンチレストラン「シャルティエ・広田」でアルバイトをしていることを知った。
「シャルティエ・広田」は奈央子の好きなレストランだった。
そこで、希美は成瀬に西崎との計画に協力してもらうために連絡を取った。
「シャルティエ・広田」は出張サービスもしており、希美は「奈央子を元気づけたい」と野口に言い、パーティーを開いた。
そして、事件が起きたのだった。
しかし、4人が警察に話した供述とは違っていた。
パーティーが開かれると知った奈央子は西崎に花屋のフリをして、花を届けにきた時に連れ出してほしいと電話をした。
そして、パーティー当日、野口の部屋で将棋の戦略を希美と考えている隙に、奈央子を連れ出そうとした。
しかし、奈央子は「あの子を連れて行って」と言う、あの子とは希美のことであった。
将棋の為に野口とよく会っていた希美に夫を取られると思い、奈央子は西崎に連れ出してもらう為ここへ呼び出したのであった。
しかし、異変に気付いた野口は部屋から出てき、西崎に殴りにかかる。
それを止めようとした希美は近くにあった花瓶で野口に襲いかかるが、呆気なく突き飛ばされてしまう。
奈央子は、その希美の行動が夫を取られてしまうと思ったのか、奈央子自身で野口を包丁で刺殺したのだ。
そして、それを追うかのように奈央子は持っていた包丁で自殺した。
西崎は誰も殺していなかったが、奈央子を殺人犯にしたくないと言い、自ら罪を被ったのであった。
また、希美は望を巻き込みたくないと言い、望だけに開始時刻を遅らせて言った。
しかし、居合わせてしまった望と成瀬もまた、希美の為に口裏を合わせて事件の真相を隠したのであった。
4人は互いに、自分の大切な「N」の為に嘘の供述をしたのだ。
Nのために を読んだ読書感想
希美は望の為に、西崎は奈央子の為に。
そして、望と成瀬は、想いを寄せる希美の為に、やってはならない嘘の供述をしてしまいました。
物語の最後に、希美は癌宣告されており、だから仕事を辞めることになりますが、望と成瀬のどちらかを選んではいませんでした。
今回の事件は、望を巻き込みたくないからと、望の為に行動を起こしますが、高校生の時の成瀬の家の放火事件では、成瀬とずっと一緒にいたと警察に嘘をつきます。
希美は、過去でも現在でも大事な人の為に嘘をついたのです。
これが、正しいのかと言われれば、嘘の供述をすることは罪に値するので、間違ったことなのかもしれませんが、この物語を読んだ人は、誰も嘘をついた希美を、そして、他の3人を責めることはしないのではないかと思います。
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