ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち(三上延)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~

【ネタバレ有り】ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:三上延 2011年3月にアスキーメディアワークスから出版

ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たちの主要登場人物

篠川栞子(しのかわしおりこ)
「ビブリア古書堂」の店長。

五浦大輔(ごうらだいすけ)
大学卒業後も無職だったが栞子のお店でアルバイトを始める。

篠川文香(しのかわあやか)
栞子の妹。女子高生。

志田(しだ)
ホームレス。せどり屋で生計を立てる。

笠井(かさい)
志田の友人。あだ名は「男爵」でせどり屋。

ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち の簡単なあらすじ

鎌倉市内にひっそりと店を構える「ビブリア古書堂」の店主は、篠川栞子は古書に関する知識レベルは抜群ながらも異性とのコミュニケーション能力はからっきしな篠川栞子です。活字恐怖症で何かにつけて要領の悪い五浦大輔と共に、古書を巡る謎解きに挑んでいきます。

ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち の起承転結

【起】ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち のあらすじ①

夏目漱石「それから」

祖母・絹子の遺品整理をしていた五浦大輔は、彼女が生前大切にしていた漱石全集の第8巻・「それから」を発見しました。背表紙に記されれていた「夏目漱石 田中嘉雄様へ」サインがもしかしたら著者の直筆かもしれないという、一縷の期待を抱いて北鎌倉駅前の古本屋さん「ビブリア古書堂」を訪れます。店主の篠川栞子は現在足を怪我して入院中のために、店番をしていたのは彼女の妹で女子高校生の文香です。

入院先の大船総合病院の病室まで足を運ぶことになりましたが、栞子は極度の人見知りのようでお客である大輔と目を合わせて会話を交わすことさえ出来ません。しかし大輔が持ち込んだ本を手に取った途端に饒舌になり、一目見ただけでそこに隠されている事情を見抜きました。サインは偽物であること、絹子が若き日にとある男性と許されない関係を続けていたこと。栞子の卓越した洞察力に圧倒された大輔は、彼女からの申し出を受けてこのお店で働くことになるのでした。

【承】ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち のあらすじ②

小山清「落穂拾い」

入院中の栞子に代わって店番をしていた大輔は、志田という名前の鵜沼海岸の橋の下で寝泊まりするせどり屋からの依頼を受けました。

小山清の「落穂拾い・聖アンデルセン」という文庫本の初版を、見知らぬ女の子によって盗まれてしまったために取り返して欲しいとの事です。

現場で志田と待ち合わせていたもうひとりのせどり屋・笠井の話では、バス停の近くでハサミを探していたことと保冷剤の入った紙袋を抱えていたことが判明します。

病室でこれらの話を聞いただけで、例によって栞子は真相をあっさりと見抜いてしまいました。

少女は意中の相手に手作りのスイーツをプレゼントしようとしていたこと、ラッピング用のえんじ色のリボンが外れてしまったために「落穂拾い」についているスピンを切り取って代用したこと。

栞子の推理に圧倒された少女は全てを自白し、盗んだ本を大輔に伴われて志田の下へ返却しに行きます。

以来ふたりは、古書を通じて細やかな交流を続けているようです。

【転】ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち のあらすじ③

クジミン「論理学入門」

お店に現れた奇妙なお客さんについて相談するために、大輔は栞子の病室を訪れました。

色の暗いサングラスをかけていて右の目尻に傷痕が走り、ヴィノグラードフ・クジミンの「論理学入門」を売りに来た50代の後半くらいの男性です。

几帳面な立ち振舞いながらも、買い取り票に書かれた「坂口昌志」という名前は氏名欄から大きくはみ出しています。

更には坂口の妻と名乗る女性が電話をかけて来て、夫に代わって買い戻そうとしているようです。

本を手に取って眺めていた栞子は、「私本閲読許可証」というラベルから坂口の服役していた過去を見抜きます。

病室に夫婦を招いた栞子に促されて、坂口は妻に自らが視力を失いつつあることを告白しました。

出逢いのきっかけにもなった「論理学入門」を、坂口はいつまでも手元に置いておくことを決意します。

わだかまりが解けた夫婦を見送りつつ栞子が大輔に語り始めたのは、自身が2ヶ月前に巻き込まれたある1冊の稀覯本に纏わる事件です。

【結】ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち のあらすじ④

太宰治「晩年」

太宰治の初版本「晩年」は300万円以上の価値がありますが、彼女はどんな大金を積まれても手放すつもりはありません。

ある時に大庭葉三という、「晩年」の中の1編に登場する人物の名前を語る男が来店しました。

「晩年」を譲ってくれるよう懇願する大庭を栞子が丁重にお断りすると、その日の閉店後に近所の石段から突き落とされてしまいます。

2ヶ月前の決着をつけるために、大輔は「晩年」のレプリカをビブリア古書堂に展示して大庭を誘き寄せました。

お店を訪れた志田の話から、「男爵」こと笠井に関する意外な事実を聞きました。

「笠井」は梶山季之の小説から取った偽名であること、「晩年」の初版を全く知らないふりをしていること。

栞子の身に危機が迫っていることを知り病院に駆けつけますが、大庭は彼女を人質にして「晩年」を要求します。

病院の金庫に隠していた「晩年」に栞子が火を付けることによって、大葉はようやく観念して一件落着です。

後日栞子の元を訪ねた大輔は彼女がレプリカの「晩年」を燃やしたことを追及すると、「あなたは本を読む人じゃないから」とポロリとこぼします。

その一言がショックだった大輔はビブリア古書堂を退職してしまいますが、しばらくして姉を気遣う文香からの電話を受けました。

退院が決まった栞子と再会すると彼女は本物の「晩年」を差し出しますが、大輔は受け取ることはありません。

「晩年」について話して欲しいとお願いすると、栞子はいつものように延々と古書に纏わる蘊蓄を並べ立てるのでした。

ビブリア古書堂の事件手帖—栞子さんと奇妙な客人たち を読んだ読書感想

夏目漱石全集に収録されている「それから」、太宰治「晩年」の貴重な初版本。2冊の稀覯本に秘められている謎を追っていくうちに、現在と過去が重なり合っていく展開に引き込まれていきます。とある事情により本が読めない青年と、極度の人見知りながらも人一倍読書が大好きなヒロインとの微妙な距離感が味わい深かったです。不器用ながらもピュアなふたりの男女の関係を、そっと見守って上げたくなってしまいました。50年前の価値観や考え方によって引き裂かれてしまった、カップルの運命には胸が傷みます。

その一方では栞子と大輔たちの次の世代に受け継がれている、確かな絆が感動的です。50年の時を越えて明かされる真実には強く心を揺さぶられました。

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