著者:東野圭吾 2021年9月に文藝春秋から出版
透明な螺旋の主要登場人物
湯川学(ゆかわまなぶ)
帝都大学の物理学科教授。度々警察の捜査に協力している。
草薙俊平(くさなぎしゅんぺい)
警視庁捜査一課係長。湯川の大学の同級生。
内海薫(うつみかおる)
警視庁捜査一課所属の刑事。草薙の後輩で、湯川に何度も捜査協力をしてもらっている。
上辻亮太(うえつじりょうた)
フリーで映像制作の仕事をしている。房総沖にて遺体で発見された被害者。
島内園香(しまうちそのか)
上辻亮太の恋人。生花店勤務。
岡谷真紀(おかたにまき)
園香のサークル仲間で親友。
島内千鶴子(しまうちちづこ)
園香の母親。一年半前に病死。かつて児童養護施設にて勤務
アサヒ・ナナ(あさひ・なな)
絵本作家で、本名は松永奈江。
根岸秀美
銀座のクラブのママ
透明な螺旋 の簡単なあらすじ
南房総沖である男性の遺体が発見されます。
何者かによって銃で殺されたことが判明します。
警察の方で捜査をした結果、恋人の女性から行方不明届けが出ていた人物でした。
行方不明届けを出した恋人の島内園香に接触しようと試みるも、園香本人も行方不明だと分かります。
そこで共犯の可能性も信じ、彼女と深い交流があった絵本作家の松永奈江の元に向かいます。
探っていくと、ある意外な人物との接点が浮かび上がるのです。
透明な螺旋 の起承転結
【起】透明な螺旋 のあらすじ①
千葉の南房総沖で、ある男性の遺体が発見されます。
男性の身元を確認したところ、名前は上辻亮太だと判明します。
上辻の殺害について何らかの事情を知ってないかと、警察は恋人で同居人の島内園香の家を訪ねます。
ですが生活用品は持ち去られ、自ら失踪したことが判明してしまうのです。
何か手掛かりがないかと園香の職場である生花店にも足を運びますが休職中であること、それから連絡が取れなくなっていると言われてしまいます。
園香の行動から推測すると園香自身が犯人で、逃走しているのではないかと警察は睨みます。
園香に関して調べを進めていくうちに、園香の親友の真紀から貴重な証言が得られます。
園香は殺害時には自分と京都に旅行をしていた、失踪して頼れるのは「奈江」という人物だけだというのです。
さらに日頃から園香は恋人である上辻から暴力を振るわれていたのではないかと証言したのです。
貴重な証言が得られた警察は、早速「奈江」という人物を調べ始めます。
「奈江」という人物の本名は「松永奈江」、絵本作家をしているとのことです。
二人にどんな繋がりがあるのか、共犯の可能性は無いか確かめるため、草薙と内海は再度園香の自宅に行きます。
そこには奈江が手掛けたいくつかの絵本が。
共犯の可能性が高まっていったのです。
【承】透明な螺旋 のあらすじ②
警察は共犯の可能性を捨てきれないとして、松永奈江の周辺を調べ始めます。
すると松永奈江はかつて絵本を制作した際、湯川の文献を参考にしていたことが分かったのです。
湯川と知り合いなのかもしれないと草薙は、湯川の居る横須賀を訪ねます。
老いた両親の介護の手伝いで、横須賀の実家を訪れていたのです。
草薙が奈江と何か接点があるのかと問いただすと、接点は特にない、文献を参考にする際にメールでやり取りしただけだと言います。
何度も捜査に協力してもらっていることもあり、草薙は湯川に捜査に協力してほしいことを伝えました。
湯川はまだ容疑者ではないこと、自分も色々と忙しいと断ります。
ですが草薙から奈江の本名を聞かされると一転、捜査に協力すると言い出します。
湯川に捜査に協力してもらうことになり、内海と湯川は奈江の周辺を調べ始めます。
近所の人によると奈江は亡くなった旦那さんのスキー仲間が所有しているリゾートマンションによく出入りしているという証言を得ます。
二人が身を隠すのには最適だと判断し、リゾートマンションに向かうように内海は草薙に指示します。
リゾートマンションに到着した草薙でしたが、間一髪のところで二人を取り逃がしてしまうのです。
警察がリゾートマンションに向かっていることが筒抜けになっている、内通者が居るのではと草薙は愕然とします。
さらに内海と湯川は園香の母親が働いていた児童養護施設にも足を運びます。
園香の母親はこの養護施設の出身で、シングルマザーとして園香を育てていたことが分かります。
一方で上辻のスマホに残されていた発信履歴から、銀座のママである秀美が浮上してきます。
園香をこの店にスカウトしたかった、少し経つと上辻から連絡があり300万円の支度金を用意すれば考えても良いと返事が来たことを明かします。
こんな男と付き合っている園香には愛想を尽かし、スカウトするのは諦めたと打ち明けたのです。
【転】透明な螺旋 のあらすじ③
不自然な動きをする湯川を誘い、草薙は秀美の店に誘います。
何か手掛かりにならないか、不審な動きはしないかと湯川を誘い出したのです。
意味深な質問をしながら秀美に近付く湯川を不審に思ってい、湯川に内通者ではないかと問い詰めます。
すると「奈江と園香は犯人ではない、お前は秀美を疑っているのだろう?」と言われてしまいます。
何か知っているのかと問いただしても湯川は何も言わず、絶対に裏切らない、少しだけ待ってくれと頭を下げます。
草薙は湯川に分かったと返事をしますが、捜査員に湯川を尾行するように告げます。
湯川は秀美に「閉店後にバーでお待ちしています」と書きいた名刺を渡していました。
「あさかげ園」で画像掲載許諾の有無の抜き打ち調査があった、そんなことが出来るのは警察か探偵くらいだ、それを仕組んだのは秀美ではないかと湯川は問いかけます。
湯川が全ての真実を知っていると悟った秀美はどうしてそのような行動をしたのか、何があったのか湯川に秀美は打ち明けていきます。
【結】透明な螺旋 のあらすじ④
秀美は若い頃に幼い子供を児童養護施設に預けていました。
ところがある日、秀美は養護施設のホームページで自分が施設に子供を預けていたときに一緒に渡したぬいぐるみを持っている少女の画像を発見します。
探偵を雇い、その少女の周辺を調べさせたのです。
その少女は島内園香、母親は島内千鶴子と言います。
千鶴子も同じく養護施設の出身だと知り、これは自分の孫娘なのではと確信するのでした。
孫娘に会いたい一新で上辻に近付いた秀美は、写真のぬいぐるみのこと、母親のことを細かく聞き出します。
上辻はこれはいいチャンスだと思い、園香を使って金を巻き上げようとしたのです。
園香は持っていたぬいぐるみは他の子のもので秀美は祖母ではないかもしれないと思いながら、秀美と仲を深めることに。
もしかして騙しているのではないかと不安に思って上辻に言っても、取り合いません。
むしろ金を巻き上げるチャンスだ、養子縁組をしろと迫ります。
園香と親しくしていくと秀美は、上辻から暴力を振るわれていることを突き止めます。
何とか孫娘を守ろうと園香を旅行に行かせ、上辻を呼び出して殺したのです。
旅行から帰ってきた園香にもう何も心配しなくていいと声を掛けたことで、園香は秀美が上辻を殺したと確信します。
パニックに陥っていたその時、以前から親しくしていた奈江から連絡があったのです。
奈江もまた園香を守るために、一緒に逃走していました。
園香たちをリゾートマンションから逃したのは、もちろん湯川。
湯川は内海に奈江は実の母親だと打ち明けるのです。
自分のために人まで殺してしまった秀美に申し訳ない、真実を言うべきかと湯川に園香は尋ねますが、湯川は誰も幸せになれないから伝えるべきではないと助言するのです。
透明な螺旋 を読んだ読書感想
ガリレオシリーズには珍しく、物理学を題材にした事件ではありません。
どちらかと言えば人間模様を描き、人との繋がりをメインにした作品でした。
このような作風のガリレオは初めてだったので新鮮味があります。
湯川が様々な事件を経て人と関わりを持つようになり、少しずつ人間らしさを取り戻していった様子が伺えます。
出生の秘密にも触れ、今まで以上に湯川の人間らしさを垣間見られて嬉しかったです。
知らない方が良い真実なんて、この世には数え切れないくらいあるのだと痛感させられる作品でもありました。
人は秘密を抱え、嘘をつく。
でも誰かを思う気持ちはどんな人でも持っている。
そんな希望を見出してくれた物語でもありました。
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