「回廊亭殺人事件」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

回廊亭殺人事件

著者:東野圭吾 1994年11月に光文社から出版

回廊亭殺人事件の主要登場人物

桐生枝梨子(きりゅうえりこ)
本作の主人公。半年前に殺された恋人の復讐のため、老婆に化けて回廊亭を訪れる。

一ヶ原高顕(いちがはらたかあき)
実業家。故人。莫大な遺産についての遺言書を回廊亭で公表するよう指示していた。

一ヶ原蒼介(いちがはらそうすけ)
高顕の弟。大学教授。

一ヶ原直之(いちがはらなおゆき)
高顕の異母弟で、高顕の跡を継いでいる。なかなかの慧眼の持ち主。

一ヶ原紀代美(いちがはらきよみ)
高顕の義妹。尊大な女性。

回廊亭殺人事件 の簡単なあらすじ

半年前に心中事件があって休業中の旅館・回廊亭で、莫大な資産を持つ一ヶ原高顕の遺言状が公開されます。

回廊亭には一ヶ原の一族と、一人の老婆が招かれていました。

半年前にここで恋人を失い大火傷を負った桐生枝梨子は、老婆・本間菊代に化け、回廊亭に入り込みます。

彼女の目的は、一族の中にいるであろう犯人を見つけ出して復讐を遂げること。

そのために半年前の真相を探ろうと試みます。

しかし行動を起こしたとき、相手はすでに部屋で殺されていました。

一体誰が殺人犯なのか、そして枝梨子が真に復讐すべき相手は誰なのか。

警察の目をかいくぐり目的を果たすことはできるのか。

復讐者視点で描かれる長編推理小説です。

回廊亭殺人事件 の起承転結

【起】回廊亭殺人事件 のあらすじ①

一ヶ原一族と復讐者

32歳の桐生枝梨子は70歳になる老婆、本間菊代に変装し、一ヶ原高顕の四十九日に遺言書の公開が行われる回廊亭を訪れます。

半年前、高顕の秘書として一ヶ原の一族らと共に回廊亭に宿泊していた枝梨子は、寝ていたところを襲われ、その後の火事で顔と背中に酷い火傷を負い、同時に恋人のジローを失いました。

枝梨子のいた「いの壱」の部屋では服毒死した里中二郎が発見されており、警察は里中が枝梨子と無理心中しようとしたものと結論付けました。

しかし枝梨子は里中二郎は殺されたのだと確信していました。

一ヶ原の関係者の中に犯人がいると考えた枝梨子は復讐のため自殺を偽装して身をくらまし、本間菊代になりすまして犯人を探し出そうとしているのです。

翌日の遺言書公開にそなえて、回廊亭に半年前の面々が揃います。

高顕の弟の蒼介と直之、妹の曜子、義妹の紀代美、さらに蒼介、曜子、紀代美の子どもである健彦、加奈江、由香。

首尾よく菊代として乗り込んだ枝梨子は、桐生枝梨子は菊代に告発の手紙を託していた、高顕の遺言と共に明日発表すると告げ、一同に手紙を見せます。

この中に犯人がいるならば、告発を防ぐために手紙を盗みに来るだろうと考えたのです。

【承】回廊亭殺人事件 のあらすじ②

予想外の事件

その夜、枕元に手紙を置き、ビデオカメラを設置して眠ったふりをしていると、誰かが手紙を盗んでいきました。

ビデオを再生してみると、そこに映っていたのは一ヶ原由香。

どこか腑に落ちないような気がしつつも復讐を果たそうと由香の部屋に向かうと、布団の中で由香はすでに殺されていました。

手紙は部屋に見当たりません。

ダイイングメッセージのようなものを見つけた枝梨子はそれを消し、靴下のまま外に出て池を飛び越え部屋に逃げ帰りました。

翌朝、由香の遺体が発見され、警察が呼ばれます。

この日高顕の遺言書を公開する予定だった古木弁護士と、助手の鯵沢弘美もやってきました。

警察が事情聴取を進める間、枝梨子は一体誰が由香を殺したのかと思案します。

菊代として事情聴取を受け、手紙が無くなっていることが発覚すると、曜子がこれは遺産目当ての犯行ではないか、半年前の心中事件も実は仕組まれたもので今回も同一犯なのではないかと言い出します。

実際に半年前の事件も高顕の遺産が関わる要素があったことを、枝梨子は知っていました。

【転】回廊亭殺人事件 のあらすじ③

里中二郎のこと、進む捜査

里中二郎は、高顕の生き別れの息子でした。

高顕は遺言書をつくるにあたって、息子を探してほしいと枝梨子に頼んでいたのです。

孤児院を調べていくうちに浮かび上がってきたのが里中二郎でした。

彼は初め、高顕に会うことを拒みました。

枝梨子は誰にも彼のことを報告しないまま何度か会い、父親が一ヶ原高顕であることも伝えていました。

そして里中が突然枝梨子のマンションを訪れ、恋人になったのです。

器量が悪くそれまで恋人などできたことのなかった枝梨子には夢のような時間でした。

彼のためなら死んでもいいとさえ思っていました。

そんな悲しい記憶を思い返しつつ、枝梨子は真相を探ります。

警察は池の近くに残された足跡を発見し、それが靴を履いていないものであることから内部犯を疑っているようでした。

由香の部屋に落ちていた髪を採取したと聞き、白髪のかつらを被っている枝梨子はヒヤリとします。

警察の前では菊代に化け続けるのも限界があるように感じられます。

紀代美から話を聞き、枝梨子は由香が直之のことを愛していたのだと確信します。

そこから導かれるのは、直之が半年前の犯人で、それを知っていた由香が彼のために手紙を盗んだということです。

ならば、復讐の相手は直之になります。

【結】回廊亭殺人事件 のあらすじ④

真の復讐相手

枝梨子が直之を殺す機会を伺っていると、警察の動きが慌ただしくなります。

由香の部屋のガラスの外側から、健彦の指紋が見つかったのです。

健彦は、由香の部屋から物音が聞こえたので様子を見に行ったのだと言います。

由香を好いていた彼は、由香と直之に何かあったのではと疑ったようです。

そして彼によって直之は事件の夜部屋から出ていなかったことがわかり、枝梨子は混乱します。

では、復讐を果たすべき相手は誰なのか。

警察が採取した髪には身元不明のものがあり、それは間違いなく枝梨子本人のもので、警察に正体を暴かれるのも時間の問題でした。

部屋に戻り熟考した枝梨子は真相に思い至り、夜中に犯人を呼び出します。

やってきた小林真穂を刺し殺し、枝梨子は復讐の半分を終えました。

殺すべき人物はもうひとり。

その相手を翌日殺す決心を固めます。

翌朝、警察は内部犯と断定し捜査を進めます。

本間菊代が偽物であることを看破されたその時、枝梨子の仕掛けによってガス爆発が起こります。

建物が燃えていくなか「いの壱」の部屋で枝梨子は鯵沢弘美と対峙します。

鯵沢は里中二郎のふりをして枝梨子に近づき、小林真穂と共謀して枝梨子と里中を殺し、遺産を奪おうとしていたのでした。

燃え盛る部屋で今度こそ枝梨子を殺そうとする鯵沢にしがみつき、枝梨子は隠し持っていたガソリンを自分たちにふりかけました。

回廊亭殺人事件 を読んだ読書感想

まず、老婆に化けた復讐者という視点が斬新で面白かったです。

復讐の矛先が次々ぶれていくところがやや短慮にも思えますが、デキる女の激情という感じで面白く読めました。

外見にコンプレックスを持ち仕事に生きてきた枝梨子がやっと出会えた最愛の人を奪われた、という復讐に至る過程が丁寧に描かれているので、つい枝梨子を応援するような気持ちにさせられました。

ラストで、ずっと素性を偽ってきた枝梨子が同じくずっと素性を偽ってきた相手に思いを遂げるという構成が見事でした。

どうしてもすっきりとはいきませんが良い終わり方だったと思います。

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