著者:太田紫織 2017年8月にKADOKAWAから出版
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白の主要登場人物
九条櫻子(くじょうさくらこ)
ヒロイン。骨を愛して研究対象とする。小食だが骨格は立派。
館脇正太郎(たてわきしょうたろう)
修学旅行を控えている高校2年生。そろそろ受験と本格的に向き合う時期。
館脇篤志(たてわきあつし)
正太郎の兄で工学を専攻する大学生。手先が器用で機械の修理も得意。
西尾(にしお)
櫻子が尊敬する郷土博物館の元館長。現在は札幌で介護生活。
吉峰榮美(よしみねえいみ)
西尾の助手。必要最低限の会話しかせず消息は不明。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白 の簡単なあらすじ
都内でひとり暮らしをしている館脇篤志は久しぶりに帰郷して、弟の正太郎に九条櫻子を加えて泊りがけでドライブに行きます。
道中で骨の標本展立ち寄ってのんびりとするつもりでしたが、本物の人骨を発見して大騒ぎに。
3人は力を合わせて真相究明に乗り出し標本をすり替えた西尾と、彼を愛しながら結ばれることのなかった吉峰榮美へとたどり着くのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白 の起承転結
【起】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白 のあらすじ①
東京の大学に通っていて1年近く会っていなかった館脇正太郎の兄、篤志が9月中旬の3連休に北海道旭川市の実家へ帰ってきました。
母親は予定が入っているためにふたりで2泊ほど、行き先は道内限定で正太郎にお任せ、車は用意しているので旅費を自己負担できるなら友だちを誘ってもいいとのこと。
前々から九条櫻子が足寄郡でクジラの全身標本を見たいと言っていたのを思い出して声をかけると、すんなりとメンバーが決まります。
当日に初めて車中で顔を合わせたふたりでしたが、簡単な自己紹介の後には会話が続きません。
足寄動物化石館では天井からつり上げられたマッコウクジラに大興奮の櫻子でしたが、篤志の方はホエールウォッチングをしたかったと不満そうです。
せっかく櫻子が予約してくれた網走湖畔の高級ホテルにも篤志は居心地が悪そうで、ついには兄弟ケンカにまで発展しそうに。
明日の行き先はこのホテルからそう遠くない場所にあるという「網走・ひとのれきし館」、楽しい旅になることを祈るばかりです。
【承】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白 のあらすじ②
この博物館では「300年前のロミオとジュリエット」というあおり文句で、男女の白骨模型が常設ブースに展示されていました。
違う集落の衣類を身にまとったままで折り重なるように能取岬で発掘されたので、おそらくは悲恋の末に心中をしたのでしょう。
展示ケースの前に立っただけでレプリカではなく本物の人骨であることに気が付いた櫻子、大慌てで学芸員を呼びにいく篤志と正太郎。
かつてここで館長を務めていた西尾は認知症が進行しているために、退職してしまったそうです。
その西尾から教えを受けながらここのコーナーを担当した吉峰榮美という女性も交通事故で亡くなったらしく、他に詳しい事情が分かる人はいません。
客足に影響があるためにくれぐれも内密にと念を押すスタッフから、櫻子は榮美の住所を聞き出すことに成功しました。
小さくて古めかしいアパートには吉峰一家と親しくしていた佐久間という高齢女性が住んでいて、名物のべこ餅をごちそうしてくれながら当時の出来事を語り始めます。
【転】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白 のあらすじ③
お酒を飲んでは妻子に乱暴なことをしていたという一家の父親、榮美が能取岬から車で転落した件に関係しているのではと佐久間は疑っていました。
工業科の学生でエンジニアを目指している篤志の話では、素人がブレーキに細工をするのは困難だとのこと。
自分の知らない分野の知識を理路整然と説明する様子を目の当たりにして、櫻子も篤志のことを見直したようです。
フラトマリにある別荘で隠居中だという西尾のところまで、嫌々ながらも篤志も送迎してくれます。
出迎えてくれたのは40歳くらいかと思われる訪問ヘルパー、櫻子が「西尾先生」と呼ぶからには相当に博識な人物だったようですが年のせいか昔のことは思い出せません。
結婚をしていない上に偏屈なところもある西尾ともうまくいっているヘルパーを見て、櫻子はこの人の正体が転落死したと思われていた榮美と見抜きます。
父の暴力に耐え兼ねて殺害してしまった榮美、遺体の処理を済ませてから自らの命を絶った母。
両親の遺骨を抱いて後を追うつもりだった榮美を引き留め証拠隠滅に手を貸したのが、孤独な老学者として人生の最期のパートナーを探していた西尾です。
【結】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白 のあらすじ④
自分たちこそがロミオとジュリエットだったと告白した榮美は、櫻子の運転で近くの警察署に自首に行きました。
ひと足先にホテルに戻った正太郎たちでしたが、豪華すぎる客室は館脇家の身の丈に合わないと篤は提案をします。
前日の夜にバーカウンターで知り合ったふたり組、年金で慎ましやかに暮らしていて年に1度の旅行が何よりもの楽しみだそうです。
そんな老夫婦と部屋を交換してあげた兄弟、夕食は上品な会席料理から安くておいしいバイキングに。
食事の最中に大きな手で正太郎の頭をわしづかみするいたずら好きなところは、幼い頃から少しも変わっていません。
法医学の道に進みたいという正太郎に一定の理解を示してくれて、上京する場合には引っ越しにも協力してくれるそうです。
ただひとつだけ心配なのは櫻子と行動する度に事件に巻き込まれること、「死」への抵抗感だけは簡単には拭えません。
最終日にようやく打ち解けて会話を交わせるようになった篤志と櫻子、いつか生きたクジラを見に行くことを約束するのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 12 ジュリエットの告白 を読んだ読書感想
てっきり一人子かと思っていた館脇正太郎、この巻で突如としてお兄さんが登場して驚かれる方も多いのではないでしょうか。
プラモデルやミニ四駆を組み立てるのが大好きだという篤志、標本マニアの櫻子さんと初対面で意気投合して… などと都合よくはいかないようです。
リフレッシュのための休暇が気まずい3人旅に、さらには目的地に着いた途端に謎解きのスタート。
遠い町のマイナーな博物館であろうとも、正太郎櫻子さんの行く先に死体が埋まっているのはお約束ですね。
網走のロミオとジュリエットに切なくなりつつも、離れていても熱い兄弟愛で結ばれている篤志と正太郎に安心できました。
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