著者:太田紫織 2017年3月にKADOKAWAから出版
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡の主要登場人物
九条櫻子(くじょうさくらこ)
ヒロイン。科学的な根拠を大切にする標本士。魚や肉が苦手で甘いものが大好物。
館脇正太郎(たてわきしょうたろう)
櫻子と親しい高校生。2年の半ばだが進学か就職か決めていない。
沢梅(さわうめ)
九条家のお手伝いさん。高齢だがマメに働く。
磯崎齋(いそざきいつき)
正太郎のクラスと生物の授業を受け持つ。教師を辞めて庭園を経営するのが夢。
千代田薔子(ちよだしょうこ)
園芸が趣味で磯崎と交流がある。亡夫が画家だったため絵画にも詳しい。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡 の簡単なあらすじ
突如として行方が分からなくなってしまった九条櫻子を探しに行ったのは、館脇正太郎と担任の先生・磯崎です。
長年に渡って仕えてきた沢梅を巻き込んで自殺をしてしまったのでは、と心配しましたが取り越し苦労で済みます。
健康状態に不安がある梅はしばらく休養することが決まって、正太郎も少しずつ将来について考え始めていくのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡 の起承転結
【起】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡 のあらすじ①
九条櫻子と力を合わせて平成のリジー・ボーデン事件(前巻「八月のまぼろし」参照)を解決して旭川駅で別れてから、1カ月近くになりましたが館脇正太郎のもとに連絡はありません。
九条邸のカギを預かっているのは千代田薔子で、彼女のいとこでもあり櫻子の婚約者でもある在原直江も何も聞いていません。
合カギを使ってお屋敷の中を調べてみると、机の中にパスポートが置きっ放しになっていたので海外旅行ではないでしょう。
クローゼットに閉まってあったはずの長距離用スーツケースと暖炉の上の家族写真がないこと、この家の家事・掃除の一切を引き受けてきた沢梅も見当たらないこと。
梅はかなりの年配で、何よりも彼女になにかあった時に櫻子の心のよりどころがなくなってしまうのが不安でした。
薔子が庭で丹精をこめて育てたバラの花を見にきているのは、正太郎が1年生の時からお世話になっている磯崎齋先生。
「帰ってくるのも戻ってこないのも本人の自由」としながらも、愛車のミニクーパーを用意してくれます。
【承】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡 のあらすじ②
梅が温泉に行きたがっていたことを思い出した3人は、旭川市内から車で1時間程度の層雲峡に向かってみました。
途中で立ち寄ってみたのは当麻町の「パピヨンシャトー」、館内には多くのチョウチョの標本やモニュメントが展示されています。
薔子が気になったのはヒメウスバシロチョウを描いた1枚の絵、花房が櫻子につけたあだ名です。
施設の職員によると2〜3週間ほど前に、背が高く若い女性と小柄な高齢女性のふたり組が寄贈してくれたとのこと。
これから層雲峡に行くということで、櫻子と梅に間違いありません。
愛別インターで乗り換えて川上層雲峡インターで降りて、切り立った崖の谷あいの温泉街を進んでいくとログハウスのような1軒のカフェが。
チーズケーキが人気メニューお店で、スイーツに目がない櫻子ならば絶対に食べて行ったでしょう。
店員の話ではふたりは国道39号線を白水川方面に歩いていったそうですが、この先にはずいぶん前に廃業となった旅館しかありません。
【転】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡 のあらすじ③
廃旅館の正面玄関口は閉ざされていましたが、横に回ったガラス張りの食堂から中に入ることができました。
床一面に大量のほこりが積もっていて、その上にはうっすらとふた組の足跡が浮かび上がっています。
2階の客室フロアにまで続いていて、1番奥にある和室タイプの部屋で発見されたのは2体の遺体です。
ひとりは首をつったワンピースの女性、床に倒れているもうひとりの着物の女性の首に刻まれているのは索条痕。
常日頃から櫻子に教わっている通りに硬直具合を調べてみると、亡くなってから3〜4日程度といったところでしょう。
2週間前にこの地にやって来た櫻子と梅でないことは明らかですが、このまま放置しておく訳にはいきません。
110番通報で駆け付けてきた警察官には、不審者でないことを説明するのにひと苦労です。
初めてひとりで遺体検分をして自信が湧いてきた正太郎は、磯崎に医学部に入って医者を目指したいと打ち明けてみます。
今の成績だと相当勉強しないと難しいそうで、標本士かガーデナーになることを勧められてしまいました。
【結】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡 のあらすじ④
例の旅館で死亡したふたりについては、数日後のニュースで報道されました。
自らも病を抱えながら祖母の介護をしていた20代の女性が、思い出の地で無理心中を図ったと判明しています。
インタビューに答えていたのは福祉サービスセンターのヘルパー、困っているなら助けを求めてほしかったとのことです。
「助けを求めてほしかった」という点に関しては正太郎としてもまったく同じで、久しぶりにいつもの喫茶店で会った櫻子に悪びれた様子はありません。
しばらく湯治をしていた梅は症状が改善しないために、大がかりな検査と簡単な手術を受けたとのこと。
札幌に入院中の梅は、流行のプリンではなく老舗の和菓子をお土産にほしいと元気にしています。
本人は1日も早く退院して櫻子のお世話をしたいそうでしたが、年齢的にもそう遠くない日にお別れの日がやってくるでしょう。
櫻子と外の世界とのあいだに横たわる深い溝を埋めるてきた梅、彼女がいなくなった時には正太郎がその役割を引き受けるつもりです。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 11 蝶の足跡 を読んだ読書感想
数々の難事件を解き明かしてきた館脇正太郎と九条櫻子の名コンビ、ついに解散の危機が迫っているのかとハラハラさせられました。
たどり着いた場所は良質な温泉と絶景スポットで有名な、北の観光地・層雲峡。
遠くに飛び去ったチョウチョを追いかける小旅行とも言えますが、蝶形骨を集める殺人鬼もこのシリーズには登場しているために油断はできません。
生活苦から身内を手にかけてしまうエピソードなど、社会問題も取り上げられていて考えさせられます。
ラストにはひとまずの再会にほっとさせられつつ、長らくモラトリアムだった正太郎にもひとつの転機になるような期待感が高まってきますね。
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