【ネタバレ有り】オー!ファーザー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:伊坂幸太郎 2010年3月に新潮社から出版
オー!ファーザーの主要登場人物
由紀夫(ゆきお)
高校生の主人公。やや特殊な過程で育ったため、厭世的な面もある。父親四人から色々なことを教わっている。
鷹(たか)
由紀夫の父1。ギャンブラーで顔が広い。
悟(さとる)
由紀夫の父2。大学教授。温厚で知的だがややドライ。
葵(あおい)
由紀夫の父3。バーを経営しているイケメン。
勲(いさお)
由紀夫の父4。肉体派中学教師。
オー!ファーザー の簡単なあらすじ
高校生の由紀夫は6人家族。母親と4人の父親と暮らしています。少し変わった家庭ですが、タイプの違う父親に囲まれて色々なことを教えてもらい、年頃でうっとおしく思いながらもそれぞれの父親に感謝と愛情を感じている由紀夫。そんな由紀夫の暮らす街で知事選にまつわる事件が発生します。伊坂幸太郎第一紀の最後の作品です。
オー!ファーザー の起承転結
【起】オー!ファーザー のあらすじ①
高校生の由紀夫は6人家族。
母親知代と由紀夫、そして父親が4人です。
といっても由紀夫の母知代が同時期に付き合っていた男が4人で、本当は誰か一人だけが由紀夫の父親のはずです。
ギャンブラーの鷹、大学の先生の悟、中学教師の勲、バーを経営するイケメンの葵、その4人はみな自分が由紀夫の父親だと思っています。
DNA検査などではっきりするはずですが、父親たちはそれに消極的。
生まれた時から母親一人と父親四人の生活を続けています。
出張が多い母親と、家にいることが多い父親たちに守られ由紀夫は生活してきました。
またしばらく母親は出張です。
そんな家族の秘密がクラスメートの多恵子にバレてしまいます。
それ以降由紀夫は多恵子にまとわりつかれるようになります。
そんな多恵子に誘われて、由紀夫のクラスメイトで不登校をしている小宮山の家に行ってみることになりました。
野球部で2年ながらも選手として選ばれている小宮山がいじめられているとも思えません。
インターホン越しの小宮山の母親にやんわり追い返されてしまいました。
翌日も小宮山は当然来る様子がありません。
その日の帰り道、知らない同世代の粗暴そうで牛蒡のような男が由紀夫を探しに学校へやってきます。
由紀夫がなぜ彼が自分を連れていくのか見当がつきませんが、牛蒡男が案内する先には由紀夫の中学時代の友人鱒二が彼の仲間に囲まれていました。
。
鱒二は牛蒡男たちが万引きをしているのを咎めたため因縁をつけられ、金もない鱒二は誰か一人友達の名前を言えと迫られ由紀夫のことを教えたというのです。
友人を差し出すなとげんなりした由紀夫ですが、たまたま通りかかった鷹の機転で牛蒡男一味から逃れることができました。
【承】オー!ファーザー のあらすじ②
由紀夫と多恵子は鷹に誘われてドッグレースに行くことになりました。
この街ではドッグレースが公営ギャンブルとして認められているのです。
3人となぜかついてきた葵がドッグレースへ行くと、この街のギャンブルを全て仕切っている富田林に会います。
鷹と富田林は知り合いです。
富田林は一見普通の野球が大好きなおじさんですが黒い世界の住人です。
彼は最近溺愛する息子の名を語ったオレオレ詐欺に引っかかってしまったようです。
そのドッグレースで由紀夫は不可解な出来事を見ます。
富田林の連れの男が派手めな女性といちゃついている隙にニット帽の男にカバンをすり替えられてしまったのです。
思わず一人でニット帽の男に付けていきます。
カバンはロッカーに置き捨てられますが、ニット帽の男は手ぶらでバスに乗り込みます。
男を追う由紀夫でしたが、バスの途中で牛蒡男に追いかけられている鱒二に遭遇します。
鱒二と逃げるためバスを降り男を見失ってしまうのでした。
気になる話としてそのことを父親たちに相談すると、葵がその派手めの女性を知っており、彼女のことを調べてくれることになりました。
彼女は下田梅子という名前でした。
そのせいなのか、はたまた知らないところで恨みを買ったのか、由紀夫の家がめちゃめちゃに荒らされる事件がおきます。
勲が家にいましたが、侵入者捕まえることはできませんでした。
そんな由紀夫の前に再び鱒二を探している牛蒡男が現れます。
牛蒡男は鱒二に運び屋をやってくれたら付きまといは辞めると言います。
牛蒡男は富田林の孫請けです。
良くないと思い止める由紀夫を無視して鱒二はOKしてしまいます。
その帰り道二人は今川焼きの屋台を出している鱒二の父親に遭遇します。
牛蒡男の件を言わないでほしいと言われます。
鱒二の父親は元プロスポーツ選手だったようですが詳しいことは語りません。
今は男手一人で育ててくれている父に鱒二は心配をかけたくないようでした。
【転】オー!ファーザー のあらすじ③
知事選が控えニュースも一色です。
そこにあのカバンが取られた男が映っていました。
知事選の候補者である白井と赤羽。
男は赤羽の陣営の人間で野々村と言うのでした。
クリーンな白井にダーティーな赤羽、というイメージを持たれている上に、赤羽は最近情報を盗まれてしまったのです。
下田梅子の家がわかり葵と由紀夫は向かいますが、彼女は連れ去られていました。
その時鱒二からの電話で呼び出されます。
葵と別れ鱒二の元へ向かうと、堅気ではない古谷という男も一緒でした。
鱒二は牛蒡男との約束を破り富田林の荷物を運ばなかったのです。
由紀夫は電話で富田林に許してもらえないかと頼みますが断られます。
それでも鱒二を置いて逃げられなず古谷に殴りかかります。
古谷はその道のプロ。
逃げる時間も稼げません。
その時パトカーのサイレンが聞こえてきました。
古谷と牛蒡男は由紀夫たちを置いて逃げ去ります。
誰かが通報したのかと思えば、彼らの集まっていた近所で心中した男女が発見されたのでした。
それは野々村と下田梅子でした。
父親たちに迎えにきてもらい、鱒二のことと心中事件のことを話す由紀夫。
鱒二のことはなかなか難しそうです。
そんな由紀夫の元へ、富田林が鱒二を探しに直接やってきます。
鱒二のことを見逃すよう頼む鷹。
富田林に振り込め詐欺の犯人を見つけると約束し話をつけました。
由紀夫は学校帰りに、小宮山のマンションに寄ることにしました。
後輩たちから小宮山が良くないバイトをしていと聞き心配になったのです。
その良くないバイトとはもしや富田林が騙された件なのではないかと危惧します。
由紀夫は再度小宮山の家を訪ねます。
母親に招き入れられ目に入ったのは拘束されている小宮山と40代の男女と若い男です。
男たちはライフルを持っています。
小宮山は引きこもっていたので無く、彼らに軟禁されていたのだと由紀夫は気がつきました。
由紀夫もその3人組に捕まってしまいます。
【結】オー!ファーザー のあらすじ④
彼らは小宮山家に用は無く、白井を撃ち殺すためにここに籠城しているのでした。
向かいのマンショには白井が通う愛人の部屋があるのです。
犯人たちはやることを終えれば全員解放すると言います。
由紀夫は家に電話をして親に心配させないようにしろと言われます。
鷹が出た電話で、由紀夫は不自然なことは言いませんでした。
最後に「お父さん」と鷹に言いました。
軟禁されしばらくがたちましたが助けが来る気配はありません。
小宮山家の隣人がおすそ分けをしにきたぐらいです。
多恵子から電話をあり、クラスメートがクイズ番組に出ると言います。
うるさそうな彼女の雰囲気に再度の連絡を危惧した犯人グループはテレビをつけます。
そこに出ていたのはクラスメートではなく悟でした。
悟は勝ち抜き見事最後の一人になります。
すると応援席が移り他の父親たちが映りました。
勲がテレビに映ると腕を動かします。
手旗信号です。
再びテレビに悟が映ると、明日息子を迎えに行くと言います。
由紀夫はそれらが自分に向けてのメッセージだと気がつきました。
テレビが終わると多恵子が電話をかけてきます。
犯人たちは迷惑そうでしたが、多恵子が何か気がつくのを怖れ電話に出るのを許可します。
由紀夫は彼女がメッセージの答えを求めているのだと理解し、犯人の数と武器の数を伝えます。
翌日小宮山家の隣人が醤油を貸して欲しいとやってきます。
葵が隣人の佐藤さんを篭絡し協力してもらったのでした。
父親たちの急襲で由紀夫たちは救出されました。
主犯は40代の男女で、白井に弄ばれた娘が自殺してしまったのを恨んでいたのです。
由紀夫たちの救出には鱒二が頼んだから富田林も協力してくれたという父親たち。
その言葉に由紀夫は戸惑います。
鱒二の父親は、昔野球選手で富田林の憧れの選手だったのでした。
携帯を忘れ連絡が取れなかった母親が帰宅します。
いなかった間のことを聞く母親に由紀夫は何事もなかったと伝えるのでした。
オー!ファーザー を読んだ読書感想
ちょっと変かなと思わせる設定と、現実からほんの一歩離れたような設定が得意な作者らしい一冊です。
漫画的でもあるキャラクターたちと、全てが伏線とも言える丁寧な文章は作者ならではです。
物語の収束のため、余すところなく回収されていく伏線たち。
あれもこれも最後に回収されていきます。
大団円に向かう物語で、読んでいて気持ちがいいです。
できすぎとも思える人間性豊かな父親たちが魅力的です。
作品のボリュームよりもエピソードが満載ですが、冗長な小話がありません。
しかし満載のエピソードは作者の得意とする押し付けがましくないゆるさと教訓、人間の本質を解く言葉が詰まっています。
その上一見すると重要でなさそうなのに何もかも重要という作りになっています。
一つ一つのエピソードは日常らしい普通っぽさがあり、生活の一片一片として生きています。
そしてそれらががきちんと繋がり積み重なるところが私たちの過ごす日常として実感できます。
そこにほんの少し現実とリアリティの融合があり、突飛な設定も生きてくるように思います。
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