「新選組戦記 中」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小前亮

新選組戦記 中 小前亮

著者:小前亮 2020年1月に小峰書店から出版

新選組戦記 中の主要登場人物

村田市之助(むらたいちのすけ)
近藤勇を師匠にもつ本作の主人公。十四歳。新選組隊士として扱ってもらえない事を不満に思う。

虎太郎(こたろう)
桂小五郎を師匠にもつ少年。市之助の友人にして敵となる。尊王攘夷派の人間。

近藤勇(こんどういさみ)
儀を重んじ、武士であることを貫く男。新選組の局長。

土方歳三(ひじかたとしぞう)
新選組副長。絶世の美男子。近藤勇に忠誠を誓っており、近藤勇のために戦う男。

坂本龍馬(さかもとりょうま)
勝海舟の下で学んでいたというおおらかな性格の男。市之助に拳銃を渡す。

新選組戦記 中 の簡単なあらすじ

伊東甲子太郎の入隊により、新選組は二つの思想に分断されてしまいます。

やがて伊東甲子太郎は御陵衛士と名乗り新選組から分隊していきました。

その中には藤堂平助と斎藤一も含まれていました。

新選組は幕府のため戦を繰り広げますが、敗走は続き、戦況は厳しさを増していく一方です。

そんな戦況に置かれ、村田市之助は戦う意味を見失ったまま、新選組と共に江戸へ向かうのでした。

新選組戦記 中 の起承転結

【起】新選組戦記 中 のあらすじ①

親友にして宿敵

元治二年。

新選組発足からおよそ二年が経ち、伊東甲子太郎が入隊しましたが、思想の違いから仲は良好ではありません。

伊東甲子太郎は天皇を中心に政治を進めようと、近藤勇は幕府を中心に政治を進めようと考えているのです。

村田市之助は沖田総司から近藤勇と土方歳三が出会った経緯を聞く一方、藤堂平助に伊東甲子太郎の人柄を尋ねました。

尊王の思想を持つのは伊東甲子太郎だけでなく、藤堂平助、山南敬助も尊王思想を持っています。

伊東甲子太郎は山南敬助を手中におさめようとするものの、体調のすぐれない山南敬助は自分を卑下し、新選組での自身の役割を見失い、突如屯所を後にしてしまいます。

しかし大津で沖田総司に連れ戻され、自分の意志で切腹を選び命を絶ちました。

そんなある日、村田市之助の元に果たし状が届きます。

相手は虎太郎です。

村田市之助と虎太郎は六条河原で戦いますが、剣豪となった虎太郎に負けてしまい、沖田総司に助けられるのでした。

【承】新選組戦記 中 のあらすじ②

分断された誠

虎太郎との戦いで深手を負った村田市之助は試衛館時代の仲間たちに心配されながら傷を癒します。

一方で虎太郎が長州の人間と知り、伊東甲子太郎や武田観柳斎などは不信を募らせ市之助に詰め寄ります。

近藤勇は長州と交渉するため、幕府使節の一員として伊東甲子太郎、武田観柳斎らと共に屯所を後にします。

近藤勇が居ない分、土方歳三は周囲に厳しく接しました。

慶応二年、長州への処分が決定しましたが、長州は処分を拒否。

しかしこの時坂本龍馬の仲介により、薩長同盟が結ばれていたのでした。

ある日、村田市之助が鴨川の河原で投石の練習をしていると、河岸に居た男が武士に追われ、市之助に助けを求めてきました。

その男は坂本龍馬であり、投石で追ってを退けた市之助にお礼として拳銃を渡し、去って行くのでした。

六月七日、第二次長州戦闘が開始されましたが、戦意の低い幕府軍は敗北を続けましたが、そんな七月二十日、十四代将軍徳川家茂が亡くなったと知らされます。

継いで、十五代将軍に徳川慶喜が選ばれました。

しかし社会は不安定になり、新選組内でも伊東甲子太郎の意見に耳を貸す者が増えていました。

藤堂平助も、永倉新八に尊攘思想を説くようになりました。

近藤派、伊東派に別れた新選組の中で、武田観柳斎も伊東派につこうと考え、村田市之助が所持する拳銃を盗もうとします。

が、市之助の機転により阻止され、新選組から抜け出し行方をくらませます。

一方伊東甲子太郎は近藤勇に分隊を提案しました。

慶応二年崩御された孝明天皇の陵墓を守る衛士、御陵衛士となるためです。

そして慶応三年、伊東甲子太郎は藤堂平助と、間者として送り込んだ斎藤一を含む十三人を連れ、新選組屯所を後にしたのでした。

【転】新選組戦記 中 のあらすじ③

追う者、去る者

 伊東甲子太郎は藤堂平助や、間者として紛れた斎藤一以下十数名を率いて新選組から分隊しました。

以来、御陵衛士と名乗って活動しています。

朝顔の咲く頃、村田市之助は新選組から脱走して行方をくらませていた武田観柳斎の手下の浪士たちに誘拐されてしまいます。

しかし、土方歳三、永倉新八、沖田総司によって救出されますが、沖田総司は労咳により思うように戦う事ができないままでした。

慶応三年十月十四日、十五代将軍徳川慶喜は大政奉還を宣言し敵味方双方を驚かせました。

翌日十五日には坂本龍馬が暗殺され、新選組が疑われてしまいますが、新選組には別の問題が発生していました。

間者として潜入していた斎藤一から、伊東甲子太郎が近藤勇の殺害を計画しているという情報がもたらされたのです。

近藤勇、土方歳三は伊東甲子太郎殺害の実行を永倉新八に任せると同時に、藤堂平助の生死も永倉新八に託しました。

永倉新八は藤堂平助を逃がそうとしますが、気が高ぶった隊士が反射的に殺してしまい、藤堂平助は命を落としました。

御陵衛士七人のうち、四人を討ち逃してしまいましたが、近藤勇は責める事はしませんでした。

【結】新選組戦記 中 のあらすじ④

忠義の行く先

 藤堂平助を失い、永倉新八はふさぎ込んだままでした。

村田市之助はそんな永倉新八を励まします。

無口な斎藤一も永倉新八の様子を見にやってきますが、二人は彼が立ち直るのを待つことに決めるのでした。

慶応三年十二月九日、王政復古の大号令が発せられましたが、幕府も会津公も諦めませんでした。

近藤勇は隊士たちを励まし、将軍に続き屯所を大坂の伏見奉行所へと移しました。

その折、沖田総司の忘れ物を持ってくるため村田市之助は京にある近藤勇の別宅へ向かいます。

別宅は御陵衛士の残党が荒らした後でした。

村田市之助はそれを知らせるべく屯所へ走る途中、二条城からの帰りだという近藤勇と隊士三人と合流し、事情を話します。

その直後、近藤勇が御陵衛士の残党に撃たれてしまいました。

慶応四年一月二日、将軍徳川慶喜の命で幕府軍は鳥羽街道、伏見街道に別れて京を目指し進軍を開始します。

新選組も同行しましたが、薩摩、長州が街道を塞ぎ、戦闘となります。

新選組は本陣へ向けて奇襲を仕掛けますが、幕府軍の援護が届かず引き返していきます。

一度後退した幕府軍は宇治川で再度布陣するはずでしたが、幕府軍の指揮官が逃げ出し、統率力を失ってしまいます。

方針を決められずにいるうちに薩摩ら新政府軍は朝廷から錦の御旗をもらいました。

これにより多くの藩がこぞって新政府軍に味方してしまいます。

幕府軍も新選組も追い込まれ、慶応四年一月三日、戊辰戦争は新政府軍の勝利となりました。

そして大坂に退却した一行は将軍徳川慶喜が逃げたという衝撃的な報告を受けるのでした。

混乱する村田市之助は近藤勇から諭されますが更に混乱してしまいます。

新選組は将軍を追って江戸へ向かいました。

村田市之助も同行しますが、船には労咳の沖田総司も加わっています。

しかし船の雰囲気は明るく、活気がありました。

新選組が江戸に到着したのは一月も半ばの頃でした。

新選組戦記 中 を読んだ読書感想

 新選組という組織が大きく変動していく描写のひとつひとつに登場人物の志が表れていて、読み手にもひしひしと伝わってきました。

村田市之助と虎太郎は上巻から一変して相手の言葉に耳を傾け合っていて、成長している事を感じました。

一方、親友を失った永倉新八や、仲の良かった山南敬助を失った沖田総司が傷心から立ち直って刀を握る姿には尊敬の思いが湧いてきます。

読み進めるうちに時代の荒波の中、たとえ心のうちでは揺れ動くとも態度や言葉には一切出さずに忠義を貫く武士の姿に胸をうたれました。

戊辰戦争を経験し、戦う意味、理由に迷う市之助が今後新選組とどのように歩んでいくのか、先が気になってしまう巻です。

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