著者:宮沢賢治 2011年5月に新潮社から出版
注文の多い料理店の主要登場人物
2人の紳士(ふたりのしんし)
本作の主人公の2人。イギリス兵隊のような恰好をし、猟をするため山に来た。命を物と見なし、軽視している。なんでもお金で解決しようとする。
2匹の犬(2匹のいぬ)
紳士たちが飼っている白熊のような猟犬。
山猫たち(やまねこたち)
西洋料理店山猫軒に紳士たちを誘い出し、彼らを食べようとする。
注文の多い料理店 の簡単なあらすじ
山奥に二人の紳士が猟をしに猟犬を連れてやってきました。
案内役の男とはぐれ、犬に死なれた二人は帰り道を探しますが、見つかりません。
その時、一軒の西洋料理店を発見します。
店内にはいくつもの扉と注意書きがあり、2人はそれに従いながら進んでいきます。
しかし注意書きは二人を食べるための口実です。
気が付くと前の扉の鍵穴にはこちらを見つめる目玉があり、紳士たちを呼んでいます。
紳士たちは自分たちが食べられることを悟り、顔がくしゃくしゃになりました。
突如、後ろの扉から死んだはずの犬たちが前の扉に突進すると屋敷は消え去り、2人は案内役の男と帰りました。
ただ、くしゃくしゃの顔は元にもどりませんでした。
注文の多い料理店 の起承転結
【起】注文の多い料理店 のあらすじ①
ある山奥に二人の紳士がやってきました。
二人はすっかりイギリスの兵隊のような恰好をし、ぴかぴかする銃を携え、白熊のような猟犬を2匹連れていました。
それはだいぶ山奥の、木の葉がかさかさしたところだったので紳士たちは案内役の男とはぐれてしまします。
そのうえ獲物が一匹も獲れずにいました。
紳士たちは獲物が居ない山に文句を言い、早くなんでもいいから獲物が出てきてほしい。
鹿の横っ腹に銃弾をタンタアーンと撃ち込みたいと愚痴をこぼします。
しかし、行けども行けども獲物は見つからず、ただ時間が過ぎていくだけです。
それは物凄い山奥でした。
あまりの凄さに連れてきた白熊のような2匹の犬がいっしょにめまいを起こして、しばらく唸ったあと、泡を吹いてしんでしまいます。
犬が死んだというのに二人は金銭的損害にしか頓着しません。
風がどうと吹き、草や木の葉、木が鳴り出しました。
途方に暮れた二人は引き返そうとしますが、帰り道の見当がつきません。
お腹がすきすぎて横っ腹が痛い。
もう歩きたくないなと紳士たちはざわざわと鳴るすすきのなかで言いました。
そのとき後ろを振り返ると一軒の立派な西洋風の屋敷を見つけます。
【承】注文の多い料理店 のあらすじ②
玄関にはRESTAURANT WILDCAT HOUSE 西洋料理店山猫軒という札がかかっていました。
玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んであり、実に立派なもんです。
こんな場所にレストランがあることを不思議に思う2人ですが、お腹が空いていたので中に入るため、ガラスの開き戸の前に立ちました。
そこにはこう書かれていました。
「どなたもどうかお入りください。
決してご遠慮えんりょはありません」2人はひどく喜び、早速戸を押して、中へ入りました。
そこはすぐ廊下になっており、そのガラス戸の裏側には、こうありました。
「ことにふとったお方や若いお方は、大歓迎だいかんげいいたします」2人は大歓迎ということで大喜びです。
進んだ先の廊下には水色のペンキ塗りの扉がありました。
その上には黄色の文字で「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」とありました。
2人は思い思いに解釈し、次の扉を開けに進みます。
裏側には「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
の文字が。
2人は思い思いに解釈し、早く椅子に座りたくて先へ進みます。
扉を開けると脇に鏡がかけてあり、したには長い柄のついたブラシが置いてありました。
扉には「お客さまがた、ここで髪かみをきちんとして、それからはきものの泥どろを落してください。」
と赤い字でありました。
2人は従い先へ進みます。
次の部屋では鉄砲と弾を、次の部屋では帽子と外套を、次の部屋では金物類を置きました。
また次の部屋にはクリームを塗ってくださいとありました。
2人は従います。
「料理はすぐできます」と書かれた扉を開けると香水が置いてありました。
2人は香水を頭にふりかけ次に進みます。
「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。
お気の毒でした。
もうこれだけです。
どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさんよくもみ込んでください。」
と次の扉の裏にあるのをみた2人はさすがにぎょっとします。
【転】注文の多い料理店 のあらすじ③
沢山の注文というのは、向こうがこっちへしているんだよ。
片方の紳士が言いました。
もう一人の紳士も考えは同じです。
この西洋料理店では来た人に料理を出すのではなく、来た人を料理にして食べるんだよ。
と、口にしたところで2人は自分たちが料理の材料であることをようやく悟りました。
がたがた震えだしものも言えない状態です。
逃げなければ。
そう思い後ろの扉を押そうとします。
一生懸命、押せども押せども扉はこれっぽっちも動いてくれません。
2人は何度も試しますが扉は開けられません。
押すのを諦めた2人は奥のほうにまだ扉があることに気が付きました。
一枚扉には大きなカギ穴が2つつき、銀色のホークとナイフの形が切り出してあります。
勿論文字もありました。
そこにはこう書かれていました。
「いや、わざわざご苦労です。
大へん結構にできました。
さあさあおなかにおはいりください。」
おまけに大きなカギ穴にはこちらをのぞいているきょろきょろとした二つの青い眼玉がありました。
紳士たちはがたがた震え、うわぁ、うわぁ泣き出しました。
すると扉の中から、紳士たちを呼ぶ声がします。
紳士たちはただ泣き叫ぶことしかできませんでした。
顔は恐怖で紙屑のようにくしゃくしゃです。
【結】注文の多い料理店 のあらすじ④
紳士たちを呼ぶ声はやむことがありません。
「お皿は洗ってありますよ。
菜っ葉も塩でよくもんでおきました。
菜っ葉とあなたたちをうまくあわせて、お皿に盛りつけるだけです。
はやくいらっしゃい。」
紳士たちは泣いているばかりですが、なおも声は続きます。
「いらっしゃい。
いらっしゃい。
そんなに泣いては折角のクリームが流れてしまうじゃありませんか。
大丈夫。
後で変えを持ってきます。
早くいらっしゃい。
親方はお客様を心待ちにしています。
ナイフをもって、舌なめずりしながらですよ。」
2人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
そのとき後ろの扉から突如、あの泡をふきながら死んだはずの大きな白熊のような犬が二匹、わん、わん、ぐゎあと吠えながら部屋の中に飛び込んできました。
するとガキ穴の眼玉はたちまちなくなり、犬どもはしばらく部屋の中をくるくるまわっていました。
また、ひと声わん。
と高く吠えると、突然次の扉に突進しました。
がたりと戸が開き、犬たちは吸い込まれるように中へ入っていきました。
まっくらな扉のおくから「にゃあお、くゎあ、ごろごろ」という声とがさがさという音がしました。
見ると辺りには枝にぶら下がった上着や根元に落ちている財布がありました。
風がどうと吹き、草や木の葉、木が鳴り出しました。
犬が唸って戻ってきました。
そして後ろからは身の帽子をかぶった猟師がやってきました。
紳士たちは俄かに元気づき、やっと安心しました。
途中で山鳥を買って東京に帰ったふたりですが、いくらお湯で洗ってもふたりの顔はもうもとに戻りませんでした。
注文の多い料理店 を読んだ読書感想
宮沢賢治は注文の多い料理店という作品を通じて、小学校の頃に誰もが親しんだ作家です。
教科書に載っており、授業で学んだのをよく覚えています。
小学生から大人になった現在でも楽しめる稀有な作品です。
さて、この作品の紳士たちは命を物として見なしています。
山の凄さに泡を吹いて倒れた犬に頓着せず、気にするのは金銭的損害です。
加えて、はやく獲物の横っ腹に銃弾を撃ち込みたいと発言しています。
そんな彼らの会話を聞いたのでしょうか。
山猫たちは紳士らを屋敷に誘います。
おかげで紳士の顔はくしゃくしゃになり、もうもとには戻らなくなってしまいました。
この作品は命を大切にしない人への警告なのかもしれません。
コメント
とても面白い