ご遺体(イーヴリン・ウォー)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ご遺体

ご遺体

【ネタバレ有り】ご遺体 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:イーヴリン・ウォー 2013年3月に光文社から出版

ご遺体の主要登場人物

デニス・バーロウ(でにす・ばーろう)
ペット用葬儀社勤務。過去に詩集を出版。

エイメ・タナトジェノス(えいめ・たなとじぇのす)
大手葬儀会社「囁きの園」に勤務するコスメ係

ミスター・ジョイボーイ(みすたー・じょいぼーい)
「囁きの園」の遺体処理係。エイメの上司

フランク(ふらんく)
デニスの友人。自ら命を絶つ。

ご遺体 の簡単なあらすじ

デニス・バーロウは友人のフランクの葬儀の手配を任され、ハリウッドに本拠地を置く業界最大手の「囁きの園」を訪れました。やがてデニスは遺体のメイクアップを専門とするエイメ・タナトジェノスに心惹かれていきます。エイメの同僚で腕利きの遺体処理師ミスター・ジョイボーイも彼女に想いを寄せていたために、ふたりの間で恋の駆け引きが繰り広げられていくのでした。

ご遺体 の起承転結

【起】ご遺体 のあらすじ①

突然の友人の死

イギリス国内で生まれ育ったデニス・バーロウは第二次世界大戦中に赴任した先のイタリアで詩集を発表して、一時は新進気鋭の詩人として名の知れた存在でした。

除隊となったその後は鳴かず飛ばずでしたが文学者への道に未練たらたらで、カリフォルニア州にあるペット専用の葬儀社「幸福の園」に就職しつつ密かに執筆活動を続けています。

ペットと言っても犬や猫だけではなく、カナリアからチンパンジーに果ては熊まで実に多種多様です。

仕事をそつなくこなしてハリウッドのセレブたちに巧みに取り入り、パーティーにも顔を出しつつ人脈作りにも余念がありません。

そんなデニスの知り合いの中でも大物中の大物、フランクの自殺騒ぎが起こるのでした。

【承】ご遺体 のあらすじ②

美しきおくりびと

本国のイギリスではナイトの爵位を授与されていたフランクの告別式は、アメリカ人たちにアピールするために盛大に執り行われなければなりません。

遺体の第一発見者となり葬儀の手配を任されたデニスが向かった先は、西海岸屈指の葬儀会社「囁きの園」です。

フランクの死因は縊死になり、その死に顔には恐ろしい形相が焼き付いていました。

そんな悲惨な状況を化粧師のエイメ・タナトジェノスは、安らかな表情に変えてしまいます。

メイクアップの技術は勿論のこと、彼女のルックスや立ち振る舞いにデニスはたちまち夢中です。

美容師を志しながらも挫折したエイメと、詩人に憧れながらもペット葬儀社で燻っているデニスとの間に不思議な一体感が芽生えるのでした。

【転】ご遺体 のあらすじ③

詩人崩れと遺体処理係との間で揺れ動くヒロイン

職場の花であるエイメに密かに心寄せているのは、デニスばかりではありません。

エイメの働いている部署のチーフを務めている、ミスター・ジョイボーイもその内の1人です。

遺体処理の手際に関してはプロフェッショナルの域に達しながらも、会社の同僚との関係性や女性スタッフからの評判は今ひとつでした。

近頃ではアプローチがあからさまになっていく一方で、エイメは若干うんざりしています。

一方ではフランクの1件がきっかけになって、デニスとは文通をするほどの仲です。

見た目が冴えない中年の上司よりもハンサムな青年に好感を抱いていき、手紙の中に書かれていたオリジナルの詩が決めてとなってデニスを生涯のパートナーに選択するのでした。

【結】ご遺体 のあらすじ④

愛する人を自らの手でお見送り

ふたりの婚約を逆恨みしたジョイボーイは、デニスがこれまでにエイメに送った自作の詩の数々が全て盗作であることを告げ口しました。

騙されていたことにショックを受けたエイメはデニスとの婚約を解消して、ジョイボーイとの婚約を発表したその日に青酸カリを自らの腕に注射してしまいます。

ジョイボーイが自殺に追い込んだフィアンセの遺体の後始末を泣きついた先は、デニスの仕事場「幸福の谷」です。

アメリカへの未練が無くなったデニスはイギリス行きのチケットと1000ドルをジョイボーイに要求して、エイメの亡骸を極秘裏に火葬します。

煉瓦造りの火葬炉から立ち昇る煙を眺めながら、デニスは本当に自分で作った詩をエイメに捧げるのでした。

ご遺体 を読んだ読書感想

イギリスの由緒正しい家柄の青年が、フロンティアを象徴するアメリカ大陸の西海岸で感じている孤独が味わい深かったです。

遠く離れた故郷へのノスタルジックな感傷を押し殺しながら、自らを異国の地に溶け込ませている後ろ姿には一抹の哀愁が漂っていました。

名門オックスフォード大学に合格しながらも、放蕩三昧の末に中退して職を転々とした若き日の著者の姿を思い浮かべてしまいます。

新しい世界での生活に憧れながら、現実とのギャップに打ちのめされていく主人公の挫折感が心に残りました。

詩人としても中途半端で葬儀会社の仕事に対してもいまいち誇りを持つことが出来なかったデニスが、初めて愛する人のために身体を張るシーンが感動的でした。

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