「白痴」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|坂口安吾

「白痴」

著者:坂口安吾 1949年1月に新潮社から出版

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白痴の主要登場人物

伊沢(いざわ)
27歳。文化映画の演出家の男。大学卒業後は新聞記者だった。

白痴の女(はくちのおんな)
25、6歳。品が良く、能面のような美しい顔立ち。うまく話せず、おどおどしている。

気違い(きちがい)
30歳前後。白痴の女の夫。資産がある。家畜に石をぶつけたり、突き回したりする。

白痴 の簡単なあらすじ

戦時中のある日、映画演出家の伊沢の家の押し入れに、突然、隣に住む人妻の白痴の女が隠れていました。

一緒に暮らすこととなり、二人の奇妙な生活が始まりました。

やがて東京大空襲が起き、男は女を連れて戦火から逃げ惑います。

何とか二人は助かり、女の様子に伊沢は感動さえ覚えました。

しかし、その直後に小さないびき声を立てて眠る女を見て「豚」のようだと思います。

ただ、女を置き去りにしていくことさえ面倒で、2人の将来について考えを巡らせるのでした。

白痴 の起承転結

【起】白痴 のあらすじ①

白痴の女が家の押し入れに

人間と豚と犬と鶏とアヒルが住んでいる家がありました。

物置のような建物で、階下には仕立屋の主人の夫婦、天井裏には母と娘が間借りしていていました。

伊沢はこの母屋から分離した小屋を借りて住んでいました。

伊沢は大学を卒業後、新聞記者となり、続いて文化映画の演出家になった男で27歳でした。

彼の隣人は気違いで、相当の資産があるのに狭い通りのどん底を選んで家を建てました。

この気違いは30歳前後で、母親と25、6歳の妻がいます。

母親は強度のヒステリーで、妻は白痴でした。

四国遍路に旅立ったときに妻と出あいました。

気違いは好男子で、白痴の妻も品が良く、美しい顔立ちでした。

二人並べて眺めると美男と美女で教養のある二人としか見えません。

妻はおとなしく、その言葉はよく聞き取れませんでした。

伊沢はある晩、遅く帰ってきました。

部屋の様子がおかしかったので怪しく思って押し入れを開けると、積み重ねた布団の横に白痴の女が隠れていました。

口の中でつぶやくようにしか物を言いません。

伊沢はどうにでもなるがいいと思い、女を一晩、保護することにしました。

二つの寝床を敷いて女を寝かせましたが、電灯を消して一、二分で女は急に起き上がり、部屋の片隅にうずくまります。

寝床に戻して電気を消してもまた起きてしまいます。

三度目には押し入れの戸を開けて中に入ってしまいました。

何もしないのに被害者のように振る舞う女に伊沢は腹を立てました。

しかし、なんと女はブツブツと、私はあなたに嫌われていると言うのです。

彼は驚きました。

事態はあべこべで、女は伊沢が自分のことを愛すると思っていたのです。

いつのまにか夜が明け、男は女の枕元でただ髪の毛をなで続けていました。

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【承】白痴 のあらすじ②

女との奇妙な生活のはじまり

その日から、これまでとは違った生活がはじまりました。

しかし、それは一つの家に女の肉体が増えたということの他には何も変わりませんでした。

彼は毎朝出勤し、留守宅の押し入れの中に一人の白痴の女が残って帰りを待っています。

しかも彼は一歩出るともう女のことなど忘れていました。

戦争というものが不思議と忘れっぽくするのです。

爆弾に破壊されたビルの穴や街の焼き跡などに挟まれて女の顔が転がっているだけのように感じました。

しかし、毎日、警戒警報が鳴ります。

すると彼は非常に不愉快な精神状態になりました。

女が家から飛び出し、すべてが近隣に知れ渡らないかという不安です。

男には忘れられない二つの白痴の女の顔がありました。

一つは初めて肉体に触れたときの顔です。

その日から女は常に待ち設けている肉体にすぎませんでした。

もう一つは、爆撃があった時に隠れていた押し入れで見た女の絶望して苦しみもだえる顔です。

人間にあるはずの理知や抑制などのない顔がこれほどあさましいものだとは思いませんでした。

伊沢の存在すらも意識していませんでした。

それは絶対の孤独で、見るに耐えない醜悪なものでした。

その日、彼は焼け跡を当てもなく歩いていました。

人間が焼き鳥と同じように至るところで死んでいます。

焼き鳥と同じで、怖くもなければ、汚くもありません。

女が焼け死ぬことを考えると、変に落ち着いている自分のことを意識せずにはいられませんでした。

自分は女を殺さないが、戦争がたぶん女を殺すと思いました。

俺は知らない、と伊沢は空襲を冷静に待ち構えていました。

【転】白痴 のあらすじ③

東京大空襲

それは4月15日のことでした。

二日前の13日には、東京では二度目の大空襲があり、伊沢は埼玉へ買い出しに出掛けていました。

彼が家に帰ってくると同時に警戒警報が鳴り出しました。

彼は疲れ切っており、リュックを枕にそのまま部屋で眠ってしまいました。

目が覚めるとラジオはがなりたてており、空襲警報が鳴り出しました。

この街の最後の日だと瞬間的に感じとりました。

駅前の方角が火の海になっています。

それから焼夷弾の落下音が鳴り始めましたが、彼の頭上を通り越して後方の工場地帯に集中しています。

工場地帯は火の海で、次々と爆撃を加えています。

北方の一部分を残して周囲は火の海となり、その火の海が次第に近づいていました。

仕立屋はリヤカーに荷物を積み込んでおり、一緒に逃げようと言いましたが、彼は断りました。

一瞬も早く逃げ出したかったのですが、女の姿を見られないためには皆が立ち去った後でなければなりません。

天地は爆音や爆発など無数の音響でいっぱいでした。

しかし、彼の周囲だけはひっそりとしています。

気がつくと左右の家も、目の前のアパートも火を吹き出しています。

家の中へ飛び込み、押し入れの戸をはね飛ばして女を抱くように布団をかぶって走り出ました。

それから一分間ぐらいは夢中でわかりませんでした。

振り返ると、彼の小屋も燃え始めているようでした。

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【結】白痴 のあらすじ④

明日への希望

周りは火の海で、もう駄目だと伊沢は思いました。

小さな十字路へきました。

一方の道を越すと小川が流れており、そこを上ると麦畑へ出られることを彼は知っていました。

溝に布団を浸し、女と肩を組み、布団をかぶって歩き出しました。

女の体を自分の胸に抱きしめて「死ぬときは、こうして、二人一緒だよ」「俺から離れるな」とささやくと、女はうなずきました。

稚拙なうなずきでしたが、彼は感動のために狂いそうになりました。

そのいじらしさに取り乱しそうでした。

二人は猛火をくぐって走ると、ようやく小川に出ました。

大きな疲れと同時に、何もかも馬鹿馬鹿しくなってきました。

麦畑の続きにあった木立ちの下に布団を引いて、二人は寝転びました。

眠くなったと女が言ったので女を布団にくるみ、タバコに火をつけました。

そのうち解除の警報が鳴り、数人の巡査が解除を知らせていました。

雑木林の中には二人だけが残されました。

女はぐっすりと眠っていました。

今、眠ることができるのは死んだ人間とこの女だけだと思いました。

女はかすかにいびき声をたてていました。

それは豚の鳴き声に似ていました。

この女自体が豚そのものだと思いました。

女を置いて立ち去りたいとも思いましたが、それすらも面倒くさくなっていました。

少しの愛情も未練もありませんでしたが、捨てるだけの張り合いもありませんでした。

生きるための明日の希望がないからです。

今朝は果たして俺と俺の隣に並んだ豚の背中に太陽の光がそそぐらどうかと彼は考えていました。

白痴 を読んだ読書感想

坂口安吾の代表的な作品の一つである『白痴』です。

特に印象深かったのは後半で、戦時中の空襲の描写があまりにも生々しく描かれていながらも、ある面では冷静な伊沢の心境が丁寧に描かれています。

圧巻なのは、空襲を逃げ延びた2人のクライマックスの描写です。

「死ぬときは一緒」「俺から離れるな」とまで言い、それにうなずく女の様子に感動さえしていた伊沢は、逃げ延びた後は一転し、ぐっすりといびき声をたてて眠る女の姿を見て、「豚」に見立てました。

そして男は女を捨てることさえ面倒だと感じるのです。

何かそこには孤独と怖ろしさと同時に、不思議と美的なものを覚えました。

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