【ネタバレ有り】黒猫館の殺人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:綾辻行人 1992年4月に講談社から出版
黒猫館の殺人の主要登場人物
鹿谷門実(ししやかどみ)
館シリーズを通しての主人公。鹿谷は、ペンネームであり本名は島田潔。鮎田からの依頼で黒猫館を探す。
河南孝明(かわみなみたかあき)
稀譚社に務める編集者。鹿谷と共に何度か中村青司の館で起きた事件に巻き込まれた経験がある。
鮎田冬馬(あゆたとうま)
ホテルの火災に巻き込まれて記憶を失う。持っていた手記から自身の過去を探る。
氷川隼人(ひかわはやと)
黒猫館のオーナーの甥。従兄弟の風間裕己らと共に黒猫館を訪れた。
椿本レナ(つばきもとれな)
1人で旅行していたところをナンパされて黒猫館を訪れた。
黒猫館の殺人 の簡単なあらすじ
出版社で働く河南の元へ担当する鹿谷門実という作家に合わせて欲しいという妙な依頼が舞い込みます。依頼者の鮎田冬馬という老人は記憶喪失になっており、唯一所持していた手記の内容と鹿谷の著作に類似点を見つけて何か手がかりが得られないかと考えました。その類似点というのが中村青司という建築家であり、鹿谷と河南は少なからず気になる名前であったために鮎田と会って話を聞くことにします。どうやら鮎田は少し前まで黒猫館という館の管理人をしていたようであり、2人は手記を元に黒猫館を探す手伝いをすることとなります。
黒猫館の殺人 の起承転結
【起】黒猫館の殺人 のあらすじ①
稀譚社という出版社に務める河南孝明に鮎田冬馬と名乗る人物から妙な依頼が届きます。
その内容は、河南が担当する鹿谷門実という作家に会わせて欲しいと言うもので、手紙が届いた日の夕方に電話が掛かってきます。
鮎田はホテル火災に巻き込まれた際に頭を強く打ち記憶喪失になったと言います。
唯一所持していた手記を読むと鮎田冬馬という名前と、黒猫館という建築家中村青司が手掛けた館の管理人をしていたらしいと分かります。
入院中に読んだ鹿谷の著作に中村青司の名前を見つけ、記憶を取り戻す手助けになるのでは無いかと考えたそうです。
河南は鹿谷に連絡すると鹿谷も興味を示し、直接鮎田に会って話を聞くこととなります。
鮎田に会うと詳しいことは手記を読んで欲しいと手渡されます。
手記は黒猫館で起きた殺人事件について書かれていますが、鮎田にはそれが事実なのか創作なのかさえ分からないという状態でした。
手記によると、鮎田は長年誰も訪れない黒猫館で管理人として働いていました。
世捨て人となった鮎田にとってはとても過ごしやすい環境でしたが、オーナーの息子が旅行ついでにやって来ることとなります。
鮎田は金持ちのドラ息子でないと良いがと危惧しますが、案の定大学生の風間裕己は遊び人で共に来た友人の麻生と木之内も似たような人間でした。
唯一風間の従兄弟である氷川隼人だけは落ち着いた知的な雰囲気でまともに話が出来て安心します。
4人はバンド仲間でしたが、ボーカルのレイコが抜けてしまい解散記念に旅行に来たと言うことでした。
氷川は天羽辰也のファンであり、書物を読んで過ごそうとしますが、他の3人は酒と薬物で遊び呆けていました。
翌日、風間が車を借りてドライブに行くと見知らぬ女性を連れて帰ります。
椿本レナと名乗る女性は1人で旅行に来ていて風間に声を掛けられてついてきたということでした。
【承】黒猫館の殺人 のあらすじ②
手記を読んだ2人は、気になる点が多々あるものの、黒猫館を見てみたいという思いから調査を開始します。
まずは手記の真偽を確かめる為に鹿谷が知り合いをあたって中村青司の恩師神代教授に辿り着きます。
神代はかなりの歳ですが頭はしっかりしているらしく、会って話を聞きたいと申し入れると快諾して貰えます。
2人が神代を尋ねると、鹿谷のファンだという孫娘が出迎えてくれ、神代は中村青司について覚えている限りのことを語ってくれます。
神代は天羽の友人でもあったそうで、中村青司を紹介したのも神代でした。
神代によると天羽は阿寒に館を建てたそうで、中村青司は天羽を「どじすん」だと評していたとの事です。
手記の続きでは、夜になりレナと風間、麻生、木之内の3人が薬を使って楽しんでいた所、脇を通ろうとした氷川を呼び止めて仲間に入れようとします。
氷川は断って部屋に戻ろうとしますが、レナに口移しでLSDを飲まされ、他の3人に出口を塞がれてしまい強引に参加させられます。
心配した鮎田が隠し孔から様子を覗いたのが午前1時半から2時半頃のことで、その後も乱癡気騒ぎは続いていたようでした。
翌日、正午過ぎでも起きてこない若者達を見に行くと、レナが首を絞められて死んでいました。
しかし、男達は皆記憶があいまいらしく、犯人が誰かわかりません。
レナが行為の最中に首を絞めてくれと言っていた事は思い出しますが、全員が同じ事を頼まれていたようです。
30分だけビデオで撮影していたので犯人が分かるかもしれないと見てみますが、自分が前後不覚に陥っていたことにショックを受けた氷川が途中で止めてテープを破壊してしまいます。
仕方なく事件を隠蔽する事にし、鮎田の案内で地下へと向かいます。
地下の壁にレナの遺体を埋め込もうとしますが、地下に隠し部屋を見つけ女の子と猫の白骨死体を発見してしまいます。
【転】黒猫館の殺人 のあらすじ③
手記の登場人物の存在を確認すると、風間と氷川は実在することが分かりますが、風間は家族揃って交通事故死、氷川はアメリカへ留学して連絡が取れませんでした。
神代の孫娘から天羽博士のことで一つ思い出したと連絡があり、天羽は自分を鏡の世界の住人だと話していたそうです。
また、かつて天羽が神代に送ってきた招待状を送ってもらえます。
手がかりを辿ってまずは天羽博士がかつて勤めていた札幌の大学へ向かいますが、鮎田は体調を崩し同行出来ませんでした。
鹿谷と河南は古株の橘教授に話を聞き、天羽はオーストラリアに留学後、30歳頃助教授として採用された天才肌だったそうです。
また、鏡の世界の住人というのは全ての内臓が左右逆という天羽の身体を意味していたそうです。
橘は天羽が養子にしたという理沙子にも会った事がありました。
体調が回復した鮎田と釧路で合流し、阿寒にある館へと向かいます。
手記の中ではリナの死体が見つかった翌日、麻生以外の3人は少し落ち着きを取り戻した様子ですが、麻生だけが起きてきません。
木之内が様子を見に行くと、朝から2時間近くもシャワーの音が聞こえており何かおかしいと言います。
皆で扉を破って麻生の部屋へ入ると、密室の中で自殺していました。
遺書には自分がレナを殺したと書かれていました。
自分が殺人犯で無かったと知り、風間、氷川、木之内は安堵の表情を浮かべます。
残る問題は麻生の死は警察に知らせない訳にはいかないということですが、遺書を始末してレナの死は伏せておき、麻生がたまたま旅行先で自殺したことにします。
麻生は先日母親を亡くしてかなり落ち込んでいたという動機もある為、皆で口裏を合わせれば真実が明るみに出ることはありません。
鮎田は麻生の部屋の密室性が気になったようですが、手記はレナなど館には来ておらず麻生が自殺したと言うだけが一番良いと締め括られていました。
【結】黒猫館の殺人 のあらすじ④
鮎田が黒猫館だと思っている阿寒の館に入ると、そこは廃屋になっており明らかに長年誰も使っていないようでした。
さらに、手記の内容とも相違があり、ここは黒猫館では無いようです。
しかし鮎田は見覚えがあり昔自分はここに住んでいたようだと言います。
地下には白骨死体などなく、少女の絵が飾られていてそれを見た鮎田は記憶を取り戻してきたようです。
そこで鹿谷が種明かしをし、鮎田冬馬と天羽辰也は同一人物であることを指摘します。
実は前の晩に鹿谷は自身の推理を河南に話しており、中村青司は天羽の身体の特徴とルイス・キャロルとの共通点としてロリコンであることを見破りキャロルの本名「どじすん」だと言っていたこと、館はアリスの世界観で味付けされたことなどを説明していました。
さらに、今日館を調べて気づいたことから館は2つ存在することを説明し、本物の黒猫館はタスマニアにあると驚きの事実を明かします。
天羽は全ての記憶を取り戻し、風間の交通事故死がきっかけで東京に来ていたと話します。
さらに鹿谷の推測通り、手記には2冊目があり解決編として麻生を殺したトリックと犯人が書かれていましたが火事で焼けたようです。
解決編の内容は、天羽は検死もできてレナの死体を見てすぐに心臓麻痺で死んだと気づきます。
しかし、警察に通報されたくない天羽は死因を隠して若者達の誰かが殺人犯だと思わせます。
しかし、これが引き金となって新たな殺人事件を引き起こしてしまったのでした。
氷川は自分が理性を失った状態で殺人を犯したかもしれないという事実が許せない為、麻生を殺して自殺に見せかけ、レナ殺人犯は麻生だということにします。
天羽は氷川の顔を思い出してはかつて理沙子を殺してしまった自分と比べ暗い思いに囚われます。
最後に時を同じくして時計館という中村青司が建築した館で起きた連続殺人事件を聞き、そんな偶然があるものだろうかと綴られていました。
黒猫館の殺人 を読んだ読書感想
館シリーズの第7作目であり、殺人事件からは一年ほど経過した段階での鹿谷と河南による館探しと鮎田冬馬の手記の内容が交互に描かれます。
鮎田が記憶を失っている為、鹿谷と河南は手記の内容が事実なのか創作なのかから考えますが、調べていくとどうやら事実らしいと分かっていきます。
中村青司が建築する館にはからくりが施され、それが殺人のトリックに利用されることも多いですが、本作では覗き孔くらいしか出てきません。
そもそも殺人自体もそれほど凝ったトリックは無く、今回は鮎田が何者なのかと手記の内容が真実なのか、黒猫館は実在するのかを推理することが主になります。
最後のどんでん返しで、実は館が2つあり北海道阿寒の館でなく、オーストラリアタスマニア島に黒猫館があるというオチでした。
確かに、手記の内容には色々と気になる記述があり、様々な伏線から推理することが可能となっていました。
また、鮎田の正体についてはかなりヒントが多いため、途中で気づく読者も多かったのでは無いかと思います。
この作品内には、過去のシリーズ作である時計館に関する話も出てきたりする為、シリーズがのファンには嬉しい内容となっています。
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