「奇面館の殺人」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|綾辻行人

「奇面館の殺人」

【ネタバレ有り】奇面館の殺人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:綾辻行人 2012年1月に講談社から出版

奇面館の殺人の主要登場人物

鹿谷門実(ししやかどみ)
館シリーズを通しての主人公。ミステリー作家。鹿谷はペンネームであり、本名は島田潔。中村青二建築の館について調べている。

影山逸史(かげやまいつし)
奇面館の主人。ドッペルゲンガーを探しています。

日向京助(ひゅうがきょうすけ)
幻想小説作家。鹿谷門実と瓜二つの容姿。影山逸史より、奇面館での会合に招かれます。

奇面館の殺人 の簡単なあらすじ

作家の日向京助は過去に取材をして知り合った影山逸史より奇面館での会合に招かれます。日向は突発性難聴を発症してしまい参加できなくなったため、高額の謝礼を受け取るために自分と容姿が瓜二つである同じ作家仲間の鹿谷門実に代理で出席してくれないかと依頼します。鹿谷は会合の行われる場所が奇面館という中村青司により建てられたものと聞くと参加を決めます。鹿谷はそこで、殺人事件に巻き込まれることとなります。

奇面館の殺人 の起承転結

【起】奇面館の殺人 のあらすじ①

奇妙な会合と招待客たち

都内に住む女子大生の新月瞳子は、親戚からの依頼で東京都の最果てに建つ奇面館のメイドとして短期のアルバイトをすることになります。

管理人の長宗我部の案内で館に着くと、秘書の鬼丸から会長の前では必ず仮面を着用することという一風変わった指示を受けます。

仮面着用で主人の影山逸史に挨拶した所、影山も祈りの仮面という仮面を着けているという事以外には特に変わったこともありません。

瞳子は会合への参加者を迎え入れ、会合のルールとしてそれぞれに異なる仮面の着用を依頼します。

鹿谷は日向京助として無事潜入に成功し、哄笑の仮面を着けます。

鹿谷が割り当てられた部屋の中を観察してみると、窓には鉄格子が付いておりまるで監獄のような感じがします。

4月とは思えぬ寒さで季節外れの雪が降り続いており、このまま館に閉じ込められるようなことがあると、何かよからぬ事が起こるのではないかと想像してしまいます。

中村青二によって建築された館では過去に幾度も殺人事件が発生しており、そこに巻き込まれてきた鹿谷は今回もまた同じようなことが起きるのではないかと複雑な気分となります。

その後他の参加者も到着し、会社社長が歓びの仮面、建築士が懊悩の仮面、マジシャンが驚きの仮面、算哲教授が嘆きの仮面、元刑事が怒りの仮面を着けることとなります。

客人の受け入れを担当した瞳子は、本人確認の為に免許証や保険証を確認しましたが、その際に全員の生年月日が同年同月で誤差は1〜2日以内であることに気づきます。

また、鹿谷は算哲教授から、館の主人はもう1人の自分を探してこのような奇妙な会合を開いていると教えられます。

【承】奇面館の殺人 のあらすじ②

奇面の集いと殺人

参加者が集まった日の夕方、顔合わせのお茶会が開催されます。

主人の影山より、今回が3回目となる会合について説明があります。

影山は家族をほとんど亡くし天涯孤独の身となっており、原因を「もう1人の自分に会うことが出来れば幸せになれる」という内容の影山家家訓にあると考えたそうです。

もう1人の自分に会えないために妻や子供が早くに無くなってしまった、このためもう1人の自分を探すためにこの会合を開いたというのです。

ただ、影山は表情恐怖症であり他人の顔が見たくないので全員仮面を着用してもらうということでした。

各自夕食を取った後は影山と1人ずつ会談を行うこととなりますが、夕食前にちょっとしたハプニングがあります。

懊悩の仮面の建築士が足をもつれさせ瞳子に倒れかかってしまうと、瞳子は咄嗟に投げ飛ばし、実は瞳子が柔術の達人であるということが判明します。

鹿谷は影山との会談では、謎の問答があった程度で、後は変わったことも無く普通の会話をして謝礼を受け取ります。

その後、サロンにて全員が集まり宴が催された後で各自就寝します。

しかし、瞳子は眠ることが出来ずベッドを抜け出し無人のサロンでビデオを見ますが、ちょうどその頃にサロンの隣の影山の部屋で殺人が行われていました。

【転】奇面館の殺人 のあらすじ③

被害者と犯人探し

翌日、主人の部屋を訪ねた鬼丸が大声をあげます。

駆けつけた鹿谷と元刑事は首と指が切り落とされた死体を発見します。

鬼丸が警察に通報しようとしますが、館中の電話は全て使えなくなっており、季節外れの吹雪で館は完全に孤立してしまいます。

さらに、会合の参加者全員が朝起きた時に仮面を着けられ鍵を掛けられていました。

厨房を調べていた長宗我部は、フードプロセッサーで人間の指のようなものが砕かれているのを発見します。

各自の昨夜の様子を確認していくと、会合に呼ばれた6人は睡眠薬を飲まされており、深い眠りについていたため仮面を被せられても起きることが出来なかったと分かります。

また、鬼丸と長宗我部は深夜遅くまで囲碁を打っておりアリバイがありました。

瞳子は、深夜にビデオを見ていたサロンで影山から電話を受けていました。

早く寝るようにと注意されましたが、それが本当に影山だったのか犯人が影山のふりをしていたのかハッキリとは分かりませんでした。

鹿谷は元刑事と共に現場検証をしたり、場を仕切って各自の話を聞いたりしながら推理を進めますが、その姿を見た他の参加者から正体を疑われます。

日向京助の著作から受ける印象とかけ離れているため、怪しまれた結果、鹿谷は偽物であることを明かし、自らがミステリー作家であることを打ち明けます。

全員が仮面を着けているため、被害者が本当に影山なのかも確定出来ずに推理を進めていきますが、雪の中に埋もれた頭部を発見し鬼丸と長宗我部の面通しにより影山であることが確認されます。

しかし、瞳子は影山の素顔は見たことが無いものの、どこかで見た顔であると言うような気がしてドッペルゲンガーが本当に現れたのではないかと思ってしまいます。

【結】奇面館の殺人 のあらすじ④

謎解き

鹿谷は引き続き、元刑事、鬼丸、長宗我部、瞳子と共に館内の調査と推理を行います。

鹿谷は、中村青二による設計であるために何か隠し通路のような仕掛けがあるのではないかと考えますが、鬼丸や長宗我部は勤め始めて3年程度であり、館の建てられた頃のことは分からず前の持ち主との面識もないということです。

鬼丸達との話の中で、鹿谷は影山逸史の父親である影山透一が前の持ち主だと思っていましたが、鬼丸達は影山透一と影山逸史の間にいた第二の持ち主が前の持ち主だと認識したという食い違いがあったことに気づきます。

その後、鹿谷は自身の説を裏付けるため鬼丸と共に館内を調べ、秘密の部屋を発見します。

そこにはかつて影山透一が大切に保管していた未来の仮面と呼ばれる宝物があったと推測しますが、今は何も無くなっていました。

皆を集めて仕掛け部屋を見せた後、鹿谷は自身の推理を披露します。

犯人は会合参加者と影山に睡眠薬を飲ませ、未来の仮面の鍵を影山から盗もうとしましたが、影山は不眠症で日頃から睡眠薬を服用していたために眠りが浅く気づかれてしまいます。

そのため仕方なく犯人は影山を殺してしまったということです。

犯行後、隣のサロンに瞳子がおり出られなくなった為、影山の部屋にある秘密の通路の鍵である祈りの仮面が必要になり、影山の首を切り落とします。

これらのことから、犯人は館について詳しく知っている人物であり、また鹿谷との会話の中からその人物が特定され、歓びの仮面の会社社長である創馬だと指摘されます。

創馬の本名は影山逸史であり、彼こそが初代の影山透一の息子で二代目の館の持ち主でした。

会社経営に困り、父が信じていた未来の仮面の不思議な力を頼ろうとし、今回の犯行に及んだということでした。

奇面館の殺人 を読んだ読書感想

館シリーズとしては久しぶりの著作であり、作者の綾辻行人先生も軽い読み物にしようと思ったがついつい力が入り長編になってしまったそうです。

やはりと言うか、もはや定番の秘密の通路などありきのミステリーとなっていますが、今回は密室の要因の1つとなるのが女子大生の瞳子であると言うのが面白いポイントでした。

普通の女子大生かと思っていたら実は柔術の達人であり、元刑事でも勝てないだろうと思わせると言うのが意外ではありますが、人は見かけによらないということもあるかなと思えました。

本人にとっては不本意で恥ずかしいことのようですが、人はどんな特技があるか分からないですからね。

犯人は最後まで分かりませんでしたが、鹿谷に依頼してきた日向京助がかなりポイントになっている人物でした。

また、鬼丸という変わった名字の人物が出てきますが、館シリーズの暗黒館の殺人にも同じ名字の人物が出てきており、鹿谷はその関連で鬼丸は犯人ではないと最初から犯人候補から除外していたのではないかと思います。

このような館シリーズの他作品との繋がりも見どころの1つだと思います。

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