【ネタバレ有り】普通じゃない。 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:原田マハ 2007年9月に角川書店から出版
普通じゃない。の主要登場人物
御厨しいな(みくりやしいな)
ヒロイン。フリーター。駅構内のフラワーショップから造園会社の事務員まで職を転々とする。
権田原大咲(ごんだわらだいさく)
総合都市開発企業の代表取締役。
矢車草輔(やぐるまそうすけ)
しいなの上司。権田原の孫。
萩野あおい(はぎのあおい)
環境デザイン会社に勤務。屋上緑化のエキスパート。
御厨道楽(みくりやどうらく)
しいなの祖父。花火師。
普通じゃない。 の簡単なあらすじ
御厨しいなはガーデナーになる夢を諦めきれないために、アルバイトを転々としてばかりで定職に就くことはありません。仕事中に頭部を強打してから植物の声が聞こえるようになったしいなは、郊外の植物公園で権田原大咲という実業家と仲良くなります。彼の会社で働くことになったしいなは、都会に花を咲かせる巨大プロジェクトに挑んでいくのでした。
普通じゃない。 の起承転結
【起】普通じゃない。 のあらすじ①
茨城県牛久市にある造園会社で事務員として働いていた御厨しいなは、松の木の剪定中にはしごから転落して頭を打ってしまいました。
その時のショックで植物の声を聞き分けることができるようになったしいなは、ある日曜日の午後に郊外の植物公園を訪れます。
園内のベンチの上で寝そべっていた高齢の男性・権田原大咲とあっという間に仲良しになり、ラナンキュラスの鉢植えまでプレゼントされてしまうほどです。
E.O.(Extraordinary、普通じゃない)と名乗る鉢植えのアドバイスを受けて、しいなは後日あらためて権田原の会社を訪ねてみました。
権田原の正体は個人総資産額2000億円を上回る大企業の社長だと判明して、しいなは彼の秘書として雇ってもらえることが決まります。
勤務地は東京全域を一望できる58階建てのビル「ゴンダイセンター」で、しいなの配属先は地下4階にある「秘書室出島」という名前の部署です。
その日以来しいなは直属の上司・矢車草輔と一緒に、権田原の妄想を実現する任務に追われるようになりました。
【承】普通じゃない。 のあらすじ②
日本橋の老舗そば屋からゴンダイセンターまで5分で出前が届く「出前シューター」、角のない消しゴム、チタン製のタケコプター。
次から次へと無理難題をしいなたちに押し付けてくる権田原でしたが、ある夜の取締役会の直前に具合が悪くなって倒れてしまいます。
自宅のテレビで権田原が危篤状態であることを知ったしいなは、E.O.を連れて集中治療室の前まで駆け付けました。
E.O.の葉っぱを1枚だけちぎって担当の看護師に権田原の枕元まで届けてもらうと、みるみるうちに回復していきます。
短期間の入院を終えてから社長に復帰した権田原は車椅子姿でしたが、突拍子もないアイデアを考えつくのは相変わらずです。
社内では今まで以上に精力的な権田原でしたが今期限りでの引退を決めているようで、しいなは最後の妄想として東京都心のビルを花畑に変えることを頼まれました。
その屋上緑化計画には慣例を無視して巨額の予算が組まれたために、プロジェクトチームは「普通じゃない」と名付けられます。
【転】普通じゃない。 のあらすじ③
プロジェクトには外部からの人材も登用されることになり、しいなは環境デザイン会社「トップグリーン」からやって来た萩野あおいとコンビを組むことになりました。
美しい容姿に恵まれて優秀な樹医でもある彼女は、植物の気持ちが分かると言い張るためにしいなは余り面白くありません。
週末のある日にあおいからドライブに誘われてもいまいち気乗りがしないしいなでしたが、珍しい植物を見ることができるお奨めのスポットだと聞いてすぐさま了解します。
たどり着いたのは数カ月前にしいなが権田原と出会った例の植物公園で、バナナの木の下であおいが打ち明けたのは自らの秘密です。
小学1年生の頃から野菜の声が聞こえるようになったこと、環境のことが気になり出して今の職に就いたこと、長年にわたって自分に相応しいパートナーを探していたこと。
都市化が進む今の時代に多くの人へ植物の声を届けるために、プロジェクトが成功した暁には自分の会社に来ることを提案してきました。
【結】普通じゃない。 のあらすじ④
間もなく夏が終わるある日の夕暮れどき、プロジェクトメンバーが権田原を連れて向かった先はゴンダイセンターの最上階です。
屋上庭園「E.O.」には色とりどりのスイレンの花が広がっていていて、しいなが携帯電話で合図を送ると背後には花火が打ち上がります。
しいなの祖父・御厨道楽は江戸時代から代々続いてきた花火職人の14代目で、孫が任された一大プロジェクトに一肌脱いでくれました。
何ひとつ思い残すことなく退任を迎えることができた権田原は、社内に新しく都市緑化課を設置します。
あおいの誘いを断って都市緑化課の課長を引き受けたしいなでしたが、以前のように植物たちと会話を交わすことができません。
進むべき道が見えることによって植物の声が聞こえなくなるというあおいの話に納得したしいなは、新社長の発表が行われるゴンダイセンターの大会議場へと急ぎます。
祖父の事業を受け継いで社長となった草輔のあいさつが全社員を驚かされる中で、引退した権田原は道楽とあおいの3人で世界中の荒れ野に花を咲かせる旅に出るのでした。
普通じゃない。 を読んだ読書感想
主人公が動物と会話する「ドリトル先生」シリーズは有名ですが、21世紀の東京都心を舞台にして植物の声が聞こえる若い女性を主人公にした本作品は違った味わいがあって魅力です。
ラナンキュラスのようなマニアックな品種ばかりではなく、花屋の売り物や近所の街路樹と会話を楽しむ様子がユーモラスでした。
何となくガーデナーへの憧れを抱いて毎日を過ごしていたヒロインの御厨しいなが、大企業の社長さんとの偶然の巡り合いによって成長していく姿にも共感できます。
個性的な登場キャラクターたちとの交流ととも、ラストでそれぞれに訪れる旅立ちもすがすがしいです。
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