「オーデュボンの祈り」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

「オーデュボンの祈り」

【ネタバレ有り】オーデュボンの祈り のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:伊坂幸太郎 2000年12月に新潮社から出版

オーデュボンの祈りの主要登場人物

伊藤(いとう)
本作の主人公。轟の船に乗り荻島へやって来る。

日比野(ひびの)
伊藤が初めて会った島民。適当なことばかり言う。

城山(しろやま)
警察官。伊藤の中学時代の同級生で、人を痛めつけるのが趣味。

優午(ゆうご)
未来を見通す力を持つカカシ。

轟(とどろき)
熊のような男。島で唯一船を持っており、本土で見かけた伊藤を助けて荻島に連れ帰る。

オーデュボンの祈り の簡単なあらすじ

伊藤は目が覚めると見知らぬ家におり、日比野と名乗る男が訪ねてきます。そこは荻島という仙台の先にある小さな島であり、伊藤は轟という男に助けられて島に来たと言います。轟に頼まれて日比野が島を案内してくれるようで、訳も分からないまま伊藤は日比野について行きます。日比野は、島は外界とは隔絶しており150年も鎖国のような状態が続いているとか、未来を知っている優午に会いに行くなどといかにも怪しげな話をします。

オーデュボンの祈り の起承転結

【起】オーデュボンの祈り のあらすじ①

荻島

伊藤はコンビニ強盗をして警察官になっていた中学の同級生城山に捕まり、たまたま連行されるパトカーが事故を起こしたため逃げていたという所までしか記憶がなく、目が覚めると見知らぬ部屋にいました。

日比野という男が訪ねてきて島を案内すると言い、ここは荻島という小さな島であり、伊藤は轟という男に助けられて島にやってきたようです。

荻島は文字通りの孤島であり外界とは隔絶されており、日比野の知る限り外から人が来るのは曽根川という男が3週間前に来たのと伊藤で2人だそうです。

途中、園山という画家に会いますが変人だそうで事実と反対の答えしか返しません。

優午に会うと、伊藤はカカシが喋る事に驚きますが日比野は平然としています。

優午は未来が見えるものの、幾通りもの未来の可能性が見えているだけで鮮明に分かるのは一週間程度までだと言います。

日比野は優午を信じており優午が昔から島を出るなと言うので轟以外は誰も島を出ないと話します。

伊藤には信じられないことですが、島の外のものを調達したり文化を取り入れるのは轟の家族だけに任せて百年以上も暮らしてきたようです。

その昔、ヨーロッパに渡った支倉常長は荻島をスペインとの交流所として使う約束をとりつけ、鎖国の時代に密かに交流を持っていたそうです。

さらに日比野の案内で、地面に寝転び心臓の音を聞く少女若葉、伊藤を連れてきてくれた轟、郵便局員草薙、島の法律であり殺人を許される桜と出会います。

日比野は、島には欠けているものがあり、外から来た奴が欠けているものを置いていくという言い伝えがあると話します。

【承】オーデュボンの祈り のあらすじ②

壊された優午

日比野に案内され市場へやって来ると、300キロはあろうかというウサギという女性とその旦那、美人姉妹の佳代子と希世子、足の悪い田中などと出会います。

日比野は明らかに佳代子嬢のことが好きなようでした。

伊藤は夜眠れずに優午の元を訪れます。

優午は城山は危険な男であり、伊藤は轟が助けなければ殺されていたと言います。

また、いくつかアドバイスをくれますがどれも抽象的で意味がよく分からないものでした。

翌日、優午が殺されており大変な騒ぎになっていました。

伊藤と日比野は何故優午は自分が殺されることを予測できなかったのかと不思議に思います。

また、伊藤は深夜に園山を見かけた事を不審に感じます。

いつも5時に起きて散歩をすると聞いていたにも関わらず、夜中に園山は何をしていたのかと思いますが、とりあえずは忘れます。

伊藤は優午にもらったアドバイスに従うことにし、田中にオーデュボンの話を聞きに行きます。

リョコウバトという鳥を研究していたオーデュボンは、人間に大量虐殺されていくリョコウバトをただ見ていることしか出来ませんでした。

優午も、荻島がもし同じ運命を辿るなら見ていることしか出来ないがただ祈りますと話していたそうです。

伊藤はウサギと話し、ウサギも園山を見かけたという証言を得ますが園山は優午の元へは行っていないということも分かります。

刑事の小山田が伊藤を尋問しに来ますが伊藤と話をして帰っていきます。

小山田は優午を殺すなら犯人はその後で別の殺人を犯すはずだと推理していました。

伊藤は部屋に帰ると市場で買ったジャガイモを調理しようとしますが、そこへ女の子が現れます。

優午に頼まれて包丁、バター、フォークを持ってきたそうで、未来の事を話す事が無い優午に頼まれ事をしたということが誇らしげでした。

【転】オーデュボンの祈り のあらすじ③

次の殺人と桜の判決

日比野は佳代子とデートをする事になったので、伊藤にロマンチックな演出のために自転車を漕いで欲しいと頼みに来ます。

優午から自転車を漕ぐようアドバイスされていた為、伊藤は頼みを引き受けます。

伊藤は草薙から自転車を借り、タイヤを空回りさせながらライトで2人を照らします。

帰り道、若い男が助けを求めてきます。

話を聞くと安田という男に唆されて女の子を襲ったらしく、桜に撃ち殺されてしまいます。

殺された男は笹岡というらしく、誰も騒ぎませんでした。

翌日、元彼女の静香への手紙を書いていると日比野がやって来て曽根川が殺されたと言います。

曽根川は頭を殴られて川で死んでいた為、桜以外の犯人がいるようです。

日比野は昨夜のデートの話を聞くと、佳代子から安田に付きまとわれているので懲らしめて欲しいと頼まれたそうです。

日比野が安田をどうしてやろうかと考えていると、草薙が慌ててやって来て妻の百合がいなくなったと言います。

日比野は百合の行方不明も安田が犯人だと決めつけ、笹岡の葬式にやって来るはずなので懲らしめようとします。

安田を見つけると日比野はいきなり追いかけて馬乗りになり殴り始めます。

伊藤は日比野を羽交い締めにし落ち着かせようとしますが、今度は安田と日比野が口論を始めます。

日比野は安田の悪事を指摘し桜から逃げ回っていたのだろうと言い、安田は日比野が佳代子に弄ばれているだけのバカだと罵ります。

そこに桜が現れると、安田は青ざめて土下座し桜に命乞いをし始めます。

伊藤と日比野はその場を離れますが、銃声が聞こえたような気がしました。

【結】オーデュボンの祈り のあらすじ④

荻島に欠けていたもの

伊藤は轟の家を調べるために手紙を渡して静香に急いで渡すよう頼みます。

そこへ草薙が嬉しそうに百合が戻ってきたと知らせに来ます。

百合は詳細は語らず、まずは無事を警察に知らせに行くと言うので、伊藤と日比野は轟の家を捜索に向かいます。

しかし、伊藤が思っていたような成果は得られませんでした。

次に園山の家へ行くと警察帰りの百合も現れ、昨日園山の妻の最後を看取るために来ていたと告白します。

園山の妻は5年前に殺されたのでなく、一命は取り留めていましたが寝たきりになったため、園山は狂人のフリをして家に誰も近づかせずに過ごしてきたそうです。

一方仙台では城山が静香に目をつけ悪巧みをしていました。

静香の家を訪れ、嘘をついて家に侵入します。

睡眠薬を飲ませようと企んでいた所、轟が手紙を届けにやってきます。

轟が伊藤は荻島にいると言うと静香は城山にどちらが本当の事を言っているのか尋ねます。

そこで城山は本性を表し、轟に自分たちを島に連れて行くよう命令します。

島では、田中が見張り台に登り騒ぎを起こしていました。

伊藤は優午から田中を助けなければいけないと言われていたことを思い出し、田中を説得しに梯子を登ります。

田中は優午に頼まれて優午を殺したのだと告白します。

また、優午に頼まれて曽根川を川に呼び出したところ、偶然が重なり曽根川が死んでしまったそうです。

城山は荻島に着くと近くにあった家に寄っていこうとします。

そこは桜の家であり、城山は桜が大切に埋めた花の種を踏んでしまいます。

桜は平然とした顔で城山の股間を撃ち、城山は悶絶し苦しみながら絶命します。

翌日、伊藤の元を日比野が訪れ静香が島に来ていると言います。

静香は手紙にあったアルトサックスを持ってきており、伊藤は丘でサックスを吹くように頼みます。

全ての事柄が繋がり、島に欠けていたものとは音楽であると気づいたのでした。

オーデュボンの祈り を読んだ読書感想

とても不思議な独特な世界観のストーリーです。

登場人物、荻島のルールとその成り立ち、喋るカカシ、異常な城山など、とても一言では言い表すことの出来ない小説になっています。

この小説が今や大人気作家となった伊坂幸太郎さんのデビュー作であり、随所にその特徴が見られます。

足の悪い田中や主人公の伊藤などの他作品にも登場する人物もいますので、他作品を読むのも楽しみです。

このあたりも伊坂作品を楽しめる魅力の一つとなっています。

また、過去の回想が入ったり、荻島と仙台の様子が交互に描かれたりと、多面的に物語が進んでいくのもとても面白いです。

優午が作られたきっかけや、日比野の先祖徳之助と優午の関わりなど、面白い話が盛り沢山です。

何の役に立つのかと思っていた小さな事が後々で意味を持ってくる伏線回収の上手さもさすがだと思える作品でした。

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