「草枕」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|夏目漱石

「草枕」

【ネタバレ有り】草枕 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:夏目漱石 2005年9月に新潮社から出版

草枕の主要登場人物

余(よ)
物語の語り手。 画家。

那美(なみ)
結婚生活が破綻した後に実家に戻る。

志保田(しほだ)
那美の父。温泉宿の主人。

久一(きゅういち)
那美のいとこ。

野武士(のぶし)
那美の元夫。 本名は不明。

草枕 の簡単なあらすじ

各地を渡り歩いて自由気ままに絵を描いていた「余」が立ち寄ったのは、豊かな自然に恵まれた温泉地・那古井です。町にはたった1軒の温泉宿しかありませんが、心のこもったおもてなしと泉質の優れた温泉でリフレッシュしていきます。宿屋の主人の娘に当たる美しい女性・那美との交流を深めていくうちに、彼女に隠された過去を知ることになるのでした。

草枕 の起承転結

【起】草枕 のあらすじ①

さすらいの絵描きと出戻りの美女

30歳になった今でも放浪を続けながら絵を描いている余は、ある時に山をこえた先にある那古井の温泉街にたどり着きました。

途中で雨に降られたために通りすがりの馬方に休憩場所を尋ねると、4キロほど先にある茶屋を紹介されます。

しばらくこの地に滞在することにしましたが、宿屋は志保田という人物が経営している1軒しかありません。

先ほどの馬方は源兵衛と名乗って、志保田一家とも前々から付き合いがあり余を宿まで案内してくれるようです。

道中で余は源兵衛から、志保田の娘・那美にまつわる身の上話を聞かされました。

5年前の那美の嫁入りの時に源兵衛が美しく着飾った彼女を馬に乗せて運んだこと、結婚相手は地元の城下町でも屈指のお金持ちであること、日露戦争によって夫の勤めている銀行が破綻したために現在は実家に出戻っていること。

余が初めて那美の姿を目撃したのは、宿に到着して早々と休んだ次の日の朝1番にお風呂に入っていた時のことです。

【承】草枕 のあらすじ②

美しくも何かが足りない彼女

ろくに体を拭かないままで風呂場の扉を開けると、目の前には見知らぬ若い女性が立っていました。

「昨日はよく眠れましたか」と何事もなかったかのように背中に着物をかけてくれて、初対面の男の裸にも動じる事はありません。

うりざね顔に富士額の整った顔立ちは、絵にしたらさぞかし美しいことでしょう。

その一方では彼女の顔の中に、何かひとつ欠けているものを感じてしまいます。

那美は日中は針仕事をしたり、三味線を弾いたりと家の中で静かな暮らしを送っているようです。

2階建ての家屋に地下は作られていて温泉大浴場と家の中はずいぶんと広いようでしたが、お客さんは余を除いては見当たりません。

焼き魚に海老のお吸い物と朝食のメニューも豪華でしたが、那美ではなく年配のお手伝いさんが食事を部屋まで運んできました。

気の向くままに温泉に入ったり、目に止まった風景をスケッチしたりと居心地は快適です。

那美と会話を交わすチャンスを伺っていた余でしたが、思いの外彼女の方から客室まで訪ねてきます。

【転】草枕 のあらすじ③

長良の乙女の伝説と那美の密会

部屋に戻った余が洋書を読んでいると、那美は誘われるままに中へと入ってきました。

今朝の湯上がりに手渡された着物のお礼をすると、那美からはご褒美として自分の絵を描いて欲しい頼まれます。

那美が見投げをした末に往生して水面に浮いているという、何とも不思議な構図の絵がお望みのようです。

戸惑いながらも余は、かつてふたりの男性に愛された果てに自らの生命を絶ったという、 長良の乙女の墓を見に行くことにしました。

山里を500メートルほど東へ下ると淵川という川が見えてきて、道端には長良の乙女を弔う建造物が見えてきます。

草むらに寝転がりながらスケッチブックに詩を書き付けていた余が見たのは、素足にげたを履いて野性的なひげを蓄えた野武士のような男です。

野武士は人目を気にしながら、どこからともなく現れた那美から財布を受け取ります。

野武士が立ち去った後に何食わぬ顔で那美と合流しましたが、那美は余が盗み見をしていたことをお見通しでした。

彼こそは那美を離縁した男であり、満州に渡る前の最後のあいさつに来た次第です。

【結】草枕 のあらすじ④

この瞬間をキャンバスに焼き付ける

この温泉宿に来てから長いことになりましたが、余はいまだに那美と約束した絵を完成させていません。

それは人間にとって最も大切な 「あわれ」 の感情が、 彼女の表情の中からは抜け落ちているからです。

ある時に那美のいとこに当たる久一という青年の出征が決まったために、みんなで一緒に吉田の駅まで見送ることになりました。

荷物を運ぶのはいつものように源兵衛の役割で、余は単なる付き添いに過ぎません。

切符は前もって購入してあるために、駅の構内にある茶店でよもぎ餅を食べながらお茶を飲んだりとリラックスした様子です。

ベルが鳴って乗客が並び始めた頃に、ようやくプラットホームに出た一向は久一と言葉を交わしながら最後の時間を惜しみます。

列車が走り去る瞬間に余が目撃したのは、最後列の三等列車の車内から身を乗り出して那美の姿を探し回る野武士です。

野武士と一瞬だけ視線を交錯させた那美の顔に、余は初めて「あわれ」を見い出すのでした。

草枕 を読んだ読書感想

30歳を迎えても自分の好きな風景や人物だけを描き続けて、洋画家としての社会的な成功を追い求めることのないストイックな主人公には共感できました。

偶然にも旅の途中でめぐり会った那美の、美しくもどこか危うい立ち振る舞いも忘れがたいです。

初めて顔を合わせたのが温泉の脱衣所で、那美よりも主人公の方がドギマギしてしまうシーンには心温まるものがありました。

那美と主人公が戦地に赴く久一を見送る停留所のシーンに登場する、「汽車ほど20世紀の文明を代表するものはあるまい」というセリフが印象深かったです。

人の群れが同じ顔で巨大な鉄の塊に乗り込んでいく様子に、著者はある種の不気味さを抱いていたのでしょう。

コメント

  1. 草枕(レンマ学) より:

    ≪…「あわれ」を見い出す…≫を、を数の言葉ヒフミヨ(1234)に重ねる・・・

     〇に棲む△◇真善美