【ネタバレ有り】マドンナ・ヴェルデ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:海堂尊 2010年3月に新潮社から出版
マドンナ・ヴェルデの主要登場人物
曾根崎理恵(そねざきみどり)
ヒロイン。産婦人科医。 帝華大学で研究を続けつつ産院を手伝う。
山咲みどり(やまさきみどり)
理恵の母。 夫の貴久とは死別。
曾根崎伸一郎(そねざきしんいちろう)
理恵の夫。 物理学者。
三枝茉莉亜(さえぐさまりあ)
マリアクリニックの院長。
清川吾郎(きよかわごろう)
理恵の上司。帝華大学の凖教授。
マドンナ・ヴェルデ の簡単なあらすじ
山咲みどりは久しぶりに桜宮市に帰ってきた娘の曾根崎理恵から、驚くべきお願い事を頼まれます。子宮を摘出した理恵の代わりに、夫と自分の子供を出産することです。頼みを引き受けたみどりは都内の産院「マリアクリニック」に通い始めましたが、次第に母と娘の間には産まれてくる赤ちゃんを巡って見解の相違が芽生えていくのでした。
マドンナ・ヴェルデ の起承転結
【起】マドンナ・ヴェルデ のあらすじ①
早くに夫を亡くした山咲みどりは、桜宮丘陵を見下ろすマンション「メゾン・ド・マドンナ」で独り暮らしを送っていました。
結婚して家を出た曾根崎理恵が久しぶりに実家に帰ってきたのは、10月のある日曜日のことです。
生まれつき子宮に障がいがあるために、理恵は自分で子供を産むことができません。
そのために理恵の卵子と夫・伸一郎の精子を体外受精させて、みどりが代理の母となって出産することを頼まれます。
突然の申し出に戸惑いながらも、娘を思う余りにみどりは代理母を引き受けました。
みどりの子宮に受精卵を移植した日は年明けの1月1日で、場所は東京駅から地下鉄で数分程度でアクセスできる笹月駅にあるマリアクリニックです。
この病院の院長は三枝茉莉亜ですが、病に侵されていて余命幾ばくもありません。
理恵が院長の代行を務める理恵の指示に従って、みどりはホルモン療法を開始します。
みどりが55歳にして妊娠したのは、2月の半ばのことでした。
【承】マドンナ・ヴェルデ のあらすじ②
日本の医学会では代理母は認められていないために、みどりがマリアクリニックに通う時には素性を知られないようにしなければなりません。
理恵はみどりが自分の母親であることを三枝にだけは打ち明けているために、カルテの作成から医療費の支払いまでが免除された特別患者としての待遇を受けていました。
産まれてくる子供は生物上は理恵の子でしたが、現行の法律上ではみどりが母親です。
あくまでも理恵から預かったものとして、みどりは出産を迎えるまでに自身の体調管理に努めていました。
受精卵の3つのうちの2つの着床に成功したために、みどりの体の中に宿っているのは一卵性ではなく二卵性双生児です。
双子の性別まではわからないために、理恵は男でも女でも使える「しのぶ」と「かおる」という名前を用意しています。
みどりのおなかの膨らみが目立ち始めた6月、突如として理恵と伸一郎の離婚が成立しました。
大事なことは何でも自分独りで決めて後から報告してくる娘に、みどりは次第に不信感を募らせていきます。
【転】マドンナ・ヴェルデ のあらすじ③
高齢出産の上に産まれてくるのが双生児というハイリスクのために、みどりは9月の上旬にも帝王切開を受けることになりました。
メスを執るのは理恵の勤め先の帝華大学から応援に来る清川吾郎で、腕利きの先生として患者たちからは有名でしたが異性との関係が派手なために同僚たちからは余り評判は良くありません。
みどりは彼と理恵が不倫関係にあることを知って、自らのおなかの中の子供の父親が伸一郎ではなく清川であることを確信します。
みどりは「赤ちゃんを渡さない」と宣言しましたが、理恵はこの事態を予測してマリアクリニックのカルテに自分が妊娠したとの偽りの記録を残していました。
もし理恵と決別した場合は適切な治療を受けられなくなり、手近な産院に駆け込んで出産をする「野良妊娠」を覚悟しなければなりません。
勝ち目がないことを悟るとともに、 みどりは自分の娘が医局内で「クール・ウィッチ(冷徹な魔女)」と呼ばれている理由に気がつきます。
【結】マドンナ・ヴェルデ のあらすじ④
第一子は男の子で2051グラム、第二子は女の子で2218グラム。
母子ともに健康で術後の経過も良好な状態で、5日ほどで抜糸をして退院できるでしょう。
離婚した理恵と伸一郎は双子の親権をひとりずつ分けて、 みどりは伸一郎の子育てをサポートすることにしました。
理恵は三枝からの強い要請に答えて、マリアクリニックをさまざまな子供たちを支えるための医療機関として再出発させることになりました。
自身もシングル・マザーとして育児をこなしながら、産婦人科の窮状を社会に訴え続けていくつもりです。
最後まで母親としてみどりが譲らなかったことは、子供たちを代理出産を社会に認めさせるための宣伝道具として利用しないことです。
マリアクリニックを後にしたみどりは、久しぶりに桜宮市に帰ってメゾン・ド・マドンナの前に立ちます。
空っぽになった腹部をそっと撫でながら、理恵・伸一郎・かおる・しのぶの5人で全く新しい家族の形を模索していくことを誓うのでした。
マドンナ・ヴェルデ を読んだ読書感想
高い知性に基づいて理路整然と行動していき、「クール・ウィッチ」の異名を持つ曾根崎理恵は異色のヒロインでした。
自分と夫の遺伝子を受け継いだ子供を、母親の肉体を使って生みだそうとする大胆不敵さには驚かされます。
アメリカやヨーロッパ諸国と比べてみると、日本の医学会が代理母に対して強い懸念を抱いていることが伝わってきます。
社会全体がまだまだ血のつながりや婚姻関係といった、古い価値観に捉われているからなのかもしれません。
山咲みどりが双子を出産するクライマックスには、これからの家族の在り方について考えさせられました。
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