「モルフェウスの領域」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|海堂尊

「モルフェウスの領域」

【ネタバレ有り】モルフェウスの領域 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:海堂尊 2010年12月に角川書店から出版

モルフェウスの領域の主要登場人物

日比野凉子(ひびのりょうこ)
ヒロイン。未来医学探求センターの非常勤職員。

佐々木アツシ(ささきあつし)
網膜芽腫を患う少年。2010年当時は9歳。

田口公平(たぐちこうへい)
東城大学医学部付属病院の精神科医。

如月翔子(きさらぎしょうこ)
小児センターの看護師長。

西野昌孝(にしのまさたか)
人工凍眠システムの開発者。

モルフェウスの領域 の簡単なあらすじ

9歳の少年・佐々木アツシは網膜芽腫という厄介な病気にかかっていましたが、日本国内での特効薬の認可が一向におりません。彼が助かるために残された唯一の方法は、「コールドスリープ」と名付けられた最先端の技術を駆使して仮死状態のまま眠らせることです。5年の歳月が流れて無事に目覚めたアツシでしたが、 思わぬ試練が訪れるのでした。

モルフェウスの領域 の起承転結

【起】モルフェウスの領域 のあらすじ①

眠り続ける少年と見守る彼女

佐々木アツシは5歳の時に網膜芽腫を発症して、東京から新幹線で1時間程度離れた桜宮市にある東城大学医学部付属病院の小児科に入院しました。

手術によって右の眼球を摘出しますが、間もなく左眼も同じ病に侵されます。

網膜芽腫の進行を抑制する薬「サイクロピアン・ライオン」は、日本ではまだ認可されていません。

認可を待つためにアツシの両親が選んだのは、患者の呼吸と心拍を停止する人口睡眠です。

アツシは9歳になった2010年4月に世界初の「スリーパー」として眠りにつき、5年後に目覚めることになりました。

未来医学探求センターの地下1階で眠り続けるアツシの側には、「サポーター」と呼ばれる見守り役の日比野涼子が常駐しています。

非常勤として雇われている涼子でしたが、住み込みで膨大な資料を整理しつつ患者の容体の変化にそなえなければなりません。

アツシとの5年後の再会を願う涼子が彼に付けたあだ名は、ギリシャ神話の眠りの神に準えた「モルフェウス」です。

【承】モルフェウスの領域 のあらすじ②

少年が目覚める時

アツシが目覚めるまで半年を切った2014年12月のある日のこと、涼子は東城大学医学部付属病院の院長・高階に呼び出されました。

アツシの両親は彼が眠りについてから1年後に離婚して双方が親権を手放したために、目覚めた後のケアを病院全体でチームを組んで支援しなければなりません。

高階からは患者の愚痴を延々と聞き続けることで有名な、「愚痴外来」こと田口公平を紹介されます。

彼ならばアツシが目覚めた後の、メンタル・ケアの役にはぴったりでしょう。

アツシの当面の生活の場として、高階はメンタル新しく完成したばかりの小児科センターを提供してくれます。

社会復帰までの教育係には、看護師長の如月翔子がいるために安心です。

目覚めの日に設定されている2015年4月、人口凍眠システムを開発したヒプノス社から西野昌孝がやって来ました。

技術者としても優秀な西野の適切な処置によって、アツシは無事に凍眠状態から生還します。

サポーターがスリーパーの覚醒後に接触することは法律で禁じられているために、この時点で涼子はお役御免です。

【転】モルフェウスの領域 のあらすじ③

5年の空白を取り戻す

容体が安定したアツシが小児センターに入院してから3日たちますが、いまだに彼は田口や翔子とコミュニケーションを取ろうとはしません。

肉体的には14歳ながらも、5年間のブランクがあるために精神的にはいまだに9歳のままでした。

残された左眼を救うための特効薬も厚生労働省による承認待ちで、高階が役所に掛け合っている最中です。

さらに田口はアツシに対して、残酷な現実を告げなければなりません。

アツシの両親が2011年にしたこと、ふたりとも医療費の負担と息子の引き取りを拒否したこと。

田口の言葉を聞いたアツシは涙を流しますが、これ以降少しずつ喜怒哀楽を取り戻しているようです。

翔子は勤務時間の合間を縫って、アツシを遊園地へ連れて行ったり勉強を教えてあげていました。

翔子はアツシの回復ぶりを、時折涼子にメールで報告しています。

涼子からの返信は祝福のメッセージとともに、「間もなく遠い国に旅立ちます」という不思議な言葉で締めくくられています。

【結】モルフェウスの領域 のあらすじ④

眠り姫からの贈り物

日比野涼子に代理人として指名された西野昌孝が東城大学医学部付属病院を訪ねてきたのは、2015年6月のことです。

涼子は現在では日本人で2人目のスリーパーとして、未来医学探求センターで眠りについていました。

その涼子のサポーター役になることを、西野はアツシに依頼してきます。

今は病院の中で田口や翔子に守られているアツシでしたが、ゆくゆくは社会に飛び出して自活していかなければなりません。

全てはスリーパーの人権を守るためでもあり、アツシの将来のことを考えた涼子からのプレゼントです。

引き受けるかどうかの返事をするには1週間程度の猶予が与えられたに、アツシは次の日に涼子が眠っているセンターを見学することにします。

かつて自分が5年間眠っていた水槽のような巨大な装置に横たわっているのは、モルフェンヌ(眠り姫)のような涼子です。

涼子が目覚める2020年までに、アツシは肉体的にも精神的にも成長した19歳になることを誓うのでした。

モルフェウスの領域 を読んだ読書感想

この作品の連載が文芸雑誌に開始されたのが2009年のことですが、2015年を近未来に設定していて面白かったです。

決して荒唐無稽なストーリーではなく、難しい専門用語も分かりやすく解説されているためにすんなり世界観に入っていけました。

佐々木アツシを失明の危機から救うための新薬の認可がお役所仕事によって阻まれてしまうシーンなど、日本の医療における社会問題もさりげなく盛り込まれていて考えさせられます。

美しくもミステリアスなヒロインの日比野凉子だけではなく、「愚痴外来」でお馴染みの田口先生も登場するなど遊び心満載でした。

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