「カレイドスコープの箱庭」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|海堂尊

「カレイドスコープの箱庭」

【ネタバレ有り】カレイドスコープの箱庭 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:海堂尊 2014年3月に宝島社から出版

カレイドスコープの箱庭の主要登場人物

田口公平(たぐちこうへい)
主人公。 神経内科医。

白鳥圭輔(しらとりけいすけ)
厚生労働省の技官。

菊村(きくむら)
病理検査室の責任者。

牛崎(うしざき)
菊村の部下。

花輪(はなわ)
病理検査室の事務員。

カレイドスコープの箱庭 の簡単なあらすじ

ただひたすら患者の愚痴を聞く「愚痴外来」こと田口公平は、病院長からふたつの頼まれごとをされます。ひとつは病理検査室に浮上した医療ミス疑惑の解決、もうひとつは近々開かれるエーアイ国際会議への出席。病院内の複雑なシステムと人間関係に苦戦する田口に、厚生労働省からやって来たあの男が救いの手を差し伸べるのでした。

カレイドスコープの箱庭 の起承転結

【起】カレイドスコープの箱庭 のあらすじ①

田口先生に課せられたふたつの宿題

病院長室に呼び出された田口が高階から聞いたのは、今月の初めに右肺の摘出手術を受けて亡くなった患者についてです。

死亡した患者は癌と診断されていましたが、遺族に匿名で病理の誤診だという内部告発が舞い込んできます。

告発を受けた事務長が内偵したところ、診断ミスではなく患者から採取した検体の取り違えの可能性も浮上しました。

診断ミスか検体取り違えかを調べることを頼まれましたが、田口は間もなく開催予定の「Ai」と名付けられた新しい死亡診断技術の標準化を推し進めるための国際会議にも出席しなければなりません。

取り敢えずは内部告発の方を当たってみることにした田口が、向かった先は病理検査室です。

診断ミスであれ検体取り違えであれ、問題の原因がここで発生したのは間違いありません。

病理検査室の主とも言える菊村教授は、手元の操作と共にくるくるとイメージを変える万華鏡(カレイドスコープ)のような顕微鏡を覗き込んでいました。

【承】カレイドスコープの箱庭 のあらすじ②

病理検査室の対立構造にメスを入れる

菊村は今回の件が、 講師の牛崎が癌を結核結節と診断した初歩的なミスだと主張していました。

その牛崎は自分が鏡検した時には癌だったと言い切り、検体の取り違えだと考えているようです。

診断ミスであれば病理医師である牛崎、 検体取り違えであれば標本を作製した菊村とそれぞれのケースで責任の所在が違ってきます。

他のスタッフにも話を聞いてみると、牛崎が臨床医たちから信頼を寄せられていることが分かりました。

人望も実力も申し分ない牛崎が准教授に昇進できないのは、菊村の嫉妬だと言う人もいます。

そんなふたりをサポートするのが、事務仕事を担当する花輪です。

パソコンが苦手な菊村に代わって電子カルテの打ち込みをして、口下手な牛崎のために患者との橋渡し役を務めています。

菊村と牛崎の主張が真っ向から対立しているために、院外の専門家をレフェリーとして同席させなければなりません。

田口の脳裏に浮かんだのは、厚生労働省の火喰い鳥の異名を持つ白鳥圭輔です。

【転】カレイドスコープの箱庭 のあらすじ③

白鳥によって施された適切な処置

これまでの経緯を聞いた白鳥は、田口が事情聴取した関係者を病理検査室へ呼び寄せます。

事件の真相は牛崎による診断ミスでも、菊村の検体の取り違えでもありません。

標本を制作してから診断の報告までの一連の過程が全て問題なく行われたあとに、密かに花輪が検体のラベルを貼り替えたことが原因です。

彼女は大雑把な性格からか、神経質な牛崎から幾度となく辞職を勧告されていました。

花輪を擁護していた菊村が定年を迎えてしまう前に、医療事故をでっち上げて牛崎を追い出すことが動機になります。

問題の検体に貼られていたラベルからは花輪の指紋が検出されていために、口が達者な彼女も言い逃れ出来ません。

威力業務妨害で訴訟を起こしたとしても、この件が明るみになることによってダメージを受けるのは病院の方です。

花輪は自主退職という形で落ち着き、 彼女の犯行だと薄々勘づきながらも見て見ぬ振りをしていた菊村も任期を残して病院を去ることになりました。

【結】カレイドスコープの箱庭 のあらすじ④

善と悪が織り成す人間模様

誤診疑惑が片付いた田口は、エーアイ国際会議の特別ゲストとして招聘された桐生恭一を羽田空港まで迎えに行きました。

久しぶりに不定愁訴外来を訪れたいという桐生を案内すると、既に白鳥と田口の学生時代の同期・速水晃一が待ち構えています。

国際会議の打ち合わせはいつしか飲み会へと変わり、気がつくと次の日の朝です。

二日酔いと寝不足を抱えながらも、会議は大盛況のうちに幕を閉じました。

年が明けると病院機構の改革が始まり、病理検査部門が閉鎖されることを知った田口は牛崎に会いに行きました。

病院長の粋な計らいで、今までの場所に牛崎をリーダーとする独立型の病理センターを立ち上げることが決まったようです。

今度新しくできるセンターには、花輪のような悪意を持ち合わせた人間がスタッフとして採用されるかもしれません。

世の中は善悪が入り乱れた万華鏡の箱庭のような世界ですが、それでも田口は医療に携わる人たちの善意を信じているのでした。

カレイドスコープの箱庭 を読んだ読書感想

毎度のことながら病院長から呼び出しを受けて厄介ごとを押し付けられてしまう、お人好しな主人公の田口公平には笑わされました。

人気のシリーズを締めくくるのに相応しい、予測不可能な医療ミステリーに引き込まれていきます。

天才的な心臓外科医の桐生恭一から「ジェネラルルージュ」でお馴染みの速水晃一まで、過去の名物キャラクターたちが一堂に会するクライマックス近くの宴会シーンが忘れがたいです。

およそ厚生労働省のお役人らしからぬ白鳥圭輔と田口との息の合ったコンビネーションも、この作品が見納めと思うと残念でなりません。

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