「AX アックス」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

「AX アックス」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

【ネタバレ有り】AX アックス のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:伊坂幸太郎 2017年7月にKADOKAWAから出版

AX アックスの主要登場人物

三宅(みやけ)
主人公。 コードネーム「兜」として暗躍する殺し屋。普段は文房具メーカーの正社員。

三宅克巳(みやけかつみ)
三宅の息子。 高校生。

奈野村(なのむら)
三宅の友人。 警備会社に勤務。

三宅茉優(みやけまよ)
克巳の妻。 長男・大輝の子育て中。

田辺亮二(たなべりょうじ)
スポーツトレーナー。

AX アックス の簡単なあらすじ

幼い頃から非行に走ってきた三宅は、やがて「兜」の異名を持つ殺し屋として暗殺をこなしていきます。そんな三宅が人並みの幸せに気がついたのは、結婚して家庭を持ち文房具メーカーでサラリーマンとして働き始めてからです。恐妻家で子煩悩な三宅は裏の仕事から手を引くことを決意しましたが、 組織から冷酷な刺客が送り込まれてくるのでした。

AX アックス の起承転結

【起】AX アックス のあらすじ①

殺し屋を辞めたい殺し屋

幼い頃から犯罪を繰り返して荒んだ生活を送ってきた三宅は、やがて「兜」と呼ばれる腕利きの殺し屋として裏社会でのし上がっていきます。

そんな三宅が人生の分岐点を迎えたのは、ひとりの女性と結婚して息子の克巳を授かった時のことです。

幸せな家庭を築き上げていくために、20代の半ばで文房具メーカーに中途入社しました。

40代の半ばとなった今では営業部でもベテランの社員で克巳も高校生に成長しましたが、いまだに家族には自らの裏の顔について打ち明けることができません。

都内のオフィス街のビルに内科診療所を構える医師に、三宅は殺し屋としての仕事を紹介してもらっています。

三宅が殺し屋を辞めたいと医師に相談したのは、今から5年前のことです。

この世界から足を洗うための代償として高額な手切れ金を要求されますが、今の三宅には到底払える金額ではありません。

結果として殺し屋を辞めるために、殺し屋の仕事を続けているといった不本意な状態が続いていました。

【承】AX アックス のあらすじ②

悲しき殺し屋の最期

三宅が初めて警備会社の社員・奈野村と顔を合わせたのは、半年前に百貨店のテナントの文房具店に営業としてやって来た時のことです。

お互いに一人息子を持つ父親という共通点があった上に、謙虚で誠実な彼の人柄に三宅は心を魅かれていきます。

妻と克巳を除いては周りには敵しかいなかった三宅にとっては、初めての友達です。

いつものように嫌嫌ながら診療所を訪れた三宅は、医師から大きな仕事を依頼されました。

これをやり遂げれば引退できるほどの報酬でしたが、ターゲットとして差し出された写真には奈野村の顔が写っています。

閉店後の百貨店で奈野村が明かした正体は、三宅に匹敵するほどの凄腕の殺し屋です。

息子のためにはここで死ぬ訳にはいかないという奈野村の言葉を聞いて、三宅はその場を逃走します。

仕事に失敗した場合は、家族に危害が及ぶのは確実です。

妻・息子・友達の3人の命を守るために、三宅は8階建てのオフィスビルの屋上から飛び降りました。

【転】AX アックス のあらすじ③

父の足跡をたどる息子

父親が自らの生命を絶ってから10年の月日が流れた頃、三宅克巳は妻・茉優と息子の大輝の3人で埼玉県の分譲マンションで暮らしていました。

ある時に田辺亮二というスポーツジムのトレーナーが、克巳の自宅を訪ねてきます。

10年前に当時はまだ小学生でいじめを受けていた田辺を、体を張って助けてくれたのが今は亡き克巳の父です。

その時に1枚の病院の診察券を拾った田辺は、今日まで返すことができませんでした。

父の自殺に疑問を抱いていた克巳は、受け取った診察券を手掛かりに診療所を見つけました。

三宅の主治医だったという医師と面会すると、彼は亡くなる直前に息子にある物を残したそうです。

久しぶりに実家に帰って三宅の遺品を整理していた克巳は、小さな封筒の中に入ったカギを発見しました。

合鍵を作った時のデータを集めている名簿業者に調べてもらうと、そのカギは古い街並みの中に建ったマンションの一室のカギだと判明します。

管理人の話では三宅は家族に内緒でこの物件を、ローンも組まず一括で購入したようです。

【結】AX アックス のあらすじ④

過去から一矢報いる

マンションの前にたどり着いた克巳に近づいてきたのは、どこからともなく現れたあの医師です。

医師は拳銃を取り出した医師は克巳の脇腹に押し付けて、いや応なしに三宅の部屋に連れていきました。

たまたま巡回をしていた管理人は三宅のことを覚えていて、「人が部屋に入ろうとしたら止めてくれ」という彼の遺言を繰り返します。

忠告を聞かない医師が克巳からカギを奪って踏み込んだ瞬間に、中から飛んできたのは1本のボウガンの矢です。

扉を開けると自動的に発射される仕掛けになっていて、倒れた医師の胸には矢が貫通していて既に息はありません。

現場に駆けつけて事情を説明してくれたのは、今では殺し屋を辞めてクリーニング店を営んでいる奈野村です。

三宅によって堅気になることができたと10年前のお礼を言う奈野村は、医師の遺体の処理を引き受けてくれます。

「父は何者だったんですか」という克巳の問いかけに対して、奈野村は「ただの、いいお父さん」と笑顔で答えるのでした。

AX アックス を読んだ読書感想

闇の世界では無敵の戦闘力を誇る殺し屋「兜」ながらも、普段は妻に頭が上がらない「三宅さん」のギャップが良かったです。

午前中に爆弾職人を始末して、 午後からは高校生の息子・克巳の授業参加に出席するシーンには笑わされました。

三宅と同じく警備員と殺し屋のふたつの顔を持つ奈野村との間に芽生え始めていく、ライバルとも友情とも言えない不思議な関係も印象深かったです。

殺し屋たちに仕事を紹介しつつ、次第に抜け出せないようにコントロールしていく謎めいた医師も何とも不気味です。

親子が力を合わせて医師に打ち勝つクライマックスが痛快でした。

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