「苺をつぶしながら」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|田辺聖子

「苺をつぶしながら」

【ネタバレ有り】苺をつぶしながら のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:田辺聖子 2007年9月に講談社から出版

苺をつぶしながらの主要登場人物

乃里子(のりこ)

窮屈な結婚生活から解放されて、独り身を謳歌する三十五歳、バツイチ。フリーデザイナーの仕事を再開し自活している。

中谷 剛(なかたに ごう)

乃里子の元旦那。大企業・中谷鉄工の御曹司。

関口 兎夢(せきぐち とむ)

共通の知り合いの個展で出会う。大男だが物腰柔らかで男臭くなく、乃里子の男友達の一人になる。

桑田 芽利(くわた めり)

乃里子の女友達。儚い美人の風貌だが実は大阪に大きなビルを二つも所有する大金持ち。私生活は謎に包まれている。

原 こずゑ(はら ごずえ)

乃里子の年上の女友達。若い男を愛人に持つのが趣味で、乃里子と親しくしていた福田啓のパトロンをしていた。

苺をつぶしながら の簡単なあらすじ

窮屈な結婚生活から解放されて、独り身を謳歌する三十五歳、バツイチの乃里子。フリーデザイナーの仕事を再開し、デザインしたキャラクターが人気になり、次々と商品化される今、この上なく幸せに感じるのは、一人を満喫できるこの瞬間。一人暮らしの楽しさを再発見した乃里子は、幸せの絶頂。昔の仲間との親交を取り戻した乃里子は、仕事も遊びも絶好調。そんな中、自分の将来になぞらえていた友人が不慮の事故でなくなり……。

苺をつぶしながら の起承転結

【起】苺をつぶしながら のあらすじ①

華の三十五歳

窮屈な結婚生活から解放されて、独り身を謳歌する三十五歳、バツイチの乃里子。

別れ際に元旦那の中谷剛からいくばくかの現金をもらい、そのお金で単身用のマンションを買った乃里子は現在女独り身の一人暮らし。

離婚後フリーデザイナーの仕事を再開し、デザインしたキャラクターが人気になり、次々と商品化される今、この上なく幸せに感じるのは、一人を満喫できるこの瞬間。

一人暮らしの楽しさを再発見した乃里子は、幸せの絶頂にいます。

今の自分を華の三十五歳と呼び、仕事に遊びに絶好調な日々を送っています。

結婚中は剛が嫌がるので昔の仲間とは疎遠になっていましたが、自由になった今は仲間との親交も復活し、女や男の性別を超えた友人たちと飲み歩くのが楽しくて仕方ありません。

剛のことはたしかに愛していましたし、良き相棒だと思っていたのは事実ですが、いかんせん剛のところはお金が有りすぎて、それにまつわる諸々が乃里子には煩わしく、すべて手放してしまいました。

まるで豪華で優雅な(周りからはそう見えた)結婚生活が、夢の中の出来事のように思える今日このごろです。

【承】苺をつぶしながら のあらすじ②

乃里子の仲間

乃里子には儚い美人の風貌で実は大阪に大きなビルを二つも所有する大金持ちの桑田芽利や、絵かきの福田啓、啓の元パトロンで若い男を愛人に持つのが趣味の原こずゑ等、女男問わず友人がいます。

結婚前の乃里子は異性しか興味は湧きませんでしたが、結婚離婚を経験し、ひと段落ついた現在は性別問わず、人間に興味が出てきています。

そんなある日、知人が個展を開くと聞き駆け付けた乃里子は、大男で西洋のお伽話に出てくる木樵のような関口兎夢と出会います。

大きな体をしながらもっちゃりとした口調の兎夢氏を乃里子はすっかり気に入ります。

恋愛はもうこりごりと思っていた乃里子でしたが、兎夢に興味を持ったのは、離婚の傷が癒えてきた証だと感じ嬉しくなります。

現在ではすっかり元気になった乃里子でしたが、離婚してしばらくは、一方的に別れを告げた自分が加害者のように思い、罪の意識に苛まれノイローゼのような時期もあったのです。

剛は今頃大阪を離れ東京で暮らしている、そう思っていた乃里子の前に、なんと剛があらわれます。

【転】苺をつぶしながら のあらすじ③

剛との再会

大阪で再会した乃里子と剛は、はじめ緊張しながらも、付き合っていた時のような軽快なテンポで会話を楽しみます。

剛はまだ再婚していないらしく、乃里子の様を嘲笑しつつ会えて嬉しそうです。

乃里子も昔と変わらず威勢が良い剛の姿に嬉しくなります。

そのまま別れた二人でしたが、芽利に誘われた軽井沢の避暑地で剛と再会することになります。

芽利は現地に着いてからはボーイフレンドと楽しむようで、乃里子はすることもなく、軽井沢をフラフラ散策してみます。

そこでばったりと兎夢氏と遭遇します。

友達の別荘を借りているという兎夢氏は料理が得意らしく、乃里子を食事に誘います。

明日兎夢氏の別荘に遊びに行く約束して別れますが、翌日待ち合わせ場所にいたのでは、兎夢氏ではなく剛でした。

何故ここに剛が居るのか不審に思う乃里子。

剛は乃里子に電話をかけ、軽井沢に来ていることを知りここまで来たようです。

軽井沢にも別荘を建てた剛は、乃里子に見せびらかしたいようで、しつこく誘ってきます。

兎夢氏と約束がある乃里子は断りますが、剛は引き下がりません。

そこへ兎夢氏がやって来ます。

【結】苺をつぶしながら のあらすじ④

人の温もり

剛は未だに乃里子のことが忘れられないようで、何をするでも乃里子ならどう驚くか、どうリアクションするかと想像してしまうらしいのです。

剛からそんな告白をされ、乃里子は複雑な気持ちになります。

まだ軽井沢に二、三日いるから連絡すると言って剛は戻って行きました。

兎夢氏と食事を楽しんだ夜、乃里子に福田啓から連絡が入ります。

原こずゑが交通事故に遭い病院に運ばれたというのです。

病院に来て欲しいとお願いされ、乃里子も緊迫した事態に心配になります。

すぐにでも駆け付けたい乃里子は、芽利に頼もうかと考えますが、芽利とこずゑは親しくない関係であるし、芽利の性格を鑑みて芽利に頼むことはできないと判断した乃里子は、今朝会った剛に助けを求めます。

夜中、電話で起こされた剛は機嫌が悪く、軽井沢から大阪まで車を出して欲しいという乃里子の一方的な頼みを一蹴し、電話を叩き切ってしまいます。

始発の列車を待つしかないと諦めた乃里子でしたが、頭の中ではこずゑの死が間近に迫る感覚を覚え、いつしか独り身のこずゑと自分が重なり泣けてきてしまいます。

電話が鳴り、いよいよ悪い知らせかと身構えた乃里子でしたが、相手は剛でした。

怒りがこみあげて眠れないから、このままついでに東京まで車を出してくれると言うのです。

迎えに来てくれた剛の車に乗り、こずゑが運ばれた病院へ向かいます。

こずゑは到着三十分前に、息を引き取っていました。

周りに見送られることなくひっそりとした死様に、乃里子は自分の将来を重ね泣けてきます。

泣く乃里子を抱きしめる剛の胸は温かく、乃里子は久しぶりに人肌の温もりを感じるのでした。

苺をつぶしながら を読んだ読書感想

乃里子三部作の第三弾『苺をつぶしながら』をご紹介しました。

剛と離婚し、独りの生活を謳歌する乃里子が直面した不安。

自分の将来になぞらえていた女友達の突然の死は、乃里子に独りで生きていく現実の過酷さを教えてくれたのでした。

前作の『私的生活』ではDV夫ぶりに株を下げた剛でしたが、本作では、名誉挽回というか、剛が出てくると一気に物語が活気づくというか、乃里子の相棒はやはり剛だな!という気がします。

剛は好きだけど、剛の親族が苦手だった乃里子にとって、男友達という関係性がベストだったのかなと思います。

乃里子三部作の完結編、ぜひ一読下さい。

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