【ネタバレ有り】舞姫 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:森鴎外 2006年3月に筑摩書房から出版
舞姫の主要登場人物
太田豊太郎(おおたとよたろう)
主人公。大学卒業後にドイツに赴任。
エリス・ワイゲルト(えりす・わいげると)
ヒロイン。ビクトリア座の踊り子。
エルンスト(えるんすと・わいげると)
エリスの父。仕立て屋。
天方(あまかた)
伯爵。
相沢謙吉(あいざわけんきち)
天方の秘書官。豊太郎の大学時代の同級生。
舞姫 の簡単なあらすじ
優秀な成績を収めて大学を卒業した太田豊太郎の赴任先は、ヨーロッパでも屈指の先進国・プロシアです。出世と学問を追い求めることに明け暮れていた豊太郎は、ある時に貧しい踊り子のエリス・ワイゲルトと知り合います。異国の地で彼女とのささかで静かな人生を送ることを考え始めた豊太郎に、残酷な現実が突きつけられるのでした。
舞姫 の読書感想文
宿題で記事を見てくださっている人が多いようでしたので、宿題でそのまま使えそうな読書感想文を作成しました。
舞姫 の起承転結
【起】舞姫 のあらすじ①
幼い頃に父親を亡くした太田豊太郎でしたが、学問への情熱は衰えることはありません。
旧藩主の学館で学んでいた時でも、東京に出てきて予備校に通い始めてからでも成績はいつもクラスで1番でした。
19歳には学士を取得して周囲の人たちを驚かせて、大学の法学部を卒業してからは官庁への就職も決まったために故郷に残してきた母親を呼び寄せます。
夫との死別に見舞われた後はふさぎ込んでばかりいた母も、立派に成長した一人息子の姿を見て大喜びです。
3年ほど母親と2人暮らしを送っていた豊太郎は、ある時に上司から外国行きを命じられました。
50歳をこえていた母を独りで置いていくことには多少の不安はありましたが、自分自身の勉強のためにも社会的な成功のためにも日本を離れなければなりません。
故国を出発してはるばると海を渡った先は、当時は「ヨーロッパの新大都」と呼ばれていたプロシアの首都・ベルリンです。
紹介状を渡して現地の官僚たちから快く迎えられた豊太郎は、大学で政治学を学びます。
【承】舞姫 のあらすじ②
ベルリンに来てから3年の月日が流れて、豊太郎は25歳になっていました。
ある日の夕暮れどきに動物園を散歩した後にクロステル通りを歩いていた豊太郎は、古い教会の前で泣き叫んでいた17歳前後かと思われる少女を目撃します。
エリス・ワイゲルトと名乗る彼女の事情を聞いたところ、父親のエルンストが亡くなったにも関わらずお葬式を挙げる費用が家にないとのことです。
豊太郎は時計をエリスに手渡して、行きつけの質屋を紹介してあげました。
この出来事がきっかけになって豊太郎とエリスは心を通わせていきますが、ふたりの清らかな交流は周囲の人たちからはなかなか理解してもらえません。
エリスが「ビクトリア座」で踊り子をしているために、「舞姫の群れを漁る」とまで陰口をたたかれる始末です。
豊太郎を快く思わない同僚の密告によって、公使としての職を失ってしまいました。
国からは母の死を知らせる手紙が届いて落ち込んでいた豊太郎を、相沢謙吉が助けてくれます。
【転】舞姫 のあらすじ③
相沢は東京にいた頃から天方という伯爵の秘書をしていて、大学生の頃の同級生でもあった豊太郎に新聞社の通信員の仕事を紹介してくれました。
受け取る給料はわずかばかりでしたが、豊太郎はエリスと慎ましくも楽しい日々を送ることができます。
エリスがつわりを起こして舞台の上で倒れてしまったのは、1888年の冬のことです。
豊太郎がエリスの看病をしていると、彼女の母親が1枚の葉書を持ってきました。
差出人は相沢で、たまたまベルリンに滞在していた天方との面会を取り付けくれたようです。
エリスの母が呼んでくれた1頭立ての馬車に乗り込んで駆け付けた豊太郎は、天方からふたつの道を突き付けられます。
エリスとの関係を絶って天方の保護の元で失われた名誉を回復するか、今のままで彼女と生きるのか。
しばらくは返事を先延ばしにしていて頼まれたドイツ語の翻訳をこなしていましたが、1カ月後に天方がロシアに行くことが決まりいよいよ決断を下さなければなりません。
【結末】舞姫 のあらすじ④
エリスは体調が悪いので舞台にも立てずに、所属先の座長から籍を抜かれそうになっていました。
近頃では産まれてくる赤ちゃんのことで、頭がいっぱいのようです。
ロシア行きを決意した豊太郎でしたが、どうしても彼女には打ち明けることができません。
出発の日が近づいていたある日のこと、エリスは相沢から全てを聞いてパニック状態になってしまいます。
精神的なバランスを失ってしまったエリスはそのままダルドルフの病院に入院して、豊太郎の旅立ちの日にも見送りに来ることができません。
天方に従ってロシアに行っていた豊太郎は、そのまま日本に帰国することにします。
エリスの母親には傷ついた娘とやがて産まれてくる孫が困らないように、経済的な援助を与えて後のことをお願いするばかりです。
相沢のような義理堅い友人には、豊太郎は後にも先にも会ったことがありません。
しかしながらエリスへの無神経な対応には、あれから5年の月日が流れた今でもわずかな憎しみを感じてしまうのでした。
舞姫 を読んだ読書感想
幼い頃からエリート街道を突き進んできた太田豊太郎が、夕暮れどきのクロステル通りで初対面のエリスに黙って時計を差し出すシーンにはホロリとさせられました。
生まれ育った環境やお互いの立場の違いを受け入れながら、交流を深めていくふたりの姿には心温まるものがあります。
その一方で周りの人たちの無理解な振る舞いや、豊太郎が受けるいわれのない仕打ちが痛切です。
友とその恋人の幸せを願いながらも、結果としてふたりの破局を招いてしまう相沢謙吉の役回りが皮肉でした。
産まれてきた父親のいないハーフの子供が歩んでいくであろう、波乱に満ちた人生にも思いを巡らせてしまいました。
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