「山椒大夫」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|森鴎外

山椒大夫(森鴎外)

【ネタバレ有り】山椒大夫 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:森鴎外 1915年にゴマブックス株式会社から出版

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山椒大夫の主要登場人物

陸奥掾正氏(むつのじょうまさうじ)
地方役人。筑紫へ向かった後に行方不明となる。

安寿(あんじゅ)
正氏の長女。

厨子王(ずしおう)
安寿の弟。成人後に正道と名乗る。

山椒大夫(さんしょうだゆう)
丹後の大金持ち。

藤原師実(ふじわらのもろざね)
関白。

山椒大夫 の簡単なあらすじ

12年前に行方知れずとなった父親を探しに、安寿と厨子王は母親に連れられて長い旅に出ます。道中で悪質な人買いに騙されて母と姉弟は離ればなれになり、強欲な富豪に奴隷として売り払われてこき使われるなど苦難の数々です。安寿は幼い弟だけでも無事に逃げ延びられるようにと、自らの生命をかけた大勝負に打って出るのでした。

山椒大夫 の起承転結

【起】山椒大夫 のあらすじ①

父を訪ねて苦難の旅に

陸奥掾正氏が筑紫(福岡県)の安楽寺へ行ったきり帰らなくなったのは、今から12年も前のことです。その年に生まれた厨子王と3歳になったばかりの安寿を連れて、姉弟の母親は岩代(福島県)に移り住みました。厨子王もある程度大きくなったので、母は正氏を探しに旅立ちます。越後(新潟県)までたどり着きましたがこの地域では人身売買が横行しているために、余所者は簡単には泊めてもらえません。

弱り果てた一向に親しげに話かけて宿を紹介してくれたのは、山岡大夫と名乗る船乗りです。

越中(富山県)から陸路で筑紫を目指すべきか、船頭を雇って海路で向かうのか。

越後と越中の境には親不知子不知という海岸の難所があるために、山岡は悩んでいた母に対して海路を勧めてきます。すっかり信頼してしまった母が山岡の用意した船に乗り込んだ途端に、親子は引き離されてしまいました。

山岡こそがここら一帯を荒らし回っている人買いで、安寿と厨子王は船の上で泣き叫ぶばかりです。

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【承】山椒大夫 のあらすじ②

姉の思いを受け取った弟

安寿と厨子王を買ったのは丹後(京都)に広大な土地と召使いを所有している、山椒大夫という名前の大金持ちです。

安寿は朝早くに起きて海辺へ塩を汲みに、厨子王は山へ行って夜遅くまで柴を刈に。

安寿は母から託された守り本尊の地蔵を胸に抱いて、厨子王は父から受け継いだ護り刀を握りしめて。

親から手渡された宝物と姉弟の絆を心の拠り所にして、ふたりは劣悪な環境と過酷な肉体労働に耐え忍びました。

山椒大夫のお屋敷から父がいるはずの筑紫までは程遠く、今さら故郷の岩代に引き返すわけにもいきません。

安寿は自分のお地蔵様を厨子王に託して、彼ひとりを京の都へと逃がします。

逃走中に僧侶に保護された厨子王は、中山の国分寺に匿われます。

追手が周辺の捜索を開始しますが、天皇の祈願によって建てられたお寺の中にだけは入るわけにはいきません。

山椒大夫の家来たちが引き揚げたのを確認した厨子王は、お坊さんの変装をして旅を続けていくのでした。

【転】山椒大夫 のあらすじ③

厨子王から正道への出世

京の都までたどり着いた厨子王は、日が暮れてきたために東山の清水寺に1泊させてもらうことにしました。

明くる朝目覚めた厨子王の前には、直衣・烏帽子・指貫と貴族の服装をした老人が立っています。

彼こそは藤原師実になり、摂政・太政大臣と数多くの要職について現在では関白にまで上り詰めた大物です。

厨子王が安寿から預かった守り本尊を見た師実は、彼の父親が確かな家柄であることを確信しました。

お屋敷に招かれて客分の身となった厨子王は、師実の妻の姪っ子の病をたちどころに治したために感謝されます。

この恩に答えるために師実は家臣たちを使って行方不明となった父の居所を見つけてくれましたが、既に異国の地で亡くなっていました。

厨子王は父の死を深く哀しみ、成人した後はその名前を一文字受け継いで「正道」と名乗ります。

正道は師実の取り立てもあって丹後の地方役人にまで出世することになり忙しくなりますが、姉と母と再会することは決して諦めていません。

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【結】山椒大夫 のあらすじ④

遂に巡り合った母と子

役人となった正道は、貧しさ故に虐げられている地元の人たちの現状について深く胸を痛めていました。

そこで丹後では人の売り買いを禁止する新しい法律を発表したため、山椒大夫も奴隷たちを解放してお給料を支払うしかありません。

安寿が弟を無事に逃がした後に入水自殺をしたことを知った正道は、彼女が亡くなって沼の畔に尼寺を建ててその死を悼みます。

母が子供たちを引き離された後に佐渡島に送られたことを知った正道は、多忙な職務の合間を縫ってお忍びで現地に渡りました。

旅館に泊まった正道が次の日の朝早くに出会ったのは、粗末な衣服を身に纏った年老いた盲目の女性です。

何故かこの女性に心惹かれた正道は、彼女が呟く奇妙な歌を聴いて衝撃を受けます。

「安寿恋しいや、ほうやれほ。

厨子王恋しや、ほうやれほ。」

正道が安寿の形見である守り本尊を彼女の額に押し付けると、たちまち両方の目の視力が回復します。

ようやく再会を果たした親子は抱き合って喜ぶのでした。

山椒大夫 を読んだ読書感想

幼い姉と弟に降りかかってくる、数多くの過酷な試練が痛切でした。

貴族たちが宮廷で優雅な暮らしを送っている中でも、貧しい人たちの生命がお金で売り買いされてしまう不条理には憤りを感じます。

その一方では厨子王にすくいの手を差し伸べた藤原師実のように、身分に囚われることなく相手を思いやる人徳者の振る舞いが感動的です。

愛する弟を守り抜くために、安寿が自らの身を危険に晒すシーンも心に残ります。

長い旅を終えて厨子王から正道へと成長した青年が、精神的にも肉体的にも疲れ切った母の絆を癒すラストにはホロリとさせられました。

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