【ネタバレ有り】迷路館の殺人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:綾辻行人 1988年9月に講談社から出版
迷路館の殺人の主要登場人物
島田潔(しまだきよし)
館シリーズを通しての主人公。本作の事件を機にミステリー作家となる。中村青二建築の館について調べている。
宮垣葉太郎(みやがきようたろう)
推理作家界の重鎮であり、迷路館の主人。
宇多山英幸(うたやまひでゆき)
編集者。宮垣葉太郎とは担当編集者として古い付き合いがある。
鮫嶋智生(さめじまともお)
評論家。宮垣との付き合いは弟子達よりも長い。
迷路館の殺人 の簡単なあらすじ
夏風邪をこじらせて寝込んでいた島田の元に一冊の本が届きます。タイトルは迷路館の殺人、作者は鹿谷門実となっており、仰々しい宣伝文句に辟易する島田ですが、よく知った人物による作品であるためとりあえず読んでみようとします。まずはクセであとがきから読むと、この本は実際に起きた殺人事件を題材にしており、著者自身も関わっていたと書かれています。作中に登場する人物の中に著者も混ざっているのですが、誰なのかは明かさず読者の想像にお任せすると言うことです。島田はお手並み拝見と、期待を持ちながら本を読み始めます。
迷路館の殺人 の起承転結
【起】迷路館の殺人 のあらすじ①
隠居した作家宮垣葉太郎の元を訪ねた編集者の宇多山は、四月一日の宮垣の誕生日にパーティーを開催するので是非参加して欲しいと言われます。
創作の方は約束を取り付けることは出来なかったものの、宮垣の中に情熱が残っていることは確認でき、収穫有りと思いながら宇多山は辞去します。
パーティーに招かれたのは、宮垣の弟子である作家4名、評論家1名、宇多山とその妻、そして宮垣の知り合いで九州の寺の三男坊である島田の8名でした。
宇多山が会場に向かう途中、車のトラブルで困っていた男に声を掛けるとその男こそが島田であり、共に乗せていくこととなります。
島田が今回参加することになったのは、宮垣の住む迷路館の建築家中村青司が縁で宮垣と知り合いになったからでした。
迷路館は地下にあり、入口を入って階段を降りると大広間があります。
3人が入るといきなり男が血を吐きながら倒れてきます。
しかし、周りの参加者は平然としており、男の行動をたしなめます。
男は清村という作家であり、ちょっとしたドッキリを仕掛けたのでした。
島田は皆に、長兄は行方不明、次兄は刑事をしており、自身が寺の手伝いをしていると自己紹介します。
参加者が全て集まると秘書の井野が現れ、宮垣が今朝自殺したと告げます。
【承】迷路館の殺人 のあらすじ②
宮垣の遺言としてしばらくの間は警察に知らせないよう指示がありました。
また、宮垣はあらかじめ医者も呼んでおり死亡確認を行った後、カセットテープを聞くようにと井野に指示していました。
テープには自分の死後は遺産の行方と弟子が気がかりだと宮垣本人の声で録音が残っていました。
その内容は、「遺産の半分は宮垣賞という文学賞に使うが、半分は弟子の中から1人を選び相続させる。
弟子4名は宮垣の自殺後5日間は迷路館から出ず原稿用紙百枚の小説を書き上げ、宇多山、鮫嶋、島田による審査を受けること。
小説のテーマは探偵小説で、迷路館を舞台とした殺人事件とし、登場人物はパーティー参加者とすること。
被害者は作者自身とすること。
原稿の執筆はワープロを使うこと。」
というものでした。
夕食後、皆で集まって雑談をします。
島田は宮垣との出会いや中村青司の館との関係を話し、宇多山の妻は元医師であると明かされます。
その後も一人、また一人と部屋に戻っていきますが残るメンバーの話は深夜遅くまで続きました。
【転】迷路館の殺人 のあらすじ③
酔いつぶれて広間で寝ていた宇多山は、鮫嶋に揺り起こされます。
応接室で小説家の一人須崎が死んでいるというのです。
応接室へ行くと他の者も集まっており、中を覗くと首がちぎれかけた須崎の遺体がありました。
皆で話し合いをしていると、秘書の井野の姿が見えないことに気づきます。
井野の部屋に行くと荷物がそのままになっており、どこかへ出掛けたと言うわけではなさそうでした。
須崎の部屋の中のワープロには書きかけの小説がありましたが、小説の内容が須崎の遺体の状態と一致していたことに島田は絶句します。
宇多山の妻桂子が遺体の鑑定を行ない、死亡原因とだいたいの推定時刻を割り出します。
犯人について島田を中心に推理しますが、結局分からずじまいでした。
犯人は姿を消した井野では無いかという説が出て、とりあえず小説コンテストは継続となり場は解散となります。
翌日、やはり人が死んでいるのに小説コンテストなど続けている場合でないと考え、宇多山は清村の元を訪ねます。
しかし部屋には誰もおらずワープロには書きかけの小説が残っていました。
また須崎のように殺されてしまったのでは無いかと思い慌てて別の部屋に向かう宇多山ですが、悪い予想が当たり小説通りに毒殺されていた清村を発見してしまいます。
叫び声を聞いて現れた島田と共に実況見分を済ませると急いで他の者にも知らせようと部屋を離れます。
最も近い部屋の林の元へ行きますが、二人が部屋に着くと林も殺されていました。
林は部屋の入口にバリケードを作っていたような形跡があり、部屋の中は犯人と争ったように荒れていました。
またワープロには小説が残っており林も小説通りに死んでいました。
【結】迷路館の殺人 のあらすじ④
防犯ブザーの音が聞こえてきたため、慌てて島田と宇多山は女流作家舟丘の部屋へと向かいます。
部屋には鍵が掛かっており、扉を壊して部屋に入ると舟丘が倒れていました。
犯人の姿が無いことを不思議に思う二人ですが、舟丘が身動きしたため宇多山は桂子を呼びに走ります。
桂子を起こし舟丘の部屋に向かう途中、ブザーの音を不審に思い部屋を出てきた鮫嶋と合流します。
部屋に着き舟丘の手当をしますが、頭に致命傷を受けていたらしくしばらくすると息を引き取ってしまいました。
舟丘のワープロには小説は残っておらず、自身の考えをまとめた手記だけが残っていました。
4つの殺人事件について改めて推理をすると、密室となっていた林と舟丘の部屋には隠し扉のような仕掛けがある事が分かります。
隠し扉を使うと自由に全ての部屋を行き来できました。
書斎横の寝室へ行くと、宮垣の死体の代わりに井野の死体がありました。
さらに隠し通路を探すと、地下に降りる梯子を見つけます。
地下には洞窟が広がっており、隠し部屋で宮垣が自殺していました。
遺書には犯行は宮垣によるもので、遺産は後継者に贈ると書かれていました。
こうして鹿谷の小説は幕を閉じますが、本を読み終えた島田は小説の不自然な点と書かれた目的を考えます。
鹿谷と会った島田は、事件の真相は小説とは異なり、犯人は鮫嶋であると推理を披露します。
鮫嶋は女性であり、今回の犯行の動機もありました。
鹿谷はそれに後から気づいたものの、物的証拠もなく警察には信じてもらえそうにありません。
そこでこうして本を書くことで犯人に対して真相に気づいたと告発したかったと言います。
また、最後に鹿谷門実=島田潔、本を読んでいた島田=島田潔の長兄島田勉だと明かされます。
島田潔は自身の小説内で長兄は行方不明と書いていましたが、エイプリルフールのお遊びをしたかっただけなのでした。
迷路館の殺人 を読んだ読書感想
館シリーズの第3作目であり、小説の中で鹿谷門実により書かれた小説が大部分を占めているという珍しい構成の作品です。
鹿谷門実の迷路館の殺人は実際に起きた殺人事件を元に書かれているとされ、しかも鹿谷の告発も目的であるため多少違和感を感じるような描写があります。
普通に読んでいると気づかないような書き方がされていますが、最後の島田勉と潔の会話にて明かされるように作者の潔も随分苦労して書き上げたようです。
確かに、宮垣は高齢かつ病に伏しており連続殺人を行えるほどの体力があったのかは疑問ですし、今回のパーティーが弟子を発奮させるための企みであったのであれば頷けます。
しかし、普通の読者はこんな真相には気づかず、最後の種明かしまで読んで初めて裏に隠された鹿谷の思いを知ることになるかと思います。
探偵小説では、探偵役による推理と事件解決がクライマックスとして盛り上がるものかと思いますが、この小説は探偵役の島田潔が真相に気づくのが遅すぎたため小説という形で告発するという微妙な手法をとっていました。
真犯人の鮫嶋がこの後どうするのかは本人にお任せしますという何とも曖昧な対応に終わった感じがします。
他のシリーズではたいていキッチリと謎解きをするので、本作はシリーズの中でも少し変わった結末となっています。
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