【ネタバレ有り】グラスホッパー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:伊坂幸太郎 2004年7月に角川書店から出版
グラスホッパーの主要登場人物
鈴木(すずき)
本作の主人公で元教師。殺された妻の復讐を横取りされる。
比与子(ひよこ)
株式会社フロイラインの社員であり、鈴木を寺原長男への復讐者なのかどうか試す。色白で派手な服装をしている。
鯨(くじら)
自殺専門の殺し屋。身長190cm、体重90kgの巨体。相手を絶望的な気持ちにさせる能力があり、自殺するしかなくなるように導くことができる。
蝉(せみ)
ナイフを凶器として使う殺し屋。どんな相手でも躊躇なく殺すことが出来る。
槿(あさがお)
押し屋。寺原長男を押した所を鈴木が目撃し、後をつける。
グラスホッパー の簡単なあらすじ
元教師の鈴木は、妻を轢き殺した犯人の寺原に近づく為に寺原の父親が経営する違法会社に雇われます。しかし、復讐に来たと疑われ、先輩社員の比与子に、誘拐した男女を殺して見せろと脅されます。その現場を見に現れた寺原長男は鈴木の目の前で誰かに押されて車道に飛び出し車に轢かれてしまいました。鈴木は寺原長男を押した犯人を追跡することとなります。
グラスホッパー の起承転結
【起】グラスホッパー のあらすじ①
元教師の鈴木は、轢き殺された妻の復讐の為に犯人の寺原について調べ、寺原の父親が経営するフロイラインという会社に入ります。
しかしフロイラインは怪しげな薬物を扱う違法な会社であり、鈴木はすぐに疑われ先輩社員の比与子に試されます。
若い男女を睡眠薬で眠らせて誘拐し、比与子は鈴木に男女を殺して見せろと脅します。
そこに、鈴木が殺せるか確認しようと寺原長男も現れますが、誰かに押されて車道に飛び出し車に轢かれてしまいます。
慌てて鈴木は寺原長男を押した犯人を追跡し始めます。
その現場横にあるホテルの25階では、鯨という大男が自殺幇助の仕事中でした。
鯨には話している相手を絶望的な気持ちにさせる能力があり、自殺するしかない状況に追い込んでいき相手に自殺させるという殺しを請け負っています。
仕事後、下を見下ろした鯨は、人混みから飛び出した寺原長男とそれを押した押し屋の姿を目撃します。
鈴木は犯人を追いかけ居所は突き止めますが、比与子に教えることはしません。
フロイラインであれば、犯人を拷問するだろうことは容易に想像出来るため、本当に押し屋だと確定するまでは居場所は教えないと言います。
押し屋には家庭があり子供がいました。
このため、鈴木は手荒な事はせずに押し屋なのかを確認しようとします。
【承】グラスホッパー のあらすじ②
水戸での一家惨殺の仕事を終えた蝉は、雇い主の岩西から報酬を受け取っていました。
岩西との会話の中で相手を殺す時に何を考えているのかと聞かれますが、蝉は罪悪感も感じずに軽い気持ちで殺していると答えます。
アパートに帰った直後、岩西から電話があり、梶という政治家から殺し屋の鯨を殺す依頼が来たと言われます。
連続しての依頼にイラつく蝉ですが、岩西は昨日同じ業界の寺原長男が殺されたため慌ただしいのだと言います。
蝉は指定された場所に向かう途中、寄り道をしたため時間に遅れます。
一方、鯨は政治家梶からの秘書殺しの依頼を終えた後で、再度別の秘書を殺して欲しいと依頼を受けます。
梶と会いその態度と依頼内容に怪しいものを感じたため、鯨は自分が信用されておらず別の殺し屋に自分を殺す依頼をしただろうと詰め寄り、梶を自殺させることにします。
蝉が遅れて待ち合わせ場所に着くと、依頼人の梶が首を吊って自殺していました。
困った蝉は、情報収集のために行きつけのポルノ雑誌店へ行き、寺原長男の事件と業界の動向を掴みます。
その結果、フロイラインの社員の中で押し屋の居場所を突き止めた者がおり、その人物が呼び出されるという情報を得ます。
蝉は自身の失敗を取り戻すために、寺原長男の仇を討とうと考えます。
【転】グラスホッパー のあらすじ③
押し屋の後をつけ、居所を突き止めた鈴木ですが、家族がいるようなので押し屋だと確認するのをためらいます。
そこで、鈴木は押し屋の家を訪ね、家庭教師として自分を雇わないかと営業をします。
相手は槿と名乗り、一応話を聞いて貰えます。
鈴木は口からでまかせを言いながら、何とか家庭教師として雇って貰えるように頼むと、槿の息子の健太郎がサッカーをしようと言い出します。
サッカーをしている間に鈴木を雇うかどうかを検討してもらうこととし、鈴木と健太郎はサッカーをしに出かけます。
サッカーをしていると、鈴木は妻のことを思い出します。
槿の妻すみれの手料理までご馳走になり、一家には怪しまれつつも少しは打ち解けることが出来ます。
しかし、比与子からは早く押し屋かどうかを調べろと催促の電話が何度も入り、既にフロイラインの社員が二人もイラついた寺原に殺されたと言われます。
さらに、寺原長男が奇跡的に意識を吹き返したと言われ、鈴木は真偽を確かめたくなり一旦槿の家を出て比与子に会いに行くことにします。
待ち合わせ場所へは槿が車で送ってくれますが、鈴木は最後まで押し屋なのかと直接聞く勇気は出ませんでした。
比与子に待ち合わせた喫茶店で会うと、寺原長男が生き返ったというのは鈴木を誘き出す為の嘘で、睡眠薬を飲まされた鈴木は拉致されます。
鯨は自身を狙った犯人を突き止める為、梶の電話の履歴から依頼先を調べ岩西のマンションへと行き着きます。
岩西を脅して自身を殺そうとした実行犯である蝉について話させ、岩西は飛び降り自殺させます。
鯨は、蝉が寺原長男殺しの押し屋を追っていることを知り、蝉同様に鈴木が拉致されるであろう現場へと向かいます。
【結】グラスホッパー のあらすじ④
蝉は、ちょうど拉致された鈴木がビルに運び込まれる所に到着します。
比与子と二人の男が鈴木をビルに運び入れた直後、蝉が乱入し比与子を殴った後で男をナイフで殺します。
鈴木の拘束を解こうとしていると、比与子が逃げていきますが蝉は逃がした所で問題ないだろうと判断し見逃します。
蝉は鈴木を連れ車で押し屋の所へ行こうとしますが、蝉の車に隠れていた鯨に襲われます。
鯨の急襲により意識を失い蝉は杉林まで引きずられて行きます。
そこで意識が戻り、ナイフで応戦しますが、しばらく戦った後で鯨の拳銃により射殺されます。
鯨は車の所へ戻ると、比与子を見かけたので脅して共に押し屋の所へ向かいます。
鈴木は槿に助けられ、槿の家へと向かいます。
会話の中で鈴木のことは最初から家庭教師だとは信じておらず、槿は押し屋で家族は劇団と呼ばれる組織の人間だと知らされます。
鈴木が槿を尾行出来たのもわざと隙を作ったからで、逆に寺原に近づく為のきっかけを作ろうとしていたとのことです。
鈴木はフロイラインが襲ってくるかもしれないと焦りますが、槿は終始落ち着いており家族にも全く焦りの色が見えません。
槿の家に着いてから、息子が鈴木の携帯を盗んでおり比与子に偽の住所を教えたと分かります。
鯨と比与子が到着した場所は昆虫シールを扱う会社でした。
そこで、比与子は会社から電話が入り寺原が死亡したと聞かされます。
鈴木と共に拉致した若い男女が実はスズメバチと呼ばれる殺し屋であり、毒殺されたというのです。
鯨は日頃悩まされていた幻覚症状が酷くなり、先程殺したばかりの蝉に鈴木は指輪を探しに戻ってくるはずなので杉林に戻るよう助言されます。
鈴木も無くした指輪を探しに戻ってきた所で鯨と出会います。
鯨の力により自殺しそうになりますが、妻の声が聞こえ踏みとどまると、逆に鯨が車に轢かれていました。
その後、鈴木は復讐に踏ん切りをつけ、前向きに生きようと新しい生活を始めます。
グラスホッパー を読んだ読書感想
殺し屋達の世界に元教師という完全な素人が潜入し、妻の復讐を行おうとするというなかなか無茶な設定です。
案の定最初から潜入したフロイラインの社員からも疑われており、また寺原長男を押した所をたまたま目撃し後をつけた押し屋もわざと隙を見せて尾行させていただけであり、本来ならば鈴木という素人が尾行できるような相手ではありませんでした。
また、業界内でも揉め事は多く、寺原や寺原長男は非常に多くの人から恨みを買っており、鈴木だけでなく復讐をしに来る人間が後を立たないということです。
本当に酷い人間なので、殺されてスッキリという感じですが、最愛の妻を殺された鈴木には同情すると共に、自分も同じ立場になったら復讐を考えるかもと思います。
鈴木は結局復讐は他人に奪われてしまいますが、妻の為にも前向きに生きていこうと生き方を変えるきっかけになったので、フロイラインへの潜入は無駄では無かったのでは無いかと思います。
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