「陽気なギャングの日常と襲撃」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

「陽気なギャングの日常と襲撃」

【ネタバレ有り】陽気なギャングの日常と襲撃 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:伊坂幸太郎 2009年8月に祥伝社から出版

陽気なギャングの日常と襲撃の主要登場人物

成瀬(なるせ)
如何なる嘘でも瞬時に見抜く。

響野(きょうの)
口から出任せを並べ立てるのが得意。

雪子(ゆきこ)
時計がなくても時間が分かる。

久遠(くおん)
相手の持ち物を気付かれないうちに盗む。

筒井良子(つついりょうこ)
ドラッグストア経営者の娘。

陽気なギャングの日常と襲撃 の簡単なあらすじ

人間嘘発見器の成瀬、演説のプロフェッショナルの響野、体内時計と卓越したドライビングテクニックを持つ雪子、天才的なスリ師の久遠。4人はそれぞれの能力を活かして横浜市内の銀行襲撃に成功しますが、とある誘拐事件に巻き込まれてしまいます。人質を解放して終わるはずだった単純な事件は、予想外の展開へと加速していくのでした。

陽気なギャングの日常と襲撃 の起承転結

【起】陽気なギャングの日常と襲撃 のあらすじ①

犯行は大成功ながらも成瀬は憂鬱

響野がカウンターの上で大声を発して銀行員とお客さんの注意を引き付けているうちに久遠が金庫の鍵を入手、成瀬がボストンバックに札束を詰め込んで雪子の運転する自動車で逃走完了。

いつものように僅か4分間で4000万円もの銀行強盗に成功した4人でしたが、成瀬には心の奥底に引っ掛かっていることがひとつだけありました。

犯行現場で知り合いの婚約者を目撃した時に、彼女が何者かに身柄を拘束されていることに気が付いたからです。その女性の名前は筒井良子で、父親は大手薬局チェーン店「筒井ドラッグ」を経営していました。悪どい商法で自分の会社を大きくしてきただけあって、社長の筒井に恨みを抱いている人は沢山いるはずです。良子と一緒にいた男にはあらかじめ久遠が発信器を仕掛けていたために、一味が潜伏している雑居ビルの場所を突き止めるのは訳もありません。久遠が潜入すると良子は無事で、彼女を連れ去った冴えない男の名前も犯行動機もあっさりと判明します。

【承】陽気なギャングの日常と襲撃 のあらすじ②

気弱な誘拐犯から凶悪なカジノ王の手に落ちる良子

彼の名前は小西勝一で出身地は新潟県、実家は個人経営の小西薬局。

ある日突然の筒井ドラッグの出店によって敢えなく小西薬局は閉店へと追い込まれたことを、逆恨みしての犯行でした。

身代金の受け渡し場所は横浜市の南郊にある山岸公園でしたが、強欲な筒井社長は一文もお金を払うつもりはありません。

裏社会と繋がりのある鬼怒川という男を使って、小西から娘を奪還することを命じます。

良子を小西の手から救出した鬼怒川の部下が向かった先は、筒井ドラッグではなく会員制のカジノです。鬼怒川は海千山千の筒井社長と、端から取り引きに応じるつもりはありません。

良子の身に危険が迫っていることを知った成瀬たちは、鬼怒川たちの地下カジノの見取り図を入手しました。

内部にはスロットマシンやポーカー用のテーブルが設置されていて、良子が監禁されているのは奥のVIPルームです。入り口はオートロックで武器を持った見張りが大勢待ち構えていますが、4人は奇策を思いつきます。

【転】陽気なギャングの日常と襲撃 のあらすじ③

悪党たちを煙に巻く

カジノは桜木町の駅近くのオフィスビル街にあり、中は招待客と黒い兎の衣装をきたコンパニオンで賑わっていました。久遠は用意してきた発煙筒を派手に噴射させて、火災報知器を作動させて非常ベルを鳴らします。たちまち部屋中がパニックへと包まれますが、響野が逃げ惑う客たちを巧みな弁舌で誘導する手筈です。良子はバニーガール姿に変装していたために、その他の女性スタッフに紛れ込んで無事に脱出しました。

用心棒たちは執念深く追いかけてきますが、雪子の知り合いの素人劇団が柔道着姿で駆け付けて囮になってくれます。響野たちが逃げおおせた同時刻、雪子が運転中の車の後部座席で寛いでいるのは鬼怒川です。国際空港で降りた鬼怒川は、飛行機に乗り込んで南米のある国に逃亡するつもりでした。 鬼怒川のトランクはすり替えられていて、中には違法な薬物が入れ込まれています。

鬼怒川が向かう国は麻薬の取り締まりが厳しいために、当分は日本に戻ってこれないでしょう。

【結】陽気なギャングの日常と襲撃 のあらすじ④

それぞれの日常へと帰っていくギャングたち

新潟県へとやって来た久遠は、かつて小西薬局があった昔ながらの日本家屋を訪れました。出迎えたのは小西勝一の弟・勝次で、ふたりの両親は心労が祟ったために既にこの世にはいません。

久遠は自分たちが銀行強盗で得たお金のうちの、幾らかをトランクに入れて差し出します。良子の誘拐を企てた小西勝一は、未だに警察に捕まることなく実家にも帰ることなく逃走を続けているようです。成瀬たちは銀行を襲った後は、最低でも1ヵ月はお互いに顔を合わせることも連絡を取り合うもありません。

成瀬は神奈川県の市役所の4階、地域生活課のカウンターで公務員として働いています。響野は妻とふたりで、喫茶店の経営に励んでいる毎日です。雪子は派遣会社に登録していて、事務職専門の契約社員として忙しい日々を送っています。久遠はこれといって仕事をしている様子はありません。

ニュージーランドへ海外旅行に行って羊を見たり、近所の公園でのんびりと野良猫と遊んでいるのでした。

陽気なギャングの日常と襲撃 を読んだ読書感想

4人の銀行強盗を主人公にしながらも、彼らは決して暴力的な手段に訴えることはありません。

綿密に練り上げた犯行計画とそれぞれの特殊能力を存分に活かして、僅か4分間の短い時間の中で大金を奪い去る華麗な手口に驚かされました。

困った人を見ると放って置けない性格から、誘拐事件へと巻き込まれていく展開もユーモアたっぷりです。

全国展開するドラッグストアの販売戦略によって、地域密着型の薬局が閉店に追い込まれている現状などさりげなく社会問題を取り上げていて考えさせられます。

強欲なカジノ経営者から人質を取り返し、一泡吹かせるラストも痛快です。

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