「あの子の考えることは変」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|本谷有希子

「あの子の考えることは変」

【ネタバレ有り】あの子の考えることは変 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:本谷有希子 2009年7月に講談社から出版

あの子の考えることは変の主要登場人物

巡谷(めぐりや)
ヒロイン。 高校卒業後に上京して現在フリーター。

日田(にった)
巡谷の高校生の頃の同級生。 無職。

田淵(たぶち)
巡谷のバイト先の同僚。 女子大学生。

横ちん(よこちん)
フリーのシナリオライター。

ゲシュタポ(げしゅたぽ)
巡谷と日田の隣人。

あの子の考えることは変 の簡単なあらすじ

高校時代からスタイルが良くて異性との関係が派手だった巡谷と、23歳になった現在でも経験がない日田は同郷のよしみです。アルバイト先のお節介な店員から、 ただいまスランプ真っ最中な映画脚本家まで。ふたりは個性豊かな周りの人たちとの出会いと別れを繰り返しながら、東京での何気ない毎日をやり過ごしていくのでした。

あの子の考えることは変 の起承転結

【起】あの子の考えることは変 のあらすじ①

東京の片隅でひっそりとふたり暮らし

巡谷と日田は高校時代の2年間を同じクラスで過ごしましたが、当時はそれほど仲が良かった訳ではありません。

エッセイストになるために上京した日田と、何となく地元を飛び出して都内で独り暮らしを始めた巡谷。 ふたりは新生活を始めた東京でなかなか友達が出来なかったために、どちらからともなく電話で連絡をとるようになりました。

家賃が相場と比べて安い高井戸でアパートを見つけて、 ふたりで一緒に住むことにします。

8畳のフローリングの部屋に日田、 6畳の角部屋に位置する和室に巡谷。 巡谷はジェラートショップでアルバイトをしていますが、日田は執筆活動に明け暮れていてこれと言った仕事をしていません。

バイト中の巡谷の様子を冷やかしに来た日田は、アルバイト店員の田淵と打ち解けて無料でアイスクリームを貰っています。

食べきれなかったアイスをこっそりと捨てた日田は、タイムカードを押して従業員出口から出てきた巡谷と合流して新宿へ向かいました。

【承】あの子の考えることは変 のあらすじ②

都合のいい女の細やかな逆襲

新宿の東急ハンズで録音機能つきのブタのぬいぐるみを買って、駅前で日田と別れた巡谷は吉祥寺に住む横ちんの家に向かいました。

出会った当初こそ新進気鋭のシナリオライターとして注目を集めていた横ちんでしたが、次々と後輩たちに追い抜かれていき今現在の仕事は雑用同然になっています。

自信満々で書いた映画の企画がボツになる度にやけ食いに走るため、体重は増えていく一方です。

横ちんには本命の彼女がいるために、あくまでも巡谷は食事の支度から夜の相手までをしてあげる「都合のいい女」でしかありません。

せっかくのふたりっきりの誕生日にも関わらず、横ちんは巡谷が駅前のカフェで買って来たケーキをホールごと食べて早々と眠りこけてしました。

横ちんのイビキをぬいぐるみに録音した巡谷は、 洗面台の下にある本命彼女のお泊まりセットの中にこっそりと隠しておきます。

あの獣のようなイビキを聞いた彼女は、横ちんと別れることを検討するでしょう。

【転】あの子の考えることは変 のあらすじ③

バイトを辞めた巡谷と隣人の奇行に悩まされる日田

ジェラート屋のバイトを突発的に辞めてしまった巡谷は、自分の和室から台所にトイレ・風呂までを一心不乱に綺麗にしていました。

家に居る時間が増えたのに日田とは顔を合わせる機会が減っていき、テレビ番組を流しっぱなしにして頭を空っぽにします。

以前は巡谷が料理をしているとちゃかり自分の皿を用意し出した日田でしたが、夜中にこそこそと出かけてはオリジン弁当を買って食べているようです。

洋室と壁1枚を隔てた隣の住人を、日田は 「ゲシュタポ」 と渾名を付けて呼んでいました。

掃除機や洗濯機など必要不可欠な騒音に対しても、ゲシュタポは壁を殴りつけて怒りを露にします。

異様なくらい物音がしないように息を潜めて生活する日田は、さながら密告者に怯えるアンネ・フランクのようです。

ゲシュタポが壁を殴る毎に謝り続けることに疲れ果てた日田は、押し入れから古いコンポを引っ張り出して録音しておいた「すいません」をエンドレスで再生することにしました。

【結】あの子の考えることは変 のあらすじ④

真夜中のふたりっきりの花見

巡谷と日田が同居している部屋はアパートの1階にあって、ブロック塀の向こうには1本の梅の木が生えていました。

日田はこの木を桜と勘違いしていて、毎年花が咲くとサンダルで庭に出ては携帯の写メに収めています。

本物の桜を見せてあげたい巡谷が、ある日の夜に日田を連れていった先は神田川沿いの桜並木です。

道中でいつもの弁当とペットボトルのお茶を買って、レンガ敷きの地面にチラシをしいて座り込みました。

夜の闇に浮かぶ桜を、日田は梅の花だと言い張り譲りません。

ピンクのつぼみが咲きかけている枝の向こうには、ダイオキシンで有名な杉並区の清掃工場の煙突が見えます。

日田の話ではダイオキシンによって人間の駄目なところが、潜在的な悪として引き出されてしまうそうです。

日田の考えることは変で、1度だって巡谷は共感できたことはありません。

これから先も男性とお付き合いすることはないであろう日田でしたが、今この瞬間に側にいてくれる巡谷に感謝をするのでした。

あの子の考えることは変 を読んだ読書感想

Gカップだけが取り柄なヒロインの巡谷と、自らが放つ獣のような体臭が気になって仕方がない日田との噛み合わない会話には笑わされました。

物語の舞台となる杉並区高井戸のノスタルジックな街並みや、ふたりがおんぼろアパートで送る共同生活の風景も脱力感たっぷりです。

「のたれ死ぬ時は迷惑かけずに、アパート以外でのたれ死ぬ」という巡谷のセリフからは、地方から東京へと単身やって来た女の子の潔さを感じます。

クライマックスで夜の闇の中に浮かび上がる桜の静謐さと、ダイオキシンを吐き出す巨大煙突の猥雑さとのコントラストも心に残りました。

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