グ、ア、ム(本谷有希子)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

グ、ア、ム

【ネタバレ有り】グ、ア、ム のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:本谷有希子 2008年6月に新潮社から出版

グ、ア、ムの主要登場人物

長女(ちょうじょ)
高校卒業後に上京。現在はフリーター。

次女(じじょ)
高校卒業後に信用金庫へ就職した。大阪在住。

母親(ははおや)
パートタイムで働いている主婦。

父親(ちちおや)
健康器具マニア。グアムには行かない。

グ、ア、ム の簡単なあらすじ

北陸地方に住む主婦、東京へと飛び出した姉、大阪で働いている妹、実家でお留守番の一家の大黒柱。3人の女性が初めての海外旅行で繰り広げていく珍道中と、細やかな家族のドラマがユーモアたっぷりに映し出されていきます。

グ、ア、ム の起承転結

【起】グ、ア、ム のあらすじ①

対照的な姉と妹

18歳までを北陸地方の田舎町で過ごした長女は、漠然と憧れていた東京の大学へ進学するために家を出ました。

ピアノジャズバーでアルバイトしつつクリエイターやマスコミ関係への就職活動を続けていましたが、いずれの応募先からも採用されることはありません。

その後は都内の大型スパ施設のマッサージコーナーで、お客さんの垢擦りに明け暮れる25歳です。

まるっきり正反対な性格を持つ4歳年下の次女は、幼い頃から両親の財産と日本の経済的な発展に不安を抱いていました。

高校時代からアルバイトに精を出す毎日になり、放課後の部活動にも夜遊びにも興味を示すことはありません。

現在では大手の信用金庫で働きながら、大阪で独り暮らしをしてしています。

【承】グ、ア、ム のあらすじ②

2泊3日女3人

3人ある時に姉妹の母親は近所の奥さんから紹介された旅行代理店で、お得なパッケージツアーを見つけました。

行き先はグアムになり、2泊3日の日程で行きと帰り意外はほとんど各自が好きに行動可能になります。

母親はパート先で休暇を取得して、次女は貯まっていた有給休暇を消化する絶好の機会です。

フリーターの長女は比較的自由にスケジュールを組めるようで、出不精な父親は留守番役を決め込みます。

3月6日に久しぶりに成田空港で親子対面を果たした3人の女性たちは、お互いの近況報告もそこそこに搭乗手続きを済ませました。

初めての海外旅行に若干緊張気味ながらも、飛行機の座席でガイドブック片手に現地での計画をあれこれと話し合っています。

【転】グ、ア、ム のあらすじ③

せっかくのバカンスが

たどり着いたグアムは生憎の天候で、期待していたマリンアクティビティは雨天中止になりました。

大聖堂バシリカやアプガン砦を始めとする観光名所や遺跡巡りに変更しますが、次女は出発前に治療した親知らずが気になっていまいち楽しめません。

自分は毎月のお給料の中から旅費をやり繰りしているのに、姉は一文も払っていないのも不満のひとつです。

次第に姉妹の間に立ち込めていく険悪なムードを、母親は何とか宥めようとしています。

2日目の夜に訪れた先住民族が暮らす村・チャモロヴィレッジで、長女と次女は大人気ない自分たちに恥ずかしくなってしまいます。

休戦協定を結んだふたりは母親の前で、形だけの仲の良い姉妹を演じることにしました。

【結】グ、ア、ム のあらすじ④

進んでいく時間

最終日にようやく貴重な晴れ間が訪れましたので、ロビーに集合する午前11時までの間はビーチで過ごす絶好の機会です。

しかしながら痛み止と睡眠薬を間違えて服用してしまった母親と次女は、ホテルのキングサイズのベッドで眠りこけていました。

長女はベッドサイドのデジタル時計を、フライト時間ぎりぎりにまで進めます。

目覚めた2人は時刻を見て飛行機に乗り遅れると、さぞかし慌てふためくことでしょう。

小学生の頃もこのトリックをアリバイ作りに利用して、大嫌いだったそろばん塾をサボっていたところは成長していません。

数年後には30才を迎えてしまう自分自身にうんざりしながらも、母親のいびきと妹の歯ぎしりを呑気に聞いているのでした。

グ、ア、ム を読んだ読書感想

「父親」「母親」「長女」「次女」という、徹底的に固有名詞を排したぶっきらぼうな語り口が特徴的でした。日本全国何処にでもいそうな核家族の人間模様と、時代背景が反映されたキャラクターも味わい深かったです。

バブル崩壊後の就職氷河期真っ只中に社会へ放り出された長女には、1979年石川県生まれの著者のプロフィールにも重なるものがあります。

ロスト・ジェネレーションの悲哀には、ワーキングプアや格差社会といったキーワードを思い浮かべてしまいました。

無計画な姉を反面教師として堅実な道のりを歩んでいく、しっかり者な次女も印象的です。

成人した姉妹が可愛くて仕方ない母親と、遠く離れた場所で見守る父親の姿にも心温まるものがありました。

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