【ネタバレ有り】ある閉ざされた雪の山荘で のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:東野圭吾 1996年1月に講談社から出版
ある閉ざされた雪の山荘での主要登場人物
久我和幸(くがかずゆき)
主人公。 俳優を目指すフリーター。
元村由梨江(もとむらゆりえ)
舞台女優。 父が劇団「水滸」のパトロン。
本多雄一(ほんだゆういち)
劇団「水滸」の実力派俳優。
笠原温子(かさはらあつこ)
劇団「水滸」所属の女優。
麻倉雅美(あさくらまさみ)
劇団「水滸」を退団後は消息不明。
ある閉ざされた雪の山荘で の簡単なあらすじ
劇団「水滸」のオーディションに合格した久我和幸が受け取ったのは、乗鞍高原のペンションで開催される舞台稽古への招待状です。集まった他の6人は全員が劇団員で、 その中には久我が想いを寄せている女優もいます。登場人物がひとりずつ消えていくサスペンスタッチのシナリオの裏には、思わぬ真実が隠されているのでした。
ある閉ざされた雪の山荘で の起承転結
【起】ある閉ざされた雪の山荘で のあらすじ①
久我和幸は1年前に元村由梨江の舞台を見た時から心奪われてしまい、何とか彼女に近づくことを考えていました。
由梨江が所属する劇団「水滸」のオーディションが開催されることを知って、さっそく応募して7人の合格者の1人に選ばれます。
合格者は乗鞍高原のペンション「四季」に集められて、3泊4日の舞台稽古に参加しなければなりません。
山荘にやって来た7人の客が、1人また1人と消えていくミステリータッチの舞台劇です。
他の6人は全員が「水滸」のメンバーでしたが、部外者である久我にも優しく親切でした。
6人の中でも演技力に秀でた本多雄一は、食事の後に久我に酒を奢ってくれます。
久我が疑問に思っていたのは、オーディション会場で見かけた麻倉雅美という女優がこの場に居ないことです。
ステージの上で誰よりも存在感を放っていた彼女が選ばれなかった理由をそれと無く訪ねてみましたが、本多は答えてくれません。
麻倉のことは気になりますが、たった1日目で由梨江とも打ち解けたのは上出来でしょう。
【承】ある閉ざされた雪の山荘で のあらすじ②
午前7時になると朝食をとるために1階ラウンジへ集合しますが、女性陣のまとめ役である笠原温子の姿だけが見当たりません。
2階の遊戯室には床に1枚の紙が落ちていて、「温子が遊戯室で何者かに絞殺された」という設定で芝居を続けるように指示が書いてありました。
久我は自分以外の5人の中に「犯人役」がいると考えて、それらしき人物に探りを入れていきます。
「被害者役」の温子は目的のためには手段を選ばないことも有名で、今回のオーディションも演出家と個人的な関係を結んでまで合格したという疑惑もあり評判は良くありません。
本来ならば主役を手に入れるはずだった麻倉雅美は、温子のことを相当恨んでいるようです。
その上麻倉がオーディションに落選した後でスキー事故に遭ってしまい、今ではもう舞台の上に立てないことまでが分かってきました。
麻倉の一件は本当に不運な事故なのか、それとも仕組まれた事件なのか。
久我が思い悩んでいるうちに3日目に突入します。
【転】ある閉ざされた雪の山荘で のあらすじ③
翌朝は早めにラウンジに集合した劇団員でしたが、この日は元村由梨江がいつまでたっても姿を現しません。
彼女に割り当てられた部屋は笠原温子が「殺害された」遊戯室の隣にあり、5人は様子を見に行きました。
部屋の中には例によって1枚の紙が残されているだけで、今回の設定は「元村由梨江は鈍器で撲殺された」です。
凶器の花瓶は間もなく山荘の裏庭で発見されますが、本物の血が付着していたために大騒ぎが起こります。
久我は由梨江の父が裕福な資産家で、「水滸」の運営を全面的にバックアップしていることを突き止めました。
由梨江がオーディションに合格したのも、彼女の父親への配慮があったことは明白でしょう。
さらには由梨江と温子とあともう1人が、麻倉雅美が事故に遭う直前に彼女と面会していた可能性も出てきます。
そのもう1人が判明すれば事前に次の「犯行」を食い止めると考えて久我は奔走しますが、時間はただただ過ぎていき4日目の朝を迎えてしまいました。
【結】ある閉ざされた雪の山荘で のあらすじ④
3人目の「被害者役」は雨宮京介で、彼は本来であれば麻倉雅美が選ばれるはずだったロンドンへの演劇留学生の座を手にしていました。
久我は笠原温子の「殺害現場」と元村由梨江の部屋の間に、不自然な隙間を発見します。
そこに隠れて一部始終を盗聴盗聴していたのが、今回の首謀者である麻倉です。
壁の隙間から出てきた彼女は、スキー事故の影響で車椅子に乗っていました。
例の事故はオーディションに落選した麻倉が、突発的に起こした自殺未遂です。
事故の後に由梨江たち3人への復讐を計画していた麻倉は、劇団に在籍していた時に1番に信頼していた本多雄一に依頼します。
本多は密かに3人に事情を説明して、この山荘でひと芝居を打つことにしました。
温子も由梨江も雨宮も、この山荘の隣にあるペンションに避難していて無事です。
3人と再会を果たした麻倉は自分が殺人犯にならずに済んだことに感謝して、かつての仲間たちに自分の分まで芝居を続けることをお願いするのでした。
ある閉ざされた雪の山荘で を読んだ読書感想
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を思わせるような、 逃げ場のない空間を舞台にしたミステリーがスリリングです。
登場人物が演劇関係者という設定も効果的で、果たしてイベントなのか本物の殺人事件なのかと引き込まれていきました。
ステージに上るためには他人を蹴落としてしまう、 一部の演劇人の欲深さには呆れてしまいます。
その一方では自らの役を奪った3人を憎んでいたはずの麻倉雅美が、「殺人」という芝居を見ることによって憎しみを消し去っていくシーンが印象深かったです。
悲劇を見て涙を流すことによって心を浄化する、 「カタルシス」にも繋がるものがありました。
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