【ネタバレ有り】ブラザー・サン シスター・ムーン のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:恩田陸 2009年1月に河出書房新社から出版
ブラザー・サン シスター・ムーンの主要登場人物
楡崎綾音(にれざきあやね)
ヒロイン。 地元の高校を卒業後に東京のW大学へ入学。文学部を卒業後に金融関係の仕事に就く。
戸崎衛(とざきまもる)
綾音の同級生。 大学ではジャズ研究会に入り卒業後は鉄鋼メーカーに勤める。
箱崎一(はこざきはじめ)
綾音の同級生。 証券マンから映画監督へ転身する。
アキコ(あきこ)
綾音の大学時代の友人。 卒業後は出版社で働く。
木島オズマ(きじまおずま)
京都出身。 大学で衛とジャズトリオを組む。
ブラザー・サン シスター・ムーン の簡単なあらすじ
読書家の女子高校生・楡崎綾音、チャールズ・ミンガスを敬愛する戸崎衛、映画マニアの箱崎一。 まるっきり接点のなかった3人が仲良くなったきっかけは、社会科の授業の一環として行われていた課外活動です。 3人は地元の高校から都内の同じ大学へと進学しますが、次第に疎遠になりそれぞれが自分の信じた道を歩いて行くのでした。
ブラザー・サン シスター・ムーン の起承転結
【起】ブラザー・サン シスター・ムーン のあらすじ①
楡崎綾音と箱崎一は同い年で地元でも有名な同じ進学校に通っていましたが、3年間同じクラスになったことはありません。
初めて綾音と一が言葉を交わしたのは、1年生の6月の時に行われた社会科の授業の時でした。
クラスの垣根を取っ払って3人でひとつのチームに振り分けられ、学校から街中へ飛び出して聞き取り調査をする課外活動です。
綾音たちのグループに加わったもうひとりは、戸崎衛という名前の男子生徒でした。
偶然にも3人の名字には「崎」という漢字が共通していたために、それ以来「ザキザキトリオ」を結成して休みの日には一緒に遊びに行くようになります。
綾音と衛がお付き合いを始めたのは高校2年生の夏からでしたが、手を握ったことさえないほどの清純な男女交際です。
一を交えて出かけることも珍しくなく、3人の居心地の良い関係性は変わることはありません。
3人は同じ東京のW大学へ進学しますが、それぞれ学部が異なることもあり次第に疎遠になっていきます。
【承】ブラザー・サン シスター・ムーン のあらすじ②
高校生の頃から早く実家を出たかった楡崎綾音は、 春休みに6畳一間1Kのアパートに引っ越しを済ませて独り暮らしを始めました。
文学部で日本文学を専攻しながら、 推理小説やSFの愛好家が集まるミステリ研究会に入ります。
富山県から出てきたアキコは1浪しているために1歳年上でしたが、イギリスのSFやミステリーが好きな彼女とは大学の4年間でも1番の親友です。
文学部のラウンジで喋り、喫茶店で喋り、居酒屋で喋り。
ふたりの友情はお互いが社会人となった今現在でも続いています。
綾音の卒論のテーマは谷崎潤一郎と都市論で、メール入稿はおろかワープロ提出も認められていません。
万年筆で清書した手書きの原稿用紙88枚を、万感の思いを込めて受付の事務員に手渡しました。
学生が売り手市場だったこともあり、幾つもの内定を勝ち取った綾音が選んだ就職先は金融関係の会社です。
アキコと一緒に袴姿で卒業式に参加した綾音は、 自らの明るい未来を疑うことはありません。
【転】ブラザー・サン シスター・ムーン のあらすじ③
ギタリストに憧れていた戸崎衛が、 ベースを弾き始めたのは中学3年生の時でした。
プロのミュージシャンを輩出していることでも有名なW大学のジャズ研究会に入部した衛は、新歓コンパでピアニスト志望の木島オズマと意気投合し結成したのが「オズマバンド」です。
入学してから暫くの間綾音は衛のアパートに通っていましたが、次第にバンドの演奏ライブが忙しくなっていきます。
綾音の方も文芸サークルのイベントに追われるようになり、高校時代からのふたりの交際は自然消滅しました。
オズマバンドは軌道に乗っていきますが、衛は就職活動も疎かにはしません。
ジャズ研究会のメンバーが留年したり放浪の旅に出てしまう中でも、鉄鋼メーカーへの就職が決まります。
オズマは実家の老舗お茶屋の跡取りとして支店への丁稚奉公に出されることになり、バンドは敢えなく解散です。
就職後はベースを演奏することはなくなりましたが、衛はジャズを学生時代よりも楽しんで聴けるようになりました。
【結】ブラザー・サン シスター・ムーン のあらすじ④
箱崎一は大学ではシネマ研究会に所属していましたが、卒業と同時に一部上場の証券会社で優秀な社員として活躍していきます。
多忙な職務の合間を縫って、カルチャー雑誌が主催する映画コンクールに応募することも忘れません。
最初の応募作品から10年、今回は世界三大映画祭として名高いV映画祭のコンペティション部門に正式出品されました。
ある日突然に新進気鋭の映画監督として脚光を浴びた一は、殺到する取材やインタビューで大忙しです。
次回作の構想をライターから聞かれた一の答えは、「繋がっているけど繋がっていない人たち」を描いた群像劇です。
一は高校時代の課外活動で綾音と衛と共に訪れた、柳の木々が立ち並んだ静かな水路を思い出していました。
その日は雨でもなく竜巻が発生したわけでもないのに、空から3匹の蛇が落ちてきたのは今でもよく覚えています。
絡み合って水の中を泳いでいた蛇たちは、やがてバラバラになって違うところを目指して泳いでいくのでした。
ブラザー・サン シスター・ムーン を読んだ読書感想
地方都市の名門高校を卒業した楡崎彩音が、都内の大学で抱く微妙な孤独感には共感出来ました。
地元では在籍しているだけで周りの人たちから尊敬されるほどのブランドイメージがありながらも、東京では高校の名前すら知られていないというほろ苦いエピソードもあります。
ホームシックとも無縁で生まれて初めての独り暮らしを謳歌しながら、偏差値や出身校以外の大切なものを追い求めていく彩音のポジティブさが微笑ましかったです。
ジャズに打ち込みながらもお堅い企業への就職を決める戸崎衛と、自分の好きな映画の道を歩いていく箱崎一とのコントラストも印象的でした。
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