【ネタバレ有り】櫻子さんの足下には死体が埋まっている のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:太田紫織 2013年2月に角川書店から出版
櫻子さんの足下には死体が埋まっているの主要登場人物
館脇正太郎(たてわきしょうたろう)
物語の語り手。高校生。
九条櫻子(くじょうさくらこ)
ヒロイン。標本士。古い洋館でばぁやとふたり暮らし。
水島清美(みずしまきよみ)
正太郎の母が大家を務めるアパートの店子。薬剤師。
水島好美(みずしまよしみ)
清美の妹。眼科医院の看護師。
橋口武義(はしぐちたけよし)
清美の婚約者。眼科医。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている の簡単なあらすじ
北日本でも仙台に次ぐ3番目の人口を誇る中核市の旭川市で、館脇正太郎はごく普通の高校生活を送っています。そんな彼の人生を一変させるきっかけを作ったのは、美しき素封家のお嬢様にして骨を愛する九条櫻子です。時には検視官の役割をこなし殺人事件の謎を解いてしまう櫻子さんによって、正太郎の日常は振り回されていくのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている の起承転結
【起】櫻子さんの足下には死体が埋まっている のあらすじ①
館脇正太郎は旭川市の南光地区に住んでいる平凡な高校生でしたが、この地域では有名な地主の末裔・九条櫻子と知り合いです。
洋風のお屋敷にばぁやとふたりきりで暮らすお嬢様でしたが、大学で法医学を教えていた叔父の影響から動物の骨格標本を作ることを仕事にしていました。
いつものように正太郎が櫻子の邸宅に招かれて昼食をご馳走になろうとしていたところ、アパート経営をしている母親から電話がかかってきます。
家族と連絡がつかない独り暮らしの入居者・水島清美の話を聞いた途端に、好奇心旺盛な櫻子は興味津々です。
櫻子は清美の部屋の前まで勝手についてきましたが、内側から施錠されているために中へ入ることが出来ません。
近くのアイクリニックで働いている清美の妹・好美の許可を得て、チェーンを切断して扉を開けることになりました。
室内はひどく荒らされていて、検死の真似事までできる櫻子の見立てでは瞳孔が異常なほど拡大している清美の遺体が発見されます。
【承】櫻子さんの足下には死体が埋まっている のあらすじ②
好美からの連絡を受けて、清美の婚約者で眼科医の橋口武義も駆け付けてきました。
櫻子は幼馴染みで現在では警察の公安に所属している在原直江に通報すると、正太郎を連れてそそくさとその場を後にします。アパートの向かいにある喫茶店で大好物のホットチョコレートを注文して、現場の状況を窺うつもりです。正太郎は櫻子と一緒にいると厄介事に巻き込まれると愚痴をこぼしますが、彼女はまるで気にしません。
今は亡き母親からも全く同じことを言われたという櫻子は、「私の足下には、いつだって死体が転がっている」と切り返します。母の管理するアパートの庭で草むしりのアルバイトをしていた正太郎は、生前の清美とも幾らか付き合いがありました。
年齢は30歳前後で職業は薬剤師、作業の合間に部屋に招かれてご馳走になったミントティー。正太郎から清美の情報を聞き出した櫻子は、清美の死が殺人であることを否定します。
店内からはガラス越しに橋口と好美の姿が映り、何やらふたりは揉めているようです。
【転】櫻子さんの足下には死体が埋まっている のあらすじ③
櫻子は好美が医療関係者でありながら香水を付けていたことから、彼女が橋口と浮気をしていることを見破っていました。真相解明に繋がる重大な手掛かりは、櫻子が清美の財布からどさくさに紛れて持ち出した植物園のチケットです。駅周辺の開発事業の一環として去年オープンしたばかりの施設を訪れて、櫻子はプレートに「ハシリドコロ」と書かれた植物の前で足を止めます。
ハシリドコロの実は猛毒性があり子供なら数粒、大人でも10粒程度食べるだけで死亡してしまうでしょう。
清美の瞳孔が開いていたのは副作用のためで、荒れ果てた部屋は幻覚を見て錯乱したためで誰かと争った訳ではありません。
薬剤師である清美にとっては、ハシリドコロの致死量を計算して空のカプセルに入れて飲み込むことはお手のものです。
櫻子は婚約者の心を掌握するために清美が自らの生命を絶ったと主張しますが、正太郎はあくまでも彼女はその名前の通り清らかで美しい人だったと信じています。
【結】櫻子さんの足下には死体が埋まっている のあらすじ④
その夜の道内ニュースでは清美の事が短く報じられていて、次の日の朝刊では自殺として小さく紙面の隅に載っていました。
耳の早い正太郎の母親は、好美が不倫騒ぎのせいで病院を辞めたと教えてくれます。
正太郎は自分にミントティーを振る舞ってくれる人がいないために、二度とあのアパートの草むしりには行きたくありません。
正太郎の部屋には清美から貰った、可愛らしいハート型の寄せ植えアイビーとミントのプランターが残されているだけです。
それから更に何週間か経過した頃に、新聞の小さな記事が正太郎の目に留まります。
婚約者を亡くした医師が自殺、場所は忠別河川敷に駐車していた1台の車、車内には練炭を焚いた痕跡があり警察が自殺として捜査中。
後を追うくらいならなぜ生きているうちに清美のことを大切にしなかったのか、正太郎は怒りと哀しみで震えるばかりです。
今はただふたりの魂が幸せであるようにと、正太郎は願わずにはいられないのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている を読んだ読書感想
平穏無事な日常と学園生活を歩んできた高校生の館脇正太郎が、謎めいた過去を持つ標本士の九条櫻子に振り回されながら始まっていくストーリーには引き込まれていきました。
一見すると美しく聡明なお嬢さんに隠されている、人間や動物の骨に対する異様なほどの執着心には驚かされます。
料理用の鍋を火にかけて動物の遺体を煮込んで骨格標本作りに励んでいる姿と、スイーツには目がないアンバランスさが可愛いらしかったです。
単純な善悪二元論では捉え切ることが出来ない櫻子さんの複雑な胸の内と、誰よりも強く真実を追い求めていく生きざまが美しさ溢れていました。
コメント